特別編
□癒しはどこに?
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「本当はカフェか僕の店でゆっくりとでも思ったけどムリそうだし、僕の家に行こうか。あそこなら邪魔される心配もない」
「はい!」
行き先が決定したのでキッスはスピードを上げてココの自宅へと向かう。
断崖絶壁で建てられているココの家はよほどの超人かキッスのように飛行手段がないと行けない。グルメフォーチュンから離れた場所とはいえ、キッスに乗ればあっという間に着いた。瑞貴はお礼を言ってカバンからキッスにあるモノを差し出す。
「ありがとう、キッス。これ、お土産のハニードラゴンのハチミツで作ったケーキ。食べてくれる?」
〈ア゙ア゙ッ!〉
「へぇ、おいしそうだね」
「もちろん。ココさんの分もありますよ」
「ありがとう。じゃあ、僕は紅茶を淹れるから一緒に食べようか。話は食べながらでもしよう」
「はい!」
ココのエスコートで椅子に座ってケーキを切り分け、ココが淹れてくれた紅茶を飲む。こんな所をココのファンに見られたら確実に刺されるだろうと瑞貴は密かに思った。
そして瑞貴はココに全て話した。最近トリコとサニーが競うように何かと誘い、それが毎日も同然でさらには朝早く来るもので睡眠妨害されると。癒しの森にいるにもかかわらず休むことができないので、どこかいい場所はないかと。
「トリコとサニーがねぇ……。あの二人、今度僕がキツくお説教しておくよ」
「いえいえ! だって今日、竜巻乱舞で吹っ飛ばしてしまいましたし……」
「それじゃあ生温いよ。あの二人は昔から甘やかすと付け上がるんだ。しかも女性にムリさせるなんて品がないよ」
さすが四天王の長男。弟たちの性格も扱いもよくわかってらっしゃる。
「IGOやライフじゃ簡単にバレるし……――瑞貴ちゃん。ここにしばらく泊まったらどうかな?」
「……えっ?」
思わぬ答えに瑞貴は目をパチクリした。目的はあくまでも数日間は休息できる場所を占ってもらうためだが、まさか泊まりの誘いをされるとは思わなかった。
「ここなら簡単にバレないし、トリコたちが来ることも占えるから事前対策もできる。部屋も客用に空いてるのがあるしね」
「でもでも、ココさんにご迷惑じゃ……」
「全然、僕は大歓迎さ。もちろんキッスもね。外に出るのが不安なら買い物も全て僕に任せるといいよ」
しばし瑞貴は悩んだ。確かにココがいればトリコとサニーの対策にもなるし、断崖絶壁の家ならばココのファンに怯えることもなくゆっくりできる。キッスという癒しもいるし、なにより今の瑞貴には休息と癒しが欲しいと切実に思っているのだ。
「お願いします! あっ、家事とかはやらせてください!」
「ありがとう。でも僕も時間があったら手伝うよ」
こうして瑞貴はココの家にしばらく居候することにした。
☆☆☆☆☆
翌日。早く起きた瑞貴は朝食を用意し、次に起きたココと一緒に食べる。片付けは一緒にやれば外からキッスのお迎えが来た。
「じゃあ行ってくるね。好きにくつろいでいいから」
「はい。あっ、これお弁当です。お昼に食べてください」
「ありがとう。瑞貴ちゃんからお弁当をもらえるなんて嬉しいな」
「フフッ。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
そうやって見送ったあとは洗濯したり、掃除したり、持参した本を読んだり、テレビを見たり、薙刀で修業をする。ココが帰れば支度していた夕食の仕上げを共にし、寝るときはそれぞれの部屋で休む前に「おやすみ」と声をかける。そんな日々が続いた。