BOOK MHA/HQ

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ほっといてくれ発言から2日
友達もいないし、何かいろんな噂が広がってるせいか
私の周りには、本当に誰も寄ってこない
先生も、あと少しで卒業でおおごとにならないなら、触れないでおこう
みたいな感じ

休み時間は本を読んだり、ぼーっとしたり
クラスメイトの話に耳を傾けたりして過ごして
でも今日は珍しく昼休みに電話が来て
クラスで話すのも居心地が悪いから、校舎の外、人気の少ない所に移動

なんてこったない、ただ、私が元気かどうかの電話に
これだったらクラスで電話しても大丈夫だったじゃんとため息
そのまま、しゃがみ込んで見上げれば
校舎の隙間から見える空は、アホほど青い


「探しよったで」


声の先には、片割れくんがいて
どうやら私を探していたらしい


『宮くん、どうしたの?』

「侑呼んでくれへんのですか?」

『呼ぶほど仲良くないじゃん』

「別にツムでもええですよ」


ゆっくりと近づいて、よっこらせ と隣に座る
何か話があったんじゃないかと、ツムを見てるけど
話しは始まらない


「サムが、凹んどるんや。へなちょこなスパイクしか打てへん」

『それは一大事じゃん』

「そーなんよ。原因なんだと思う?」


分かってるくせに、こういうきき方してくるんだ
高校NO1セッターは、いい性格してる
セッターって、こういう性格じゃないとダメなのかな?
いや、でも、伊達工の1年セッターはこんなんじゃないか


『さぁ、なんだろうねぇ』

「わかっとるんに、意地悪やんな」

『ん、自分でもそう思う。意地はってるなって思うし、酷いこと言ったなって思う。卑屈もいい加減ウザいなとも思う。けど……もーーどうしようね』


視線をツムから、空に戻して
独り言のように呟くけど
ツムからの返事もない
この子は何しに来たんだ?どうにか仲直りせぇ!って言いに来たのかと思ったけど


「正直、アンタの事はどーでもええねん。サムが何であんた一人のせいで調子落とすんか、意味分からんし。でも調子悪いんもほんまやから、どうにか出来るんなら、どうにかしたいねん。これでも俺ん片割れやし」


声色は真剣だけど、トゲトゲはしてない


『んー……よし!!バレーでもしようか!!どっかにボールないかな?できれば外でも使えるやつ!』

「ここにあんで、ってか、持ってきててん」


うじうじ悩んでも仕方無いから、体動かした方がいい
へたっぴに付き合わせて申し訳ないとは思うけど
隣り合わせで座り込んで話すより、全然いいと思う

ほな、行くでー


「んで出流さんは、なーんでそんな元気ないん?何かあったんやろ?応援するしないだけやないんとちゃう?」

『そうだねぇ、よそ者って言われちゃって、卑屈になってる所なの』

「あー女子がいろいろ噂しるやつやろ」

『そーそー、私だって好きでよそ者でいるわけじゃないし、いきなり関西弁とか話せないし、でも取り繕うのも面倒!卒業まで半年もないし』


アンダーだったり、オーバーだったり
ゆるく跳ねるボールを落とすことなく会話が進む
バカにするでもなく、さとすわけでもないツムは、聞くに徹している


「それとサムは関係あらへんやろ」

『うん、関係ない。だけど今卑屈モードじゃん?通常モードへの戻り方が分かんなくなっちゃったみたいな感じ!』

「自分面倒な性格やな」

『それは私も思う、から、どうしたら、いいかな!』

「ちょ、いきなり強打打つなし!」


流石全国区のレギュラー選手
私ごときの強打は難なく拾ってくれる
これ、はたから見たら完全なやつあたりじゃない?

ふわりと頭上に戻るボールをオーバーで返そうとして
私とボールの間に、大きな手の平が差し込まれて
片手でボールを持って行ってしまった
げっ!という声に後ろを振り返れば、不機嫌な顔した治くんで
軽くボールを上げたと思えば
私なんか比べられないほどの威力で、ボールはツムへ向かう


「人には大人しゅうしとけ言うて、自分は仲良ぉバレーしとんのか」

「サム!これ言いだしたん、出流さんやで」

「それでも、気にくわん事に変わりはないんや」


あー兄弟げんかが始まりそうだったから
苦笑しながら間に入る
逃げるようにツムが校舎の方へ向かって
私と治だけが取り残される


『さっきの話聞いてた?』

「おん」

『もう怒ってもないし、捻くれるのも疲れたから、普通に戻りたいんだけどさ』

「おん」

『また仲良くしてくれる?こっちで友達って呼べるの治しかいないし』

「おん」

『じゃ、仲直りね』




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