BOOK 頭文字D

□04
1ページ/1ページ

『ちょ、そっちが誘ったんでしょ…』

「ごめん、彼氏が急に会おうって!」

『もう、待ち合わせ場所に着いちゃったんだけど』

「本当にごめん!今度なんか奢るから」


早起きして、着ていく服選んで
約束の時間を気にしながら移動して
いざ、約束のショッピングモールに着いたとたん
約束をしていた友達のドタキャン

もぅ、どうしよう
せっかく来たから、お店もいろいろ見たいけど
一人じゃなぁ……
もぅ帰ろうかな


「あれ?凪さんすか?」

『え……あ!ケンタ』


座っている私は、見上げるようにケンタを確認
すぐに自分の荷物を持って
ケンタから離れようとしたけれど


「酷いっすね。今日は一人で涼介さんも啓介さんもいないっすよ」

『いや、ここがそっちの領域なんだと思ったら、つい…』


タッチの差で腕を掴まれ
ぶーぶー文句をいうケンタをなだめる
前回、勝手に帰ったこともあって
少しだけ気まずい…


「あの後、無事に帰れたんすか?」

『うん、大丈夫でした』

「心配してたんすよ」

『うっ、ご、ごめんね』


お詫びにと、ランチをご馳走する事になって
二人で洋食屋さんに入る
健太はハンバーグ、私はオムライスを食べて
車の話も、それ以外の話もしながら
デザートに手を伸ばす


― カシャリ ―


『ちょ、何撮ってんの』

「いや、美味そうに食ってたから、つい」


なぜか写メを取られた
ケータイをポッケトに入れ
ケンタも自分のデザートに手を伸ばす

その後、二人でお店を見て回る
洋服を見て
雑貨屋さんで一目ぼれして、ピアスを買ったり
楽しい時間はあっという間で
先ほどお昼を食べたのに
もう夜ご飯になってたりする


「今日、赤城行きません?」

『行かないよ』


即答で答えれば、苦笑するケンタ
高橋兄も弟も、面倒でしょうがないでしょう
そう言いたかったが、二人が大好きなケンタに
通用するはずもない


「二人共、来るかわからないし」

『そう言って、絶対チームの誰かが連絡して、二人共来るようになるでしょ』

「別に、二人共怒ってなかったすよ?」


いや、それはまた別の問題で
むしろ怒っていたなら、なにかしらアクションを起こすだろうし


『電車で来てるから、帰りが面倒で』

「なら、俺が送ってやるよ」


後ろから抱きつくように、体の前に腕が交差する
ケンタとの会話の中に、突然乱入してきた声は
嫌というほど聞き覚えのある声で
後ろを振り向くのが怖い…


「啓介さんに、涼介さん」


弟だけじゃなく、高橋兄までいるのか
抱きついてるのは、性格を考慮するまでもなく弟なんだろうけど

そろり と顔を後ろを少し振り向けば
思いのほか近くに、弟の顔があって
その距離の近さに、なんとなく恥ずかしくなって
すぐ下を向いた


「凪、耳赤いぞ」


クスクス笑う弟の声と
高橋兄の指摘に更に、顔に熱が集まる
ぽんぽん と高橋兄の手が頭に乗って
ようやく、弟の腕が離れた


「場所を変えようか。ここじゃ色々面倒だ」

「そうですね」

歩き出す高橋兄とケンタ
1歩遅れて、弟がその後ろについていく
んだけれど
どうも歩き出せない

うん、きっと、この先の事が嫌で、体が拒絶してるんだ…


「凪、何してんだ、置いてくぞ?」


弟が手を差し出してきたけど
その手も、やっぱり掴めなくて
じれったかったのか、弟が手を掴んで、そのままずんずん歩き出す


「役得だな、啓介」

「こいつ目離すと、すぐどっか行くだろ」

『そんな事な…』

「「「あるだろ」」」


3人の声がシンクロして、何か悲しくなってきたなぁ

それにしても
高橋兄と弟が揃うと、女性の視線が刺さる
どうせ、手を繋がれてる私を見て
似合わないとか、釣り合ってないとか、なんであんな子が
とか、内心じゃ文句のオンパレードだろうな


「どうした?」

『いや、別に、高橋兄と弟が揃うと、女性の視線が刺さる……』

「(こいつ、気づいてるのか?通り過ぎる男全員、お前の事みてるの)」


まぁ気にしない方向でいいか
どうせ、知り合いもいないし、何かあるわけでもないし






『本当、よく二人ともタイミングよく来たよね』

「まあな」

「「(ケンタが、凪の写メ送ってきて、デートなんて冗談言うから)」」



二人して、各々の用事をできるだけ早く終わらせて
ケンタを探した高橋兄弟でした

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ