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□食林寺に守護神現る!?
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「見るかい? ひと振り一億円と言われた……私の包丁捌きを!」
「本当は料理で見たかったんですが……――確かに伊達じゃありませんね」
パキパキ……パキンッ!
「これは!?」
「千代さんの包丁捌きで守護結界が割れたんですよ。――大丈夫です。シュウさんの周りの結界は何重にも重なっていますから、せいぜい皮が一枚めくれた程度です」
「いつの間に……」
シュウさんの周りに張っていた守護結界が粉々に割れた。もし私が守護結界をかけていなかったらシュウさんは今頃あの世行きだ。私の結界をここまで粉々にする繊細さもスゴいけど、きっとダメージを受けていたってことも気づかせないに違いない。実際シュウさんは結界が割れる音が聴こえなかったら攻撃を受けていたってことも気づかなかった。
「おかしいのう……? 確かにシュウには致命傷を与えたが、お主には腕の皮がめくるくらい振ったはずじゃが……お主はよほど強力な結界でも張っておるのかえ?」
「確かに先ほどから言ったようにシュウさんには結界が張ってあります。でも――私には張っていません」
「……なんじゃと?」
「あなたが包丁を振ったのと同時に、私に当たる前に風に乗せさせてもらいました。風は時には切り刻み、時には運ぶ役割を持っていますからね」
「ヒッヒッヒッヒッ。さすがスタージュンのお気に入りだけはあるのう……。お主は殺さずに連れて来いと言う命を受けておる。じゃが……――死んでなかったらどう切り刻んでも大丈夫じゃろ」
「お断りします。――疾風乱舞!!」
「まな板シールド!! 乱切り!!」
「守護壁!!」
私が両腕を振ると同時に放った疾風乱舞を千代さんは防ぎ、さらに千代さんが片方の包丁から放った攻撃を私は防いだ。
「少しはやるようじゃな……それゆえ勿体ない。美食會に来ればさらに力が増すというのに」
「勿体ないのはお互い様ですよ。あなたほどの腕を持つ方が美食會にいることがね」
「ヒッヒッヒッヒッ。お主もその内、食義というものがどれだけ愚かなのかわかるわ! かつら剥き!!」
「ふっ! 雷轟乱舞!!」
「まな板シールド!!」
火で強い技が爆炎乱舞なら、これは雷で強い技だ。普通の猛獣ならひと溜まりもないのに千代さんは立っていた。さすがかつての食林寺師範代……食義を極めた者だけあって、私の大技をまな板シールドで防ぎつつ受け流していたんだね。
「ヒッヒッヒッヒッ。今のでわかったが、お主はシュウや食林寺を守るので手一杯なんじゃろう?」
「!」
「さっきの攻撃……あれは本来もっと強力な技のはずじゃ。食義を極めているのであれば尚更力が増しているはず。足手まといをかかえるのは大変じゃのう。ヒヒヒッ」
「瑞貴さん……!」
さすがスゴ腕の実力者。私が力を攻撃に回し過ぎたら結界が緩むことはお見通しってわけね。あのゴーレムも吹き飛ばしたとはいえ、正直気絶程度しかできなかったかもしれない……。
これは薙刀を出しても結果は同じだろう。せいぜい時間稼ぎにしかならないし、時間が経てば経つほど『今のままじゃ』力負けする可能性がある。