□合掌一礼!
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……IGO会長・一龍から出された修業食材の残りは二つ。その内の一つは人間界最大の樹海・ロストフォレストにあるという。

トリコはその食材の在り処を占ってもらうために、占い寿司職人・モンチーに恵方巻を作ってもらった。そして完成した超巨大恵方巻――これでロストフォレストへ行くことができるのだ!



☆☆☆☆☆


完成されたあまりにも巨大で長い恵方巻に職人さんたちは歓声の声を上げたけど、最初は感動していた小松さんと私は次にやってきた感情は驚きだった。


「大き過ぎでしょ!? 雲、突き抜けちゃってますよ!?」

「ある意味スカイプラントといい勝負かもね……」

「占う方角の難易度が高かったからのう。これまでのサイズになってしまったわい。アホが」

「ありがとよ! 感謝するぜ、モンチー!」

「礼を言うのはまだ早いんじゃ」

「へっ?」

「倒れるぞー!」


恵方巻がグラグラと揺れ始めると職人の一人が叫んだ。支えもナシだから不安定になってきたみたい。


「えっ!? 傾いてきた!?」

「おわわわっ!?」

「あれだけのサイズが倒れたらヤバくない!?」


職人さんたちに続いて小松さんもトリコも私も焦り始めると、モンチーさんは動じもせずにフッと笑う。


「離れてな。ギッシリ詰まった具材が何千倍にも伸びながら倒れ尽し、お前らが求める方角を教えてくれるんだ」

「キター!」

「本当に伸びながら倒れてるー!」

「ぎゃー! こっち来ないでー!」


ドシ――ンッ!!


ときどき曲線を描きながら恵方巻は倒れたので、トリコと私と小松さんを始め職人さんたちも避難を始めた。それは私たちだけでなく、恵方巻の周辺の鳥や動物たちも一斉に避難する鳴き声も聞こえてくる。


「この方向に……!」

「ああ。恵方巻を食べ進めて行けば、お前の求める食材に行き渡る! 早く行け、アホが!」

「あ、ありがとうございます! モンチーさん!」

「見るからにおいしそうな上に、私たちの目的場所まで示す恵方巻を作ってくれて嬉しいです!」

「……お前、センチュリースープの小松と舞獣姫じゃろ?」

「えっ?」

「えっ!? いや、私は……」

「同じ正体を隠すモン同士としてわかるわい。アホ」


正体を隠すモン同士って……嬉しいような、嬉しくないような。せめて占いでわかったとか言ったほうがココさんのことで経験あるから納得するのに。


「ああ、はい」

「お前らの進むべき方角もまた、前途多難! 長く険しい道になりそうじゃ!」

「「えっ……」」

「じゃが安心せい! 希望にも満ち溢れ取る! ヘヘッ……その内、お前らの方向を占ってやるわ、アホォ!」

「はい!」

「そのときはお願いします!」

「おーい! 食べるぞ、小松! 瑞貴!」

「ああ、はい!」

「今行くね!」


私たちはモンチーさんに一度礼をしたあと、リングの中にある恵方巻の先端前にいるトリコの元へと向かった。というか、この量食べきれるかな……まっ、食欲魔神のトリコがいれば大丈夫か。


「この世の全ての食材に感謝をこめて!」

「「「いただきます!」」」

「あむっ……うめー!」

「この酢飯、さすが酢の王様・王酢だー!」

「それを巻いているエコのりも最高だね!」

「しっかり食って目当てのモン見つけろよー!」


職人さんたちに見送られながら、私たちは恵方巻を食べ続けて行った。味も絶品だし食べながら目的の場所に行けるなんて贅沢だよね!


「近い将来、あいつらが進むべき方角には何やら物凄い食材が待っていそうじゃな。アホが。それに……」


……先ほどまで穏やかな表情をしたモンチーは、次いで目を鋭くさせてトリコと小松と共に恵方巻を食べる瑞貴を見る。


「舞獣姫の秘めたる力は前途多難どころか全途全難な予感がするのう。――恋愛も関してもな、アホォ」


……その呟きは誰にも聞こえることなく、風と共に空を舞うのだった。
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