BOOK MHA/HQ

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体育の時の事を説明して、ぶすくれた治をよそに
チーズケーキ食べようとしたら


「何で自分が食うとるんや、差し入れやろ!俺の分が減るやんか!!」


慌ててチーズケーキを持っている私の手ごと
治の大きな手で止められた
えー、だってお腹すいたもん


「ちゃーんと数えてあんねんから、部活あとのお楽しみ分が減るやないか」

『じゃあ、今1個半分こしよ!分け合って仲良し!』


そう提案すれば、そんなら、まぁ、ええけど
妥協してくれた
治の口元にチーズケーキを運んで、大きな口でぱくり
うぬん
これ、絶対半分以上食べられたんですけど

残りをもぐもぐ食べていると
治はスマオを見て、何やら真剣な表情
部活の重要連絡かな?とか思ったけど、北すぐそこにいるし

ずいと目の前に突き出されたスマホには、バレーする私の姿が映っていて
差出人は、侑……ゆうって誰?


「俺も出流さんのジャンフロ生で見たい。ツムばっかずるいやん」


ツムって双子の片割れくんだよね?
ツムばっかりって言ってるけど
動画の送り主、侑(ゆう)だし
ちょっと混乱なんだけど
もしかして


『この侑(ゆう)って誰?』

「誰って、ツムやんか。宮 侑(あつむ)くそムカつく片割れや」

『これであつむって読むんだ。あつむでツムね!納得!』


ぽん!と両手を叩いて、スッキリ!見たいな表情をしたら
何でか両方のほっぺを引っ張られる


「今、そんな話ちゃうやろ」

『いひゃい、おひゃむふん』


頬をひっぱる治の手に、自分の手を重ねて放すようにひっぱってもびくともしない
ようやく離れた手を合図に、ほっぺを押さえる


「ジャンフロ、今度見せてや。むしろ一緒にバレーやろ」

『そんな人さまに見てもらうサーブじゃないんだけど』

「ええから、ツムが見て、俺が見てへんのが気に入らんねん」


ふんす!とそっぽを向く治に、失礼だけど笑ってしまって
なに笑っとんの!
とまたほっぺをつままれる
やりかえそうと手を伸ばすけど
悔しいが身長差で顔まで全然届かない


「ほかにツムが知っとって、俺が知らんことある?」

『ツムの方とあんまり関わりないから、多分ないと思うけど…くしゅん』


変なタイミングでくしゃみ出た……恥ずかし
鼻水でなくて良かった


「汗かいて、冷えたんとちゃう?」

『そうかも。夜長めにお風呂はいろうかな』

「手ぇも、何や冷えとらん?」

『末端冷え性だもん』


あと1時間だし、夜ゆっくりお風呂で温まれば風邪はひかないと思うし
大丈夫だよって、見上げたたら
バサリ、何かが降ってきた


「これ羽織っとき」

『いいよ。治寒いじゃん』

「そこまで寒ない」

『いや、でも、風邪ひいたらバレー出来ないんだよ』

「ひかんし。お菓子のお礼思とけばええ。どうせ放課後差し入れ貰いに来るんやから」


頭に降ってきたのは、治の制服で
シャツにカーディガンの治くんは、見てて寒そう……には見えないけど
クラスの男子も何人かはカーディガンで過ごしてるし
うーん、でも、なんか、納得できないなぁ
治も譲る気ないだろうし
さて、どうしよう


「駄々こねんと、ええ子で持っとって。ほなな」


多分さっきので乱れてた髪の毛を、そっと撫でるように整えて
ひらひら手を振って治は教室を出て行ってしまった
残された制服を肩から羽織ってみる
うん、でかすぎて、不格好だけど


『(あったかいなぁ)』


これ、袖通しても着れちゃいそうだよね
スカート、ギリ見えるか見えないかぐらい
昨日のお昼御飯のお礼のお菓子のお礼なんて、イタチごっこみたい
体育の後の数学は、黒板を見ても絵文字のオンパレードだし
板書も眠くなる
これは、もう寝るしかないな
左手で顔を支えながら、右手は板書してるように見せかけて
そっと目を閉じた




「北さん。出流さん、器用に寝とるな」

「数学やったし、体育の後やから、半分は寝とったな」

「起こすん、可愛そうやな」

「治、寝顔観察はしまいや?部活行くで」
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