□食林寺に守護神現る!?
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――しかし自食作用(オートファジー)は諸刃の剣でもある。やはり時間が経てば息もだんだん上がって行き、いい加減そろそろゴールが見えると思ったが……。


「バカな……長過ぎる……! いくらなんでも……!」


目の前に広がる光景は、ただひたすらにある泡の道だけ。ゆるい坂道とはいえ山あり谷ありの状況がまるで永遠に続いているような感覚にトリコは絶望を覚える。


(本当に終点はあるのか……!? 本当に…シャボンフルーツは……!?)

『ただひたすら感謝あるのみ! さすれば、寺宝は現れる!』

「現れる……?」


トリコが何かをつかみそうになったとき、隣にいた珍師範がいつの間にか先に行っていた。


「現れるとは…どういうことだ……?」


不可解に思いながらもトリコは珍師範のあとを追って行った。それからもただひたすらに…ひたすらに泡の道を歩くだけ……するとトリコはまた両手と両膝を地に付けて肩で息をし始めた。


(自食作用(オートファジー)はもともと…非常手段だ……そう長くは保(モ)たねぇ……! ここまで…か……!)


視界もぼやけていくと、ついにトリコは力尽きて倒れてしまった。その気配で珍師範は立ち止まって振り向いた。



☆☆☆☆☆


食林寺へ攻撃できないとわかると、先ほどまで私の言葉で面白そうに笑っていた千代さんも、食林寺を見ると怒りや憎しみのオーラが伝わっていた。


「ヒッヒッヒッヒッ。お嬢ちゃんがあたしらの相手を務めるというのかえ?」

「残念ながら、あなたの相手は私ではありません。攻撃を止めはしますが」

「何?」

「私があなたと戦ったら、恐ろしい師匠に怒られてしまうのでね」


きっと千代さんとの決着は珍師範がつけたいだろう。今はバブルウェイに行ってしまったけど、トリコの修業を終えて戻って来るから、そのとき千代さんと戦ったら間違いなく怒られる。それに、トリコなら…トリコなら…絶対に食の奥義を習得して帰って来る!


「瑞貴さん、珍師範が戻られるまで私たちが対処しましょう!」

「戻るまでなら元よりそのつもりです」

「ん?」


千代さんはようやくこの場に珍師範がいないことに気づいた。コンビを組んでいたという珍師範が千代さんの気を感じ取れないわけがないし、何かあってここに来れないとも察したんだろう。――彼がいない間に私たちを倒して絶望を味あわせようとしているのかも。

私は腕に付けているブレスレットに力を集中させた。だけど薙刀にするためじゃない……このまま力を使うためだ。


〈ピギャアァァアアア!!〉

〈ヴァアァァアアア!!〉

「ヒッヒッヒッヒッ。こ奴らも早く暴れたくてウズウズしているんじゃ。さっさと結界とやらを解いてくれんかのう?」

「お断りします」


再び私はニッコリと笑った。きっと向こうから見ればとても清々しいほどの笑顔だろう。


「…………」

「……っ!」


……大竹はついに広場の端にいる小松を見つけた。ずいぶん様子が変わった大竹だが、小松は彼が誰なのかと気づいたのか目を大きく見開いた。
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