特別編
□不思議なあいつ
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「今日の晩メシはどうすっか考えてたんだ。小松のホテルにするか、何か捕獲しに行くか、自分の家を食うかってな」
「……最後のはやめなよ。この間建てたばかりでしょ」
冷静にツッコミを入れた瑞貴はテリーとオブサウルスの元へ戻って行った。心配性のくせに余計に干渉しないんだよな、こいつは。近過ぎず遠過ぎずって感じだが、ときどきどこかへ行ってしまうんじゃないかという衝動に何度駆られただろう。
それに俺が最初に見つけたのに、今じゃ小松やココやサニーっていうライバルまで発生しちまうし。リンもティナも仲良くなってからは瑞貴に引っ付くし……同性という特権がある分、ある意味厄介なライバルだな。
「トリコー!」
「なんだ?」
「テリーが頬キスしてくれたの! 幸せ〜!」
〈ウォン!〉
しまったー! ここに一番のライバルがいやがった! そういや瑞貴はハントの対象外の動物には優しく、それでテリーが特にお気に入りだった。右頬に手を当ててハシャぐ瑞貴の横で、心なしかテリーが勝ち誇っている表情をしてやがる……!
「おい瑞貴。ちょっとこち来い」
「何?」
普段は警戒を怠らない奴だってのに、こういうときだけ警戒がねぇんだよな。好都合と言えば好都合だし、逆に心配にもなる。でもそれほど俺に心を開いてくれてるって意味もあるんだって思うと……正直嬉しい。
グイッ。
「わみゃ!?」
チュ。
前に来たのと同時俺は瑞貴の背中に腕を回して引き寄せ、テリーとは反対側の左頬にキスした。一瞬何をされたかわかんなかったのか固まる瑞貴だが、だんだん実感したのか顔が真っ赤になった。ヤベェ……可愛い。
「な、な、なっ!」
「なんだ? 嬉しかったのか?」
「違うわバカ! 何すんの!」
「テリーがやって俺がやらないのは不公平だろ」
「そういう言い訳前にも聞いた! てか、何仲間や相棒に張り合ってんのよ! バカー!」
そのあと俺が竜巻乱舞で吹っ飛ばされたのは言うまでもない。……まあ、だからと言って逃がすつもりはねぇ。意識されてねぇってわけでもねぇし、俺の本気がどれくらいかこれからも伝えてやるよ。
☆☆☆☆☆
それから数日後……テリーよりさらに最強になるライバル・ウォールペンギンが現れるなんて俺は知る由(ヨシ)がなかった。
「ユンちゃーん!」
〈ユーン!〉
俺の恋は前途多難どころか前途全難だって、よーくわかった。
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