特別編
□癒しはどこに?
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――あれから一週間。瑞貴は明日の朝に自宅に戻ることにする。
充分休めたし、在宅中にトリコとサニーがココの店を訪ねたようで、本当にキツく説教したようだ。その日帰ってきて報告したココの表情はどこか清々しかった。まるで日頃の鬱憤も同時に晴らせたかのように。
「ただいま、瑞貴ちゃん」
「お帰りなさい、ココさん!」
仕事から帰って来たココを夕食作りの途中だった瑞貴はパタパタと駆け寄って来た。エプロン姿が愛らしく、ココも思わず微笑んでしまうほどだ。
「もうすぐ夕飯ができますから、座っててください」
「僕も手伝うよ。お皿出しとくね」
「ありがとうございます」
この光景も馴染んできた。そして並べられた食事を前に二人は挨拶すると食べ始める。
「明日で帰るんだよね。寂しくなるな」
「私も。ココさんには本当にお世話になりっぱなしなのに、居心地よく思っちゃいました」
「それは僕もだよ。キッスはずっと外だから家に誰かがいるなんて新鮮で……。この幸せをくれた瑞貴ちゃんに感謝してる」
「ココさん……」
「朝起きれば瑞貴ちゃんが朝食を作ってくれて、お弁当をもらって見送ってくれて、帰って来たら暖かい笑顔で迎えてくれるから、その姿が楽しみで仕方なかった。まるで新婚みたいだなって思ったよ」
「し、新婚!?」
ボンッという効果音が聞こえるくらいに瑞貴は顔が赤くなった。ココにとってその姿すら可愛いと思うから、これが惚れた弱みという奴なのかもしれない。
「もし、また癒しが欲しいと思ったら僕の元に来て。いつでも迎えるよ」
「あ、ありがとうございます……」
☆☆☆☆☆
翌日。グルメフォーチュンの女性たちに瑞貴の姿を認知されたため、安全のためにキッスが送ってくれることになった。お礼の一つとして瑞貴はココが採ってくれた食材でお菓子を作り、キッスと食べるようにお願いした。
本当はココも付いて行きたいが占いの仕事を優先してほしいという瑞貴の願いを受け入れ、グルメフォーチュン側の崖で見送る。
「それじゃあ瑞貴ちゃん。元気でね」
「本当にお世話になりました。また改めてお礼に来ますから」
「う〜ん。また瑞貴ちゃんが来るのは嬉しいけど、お礼はこの場で欲しいな」
「えっ!? お菓子は作り置きしておいたし、何かないかな……」
ポケットやカバンを探る瑞貴にココは微笑むと、自分の腕を瑞貴の背中に回して――。
チュ。
「……えっ」
そのまま瑞貴の額にキスをした。一瞬何が起こったわからなかった瑞貴は硬直してしまうが、ココの顔が離れていくと全て察して顔を真っ赤にする。
「お礼、ちゃんともらったよ。気をつけて帰ってね」
「はははは、はい!」
「それじゃあキッス、頼んだよ」
〈ア゙ア゙ー!〉
どもりながら瑞貴はキッスに乗る。翼を広げたキッスが羽ばたくとココは見えなくなるまで瑞貴に手を振って見送った。
「……今回ばかりは、トリコとサニーに感謝かな」
その呟きは誰にも聞こえることなく、風に乗っていった。
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