BOOK MHA/HQ

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あっと言う間に兵庫で1ヶ月が過ぎて
10月に突入
稲荷ア高校も春高の予選が始まったけど
順当に勝ち上がっている

お昼を治と一緒に食べるのが、最早定番となる中
今日はお重のお弁当箱を持参
家で暇だからと作りすぎたおかずを、一掃処分しようと大量に持ってきた
朝会った時にツムにも声をかけたから、今日は空き教室で3人でご飯
二人はずっとバレーの話をしてるし
私もその話を大人しく聞いてたんだけど


『あ、電話だ。ちょっとごめん出るね』


小声で出れば問題ないと思ったんだけど
耳が壊れるかと思うほど、大きな声に、治もツムも話を止めた



「−出流さん!!−」

『−黄金、そんな大きな声出さなくても聞こえるよ−』

「−出流さん!俺!どうやったら上手いトスあげられるようになりますか!!−」


いや、それ私に聞かないで、先輩とか監督とか、コーチに聞きなよ
なぜ他高の先輩に気軽に聞いてんだ、こいつ


『−黄金はまだバレー初めたばっかだし、練習あるのみでしょ。こんな電話する暇あるなら練習しな−』

「−どんな練習したらいいですか!!−」


えー、ストレッチとか筋トレメニューなら、相談にのれるけど
具体的な練習とかしらないし、むしろ私バレー初心者だからね
アドバイスとかも出来ないし
うーーん

どう返してあげようか迷っていたら、耳元のスマホを取られて
ちょ、ツム、勝手に…


「−初めてやったら、まずトスを一定にせぇ、んで自分なりの高いトス、低いトスの練習、最後にスパイカーに合わせる練習せぇや−」

「−だ、誰だか知らないっすけど!あざす!!俺、さっそく練習してきます!−」

「−ええよー、ほな、練習頑張り−」


多分最後の頑張りのがんば辺りで切ったツムは、ぽいと私にスマオを投げる
多分、電話の声がでかすぎてイラッとしたんだろう


『電話ごめんね。うるさくて』

「さっきの後輩か?」

『他高のね』

「なんで他高の後輩が出流に電話してくんのや」

『さぁ?話しやすいんじゃない?』


あれ?私的にはツムが、私の事呼び捨てにしてる方が驚きなんだけど
治もびっくり顔でツム見てるよ

「ツム、いつから呼び捨てにしとんのや」

「今からや。出流そーゆうん気にせぇへんやろ」

『まぁ、気にはしないけど、びっくりはする』


ええやんか!俺と出流の仲やし
どんな仲だ、むしろツムと接点あんまりないんだけどな
今日もたまたま誘っただけだし

すぐさま話題はバレーの話に戻り
私は食べ終わったお重と、取り皿を片付ける
中身はすべて空っぽ、これはいい消費先を見つけました

そろそろ午後の授業の時間で、ツムが先に教室に戻り
治は私を教室まで送ってくれるらしい
遠回りになるから、いいって言ってるんだけど
かたくなに、譲ろうとしないから諦めた


「俺も、出流って呼んでええ?」

『いいよ。それ考えてて難しい顔してたん?』

「ツムばっかずるいやん」


おいでおいでと、治を私の机のとこまで呼んで
鞄の中から、小さい保冷バックを取り出す


『治だけに、おまけ』


ぱぁ といつも通りお花が飛んで、すぐ様バックの中身を確認


『牛乳プリンみたいなやつ、パンナコッタって言うんだけど』


カップがかさばるから、2個しか持って来なかったから
ツムには内緒
使い捨てのスプーンを渡せば、すぐさま口に運ぶ治
さっきあんなにいっぱいご飯を食べたのに、まだ食べられるのか
そして太らないなんて、なんて都合のいいからだ


「もう1個は出流が食うん?」

『欲しいならあげるよ、放課後部活前に食べにおいで』

「ええんか?なら一口おすそ分け」


パンナコッタののったスプーンを差し出すから
そのままパクリと食べて気づく
ここ、教室だし、この双子、すっごい人気があるんじゃなかったっけ?
いつものノリで食べたけど、自分の首を絞める行為じゃないかな…
あ、でも我ながら美味しい


「残り、放課後まで食べたらあかんからな。絶対やぞ」

『はいはい、授業に遅れるから早く教室に戻りなさい』

「ほな」


ひらひらと手を振って去っていく治を見送って
保冷バックをしまい、私も次の授業の準備をする


「白銀さんと治くんって付き合ってるん?」

「知らんけど、白銀さんの事悪く言うてた人、治くんにけちょんけちょんに文句言われた話、聞いたんやけど」

「治くん、とっつきにくい思てたんやけど、白銀さんの前やと可愛え顔しとるよね。こんクラスにしょっちゅう来て、眼の保養や」

「「せやねぇ〜〜」」


聞こえてくる女子の会話が文句ではないのがありがたいけれど
これはこれで恥ずかしい
そっと机に腕を組んで赤いであろう顔を隠した




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