BOOK 気まぐれ

□5.5
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衆合の鬼の獄卒との飲み会が決定して
当日になって、凪さんの姿がない事に気が付いて
お香さんに尋ねれば


「毎回、欠席なのよ凪ちゃんは」


との返答
理由を聞いても話してくれない 
とお香さんは困り顔で
よっこいせ と立ち上がり、凪さんの職場を目指す

ようやく見つけた凪さんは
岩の上に座り、乱れた着物から投げ出された素足が
ヤケにエロく見えて、一瞬足が止まる

声をかけ、ゆっくり振り向く凪さんを見て
これほどまでに、衆合地獄が似合う獄卒がいるのかと思うほど
彼女の雰囲気は男を誘っていた

帰ろうとする凪さんを、無理やりシャワー室に押し込め
その間に、着替えの着物を調達する
電話1本ですぐに運ばれた着物と、指定した簪
タオル1枚で出てきた凪さんに、頭が痛くなる
胸、結構あるんだな

身支度を終え、簪を挿し
揃って飲み屋に行けば
出てくる時と変わらず、賑やかな雰囲気に
凪さんの表情は逆に曇る

迷わず末席に腰を落ち着け
ウーロン茶を頼み、そのへんのつまみを適当に食べている凪さん
そのすぐ近くの獄卒2名


「引きこもりの不細工が、何で鬼灯様と一緒に来たのよ」

「きっと卑怯な手を使ったのよ。きったなーい」


根拠のない話で勝手に盛り上がる
あぁ、これが飲み会に参加しない理由ですか
流石に、これが毎回では参加する気も失せますね

女性にも飲みやすい梅酒をもらい
凪さんに差し出す


「少しは飲みなさい」

『飲めないんですよ。お酒に強くないので』

「だから弱い酒をもらってきたんでしょう」


いいから飲んでみなさい
もしダメなら、自分がちゃんと飲み干そうとしたが
一口のんだ凪さんは、何も言わなかったから
飲めると判断を下し
もし、飲みすぎたりペースが速くなったら
飲みすぎですと、叱ろうと考えていたところに
また別の獄卒が声を上げる


「鬼灯さまぁ〜〜こんな不細工ほっといて、こっちで飲みましょうよ」

「そうそう、なぁんで今日に限って引きこもりが出てくるのよぉ、感じ悪―い」


両方の腕に別々の方が張り付き
どうにもアルコールくさい
二人の声に、周りの獄卒が一斉に凪さんを見た


『なら、邪魔ものは帰ります』


ゆっくりした動作で、財布からお金をテーブルに置き
背を丸めるでもなく
視線を落とすでもなく
凛として、彼女は飲み屋を後にする
彼女が来てまだ、30分とたっていない


「可愛くなーい、別に邪魔なんて言ってないし〜〜」

「帰ることないのにね〜〜鬼灯様」


確かにこんな飲み会では、参加する気もおきませんね


「腕を離せ」


思ったより低い声が出て、一瞬のうちに獄卒は距離をとった
賢明な判断ですね


「お香さん、後はお任せします」

「はい。鬼灯様、頼みますね」


その声には返事をせずに
飲み屋を後にし、消えた背中を探した




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