□食林寺に守護神現る!?
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「存分に食没するがよい!」

「世界が……まるで違う色に見える……! 俺は死にかけたんじゃない、一度死んだんだ……。そう思えるほど、さっきまでの自分とは違う……生まれ変わった気分だ」


立ち上がったトリコは先ほどのシャボンフルーツを口にしたせいか、痩せ細った体が元に戻っていた。唯一変わっていたのは食への感謝の気持ちだろう。


「わしはひと足先に寺に戻らねばならん。奥義を伝えられて……よかったわい! ――ふっ!」


珍師範は両手にスプーンを出したクロスすると、勢いよく振りおろしてその反動でまるでジェット機並みに飛んで戻って行った。


「この気配は間違いない! 千代婆! 何故こんなオーラを!?」


珍師範はトリコに修業させつつ、食林寺に到達したオーラを感じていたのだ。



☆☆☆☆☆


(なんじゃこ奴は? 食義を身に付けたのは間違いないが、隙があるようで隙がない……。まさかと思うが食没を身につけてはおらんじゃろうな?)


……千代が瑞貴を見て微かに眉をひそめる中、瑞貴は千代にこの襲撃の理由を尋ねる。


「千代さん、事情を聞かせてもらえますか? あなたは珍師範のコンビであり、食林寺の師範代でもある……なのにそれを破壊しに来た理由は?」

「お前にゃ言うに及ばんね、お嬢ちゃん。珍ちゃんはどこじゃ?」


どうやら答える気はないらしく、千代さんの一番の狙いは珍師範というわけか。本当はあのゴーレムとか怪鳥に食林寺の破壊を任せるつもりだっただろうけど私が倒したから動かない。


「……では、あれはなんですか? いろんな猛獣や人の気配がしますけど」

「ゴーレムじゃ。あらゆる生物の混合種で、灰汁獣と呼ばれる人工生物の一種じゃが……ゴーレムを扱う組織はただ一つ!」

「美食會……ですね」

「!」


私がそう答えるとシュウさんが目を見開いていた。美食會のことは食林寺にも伝わっているんだろうけど、美食會は食への感謝が微塵も感じない組織だ。そんな所に千代さんが身を寄せていたなんて……やっぱり行方不明になったのはさらわれたんじゃない、ついて行ったんだ。自分の意思で!


「すでに食林寺の支部は沈めた……」

「真意を計りかねますが、珍師範が聞かれたらさぞ嘆かれることでしょう……もちろん、雲隠れ割烹の千流さんも。あなたの話は少し聞いていますが、千代さんのような世界中から尊敬される方が、まさか美食會に……」

「食義の奥義――食没は我々にとって脅威になりかねん……元を絶たせてもらうよ!」


千代さんは組んでいた両手を解いたと思ったら、袖から見ただけで名刀とも思えるほどの包丁を二丁取り出した。
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