BOOK 頭文字D

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「−凪は、赤とピンクだったら、どっちが好き?−」

『ものにもよるけど、小さいものならピンク。大きいなら赤かなぁ』


なんて会話をしたのが数日前
涼介と啓介が彼氏発言をした日から数えればもっとたつ
拓海は今日はガソスタでバイト
私は夜のバイトがなくて
言えでごろごろとテレビを見てる


「ただいまー」

『おかえり拓海』

「ねぇちゃん、これ」

『………どうしたの?誰かに告白でもするの?』


ガソスタで何があった?
鞄を肩にかけた、学ラン姿
そこまではいいよ、うん
その両手に持ってる、薔薇の花束は何?
誰かに告白するの?


「姉ちゃん」


はい
と渡された花束から、拓海はメッセージカードだけ抜いた
はぁとため息を吐く拓海が部屋に消えようとしてるから
慌てて呼びとめる


『これ、どうするのよ』

「それは、姉ちゃんに。俺にはこのカードだけ」


メッセージカードを、ひらひら振り
手を伸ばせば、素直にそれを渡してくれた
片手で開いて、中を見れば
バトルの申込
差出人は


『涼介、から?』

「バイト先まで、あの人が来てさ。それ置いて行った」

『で、コレは?』

「姉ちゃんにプレゼントだってさ」


俺のは花束のついでみたいなもんだろ
そういう拓海は、今度こそ部屋に消えた
いやいや、バトルの申し込みのついでだろう
こんな大きな花束……

とりあえず、一番大きな花瓶にバラを活け
ケータイをカシカシ操作する


『−何、あの薔薇の花束―』

「−赤がいいって言ったのは凪だろ?−」

『……』


論点がずれてる
むしろ、赤がいいとは言ったけど
それは色の話であって、薔薇の花束の話じゃない


『−色の話はしたけど、花束の話じゃなかったー』


そう返信を返せば
電話がかかってきた
出るか、出ないか迷って
リビングから、自分の部屋に移動する
まだ続く着信に、部屋のドアを閉めたと同時に
通話ボタンを押した


「出ないかと思ったよ」

『嫌味言うなら切るよ』

「はは、もう言わないよ。薔薇の花束、お気に召さなかったかな?」


クスクス笑う涼介の声に
何だかからかわれている気分になる

別に、気に入らないとか、気に入るとかじゃないけど


「けど?」

『びっくりした。初めてちゃんとした花束もらったから』

「今度はちゃんと会って渡す」


少しだけ雑談して
電話を切った
一輪だけ花束から抜いて、1輪用の花瓶なんてないから
その辺のコップに水を入れて、部屋に持ってきた
赤い 赤い 薔薇の花

とうとう、涼介と拓海のバトル・・・・・・か
別にどっちを応援するきもないけれど
秋名でのバトルなら、勝つのはきっと、いや絶対拓海だ
涼介でも、秋名では勝てない

それを口に出して言ったら、啓介がうるさいだろうな





「だぁかぁらぁ、拓海が女ボケでですね!!」

『樹、声でかい。それで、私にどうしろと』

「今日、妙義ナイトキッズとレッドサンズの交流戦があって」

『そんなんで、拓海がノリ気になるとは思えないなぁ』

「とにかく!!親父さんが凪さん連れて行くなら、許すって・・・」

『またか・・・』


レッドサンズねぇ、なーんか嫌な予感しかしないんだよなぁ
でも、こんな必死で頼みこんで、父さんの許可ももらってるみたいだし


『わかった、準備しておくよ』


今日はバイトもうないし
明日も1日休みだから、ま、いっか


「帰りに関しては、拓海と樹だっけか?あいつら二人だけでもいいぞ」

『・・・うん、そうなるかもしれなくもない』

「(やけに素直だな)」


気―がーおーもーい・・・
一応、連絡をするべきか・・・
いや、見学だけだしいいかな
見つかったら、見つかったで
みつからなかったら、そのまま帰ろう


「なー兄貴、凪誘ったら見に来てくれると思うか?」

「俺は行かないから、誘わなくていいぞ、啓介」




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