BOOK 鹿

□11
1ページ/1ページ

何だかすっごく長く眠った気がして
だるい体を起こせば、すぐ近くの椅子にシカマルが座ったまま寝てた
最悪な夢の内容を思い出して、吐き気がする


「起きたのか、気分は?」

『あ、うん、大丈夫』


本当は吐き気もあるし、体も怠いけど
口からは、大丈夫と出ていた


「嘘つくな、バレてんぞ」


乱れた髪を整えてくれた手が、頬に降りる
瞬間、あの男を思いだして、ゾクリと背筋に悪寒が走る
ちっと舌打ちしたシカマルに
何でか抱きしめられた


「あいつ、湯の国の富豪のバカ息子は、誘拐の現行犯でしかるべき処罰を受けてる」

「金で忍をやとって、幻術で動きを封じて、自分の屋敷に連れて帰るつもりだったらしい」


悪夢って言ってたヤツ、あれ、幻術だから
安心していい


『あれ全部、本当に夢みたいなもんだったんだ』

「あぁ、ま、よく考えれば偽物ってぐらい分かるんだけどな」


面目ない
と眉を下げれば、シカマルが頭を撫でてくれた
あ、来たな とシカマルがドアを見るから、私もドアを見る


「ナギ!お前大丈夫か!気持ち悪くないか!?痛いところないか!?」

『兄貴...痛いって』

「どこが痛いんだ!!あの野郎マジ今からぶっ殺す!!」


兄貴って、今任務中じゃなかった?
何でここにいんの?
兄貴にぎゅうぎゅう痛いほど抱きしめられて
その後ろににっこり笑うカカシさんが見えて
容赦なく兄貴を引き剥がした


「ナギちゃん大丈夫だったー?」

『あ、うん。というか兄貴任務は?』

「馬鹿野郎!妹が誘拐未遂にあって、幻術までかけられて、任務なんかやってられっか!!」

「相変わらずナギバカな兄貴だな」

「こんの奈良のクソガキ。てめぇが俺を兄貴とかいうから、可愛い可愛い俺のナギが真似て、お兄ちゃんから兄貴って呼び方変えたんだぞ、クソが!」

「ナギちゃん馬鹿な兄はほっといて、いちご大福食べる?ほら、あーん」


カオスだ
だけど、兄貴が任務より私を優先してくれたことが、なんだかくすぐったい


『兄貴』

「ん?どうした?」

『私、兄貴のお荷物になってないかな?』

「...馬鹿なこと言うな、たった一人しかいない妹が、なんでお荷物になんだ」

『んー、夢の中の兄貴に、そう言われたから』


ふざけてた兄貴が、真剣な顔になって
そっと近づく
いいか、よーく聞け


「俺は俺の妹を傷つける奴がいたら、使える術全て使って、傷つけた相手をぶっ殺す。大事な妹を守るのは兄貴の役目だ。お前はただ笑ってりゃいーんだ。お前が笑えるように里を仲間を、そこにいるクソ生意気なガキを守るのが俺の役目だ」


再度ぎゅうぎゅう抱きしめられた
んな、お荷物なんて悲しいこと二度と言うな
優しく怒られた
カカシさんも笑って、頭を撫でてくれて
俺もナギちゃん大好きだから、頼っていーんだよ
って言ってくれた


『みんな、大好き』



.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ