BOOK MHA/HQ

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「出流さん、ちょお来たって」

『?どこに?』

「バレー部」

『行きません、お休みなさい』


お昼御飯を教室で食べて、日差しが暖かい、絶好のお昼寝タイム
治がいる方とは反対を向いて、断固拒否の姿勢を貫く
だけど、反応がなんもないし
諦める気配もないのが気になって
チラッと治を見る


「監督直々に呼んでんのや。出流さん連れてかんと、俺が怒られるんやけど」

『待って、私なんかした?監督に呼ばれるって……』

「悪い話とちゃうやろ。たぶんお願いごとや」


さ、行こか
にっこり手を差し出すから、なんの気なしにその手をとって
治に手を引かれながら歩く
お願いごとってなんだ、転校生に何させるんだろ
今さら部活入れとか?ないない


「この前も思ったんやけど、手ぇ小さいな」

『治に比べたら男子だって小さいんじゃない?』

「子供の手ぇみたいや」

『ちょいちょい失礼だよね!治て』


確かに女子の中でも小さい方かもしれないけれど
子供よりかは、大きいはず!自信ないけど!
制服のポケットの中でスマホが震えて
繋いでない左手で操作して、アプリを開く


「メール、誰から?」

『前の学校の後輩から』

「なんて?」

『春高の予選が始まるって。絶対東京行くから、応援来てねってさ』


宮城県の春高予選
王者白鳥沢、青葉城西、伊達工業、条善寺高校、他にも強い学校はいっぱいある
烏野だって、弱くないけど
あー、心配、単細胞ハイテンション組が怖い、そりゃもう、すごく怖い


「出流さんは俺らだけ応援するんちゃうの?」


治の足が止まって
真剣な声のトーンに、私も足を止め、彼を見上げる
応援するんやろ
私は確かに転校して、稲荷アの生徒だけど
どれか1校しか応援しちゃいけないとするなら


『どれか1校しか応援しちゃいけないなら、私は、烏野を応援する』

「……すんません。やっぱバレー部行かんでええですわ」


今さっきまで繋がれていた手が離れて
治は私に背を向けた
治は、嘘でも稲荷アを応援するって言って欲しかったんだと思う
だけど、治も真剣にバレーしてるし
私だって真剣に応援してきた
バレーに関しては、嘘は付きたくない
それに

バレーに、1校しか応援しちゃいけないなんてルールはない

階段を下に降りる治を見届けて、私は自分の教室に戻るために来た道を振り返る


「やっぱ、あいつ、よそ者やね」


知らない女子の声が聞こえた
よそ者、100%私の事
転校生だし、制服が違う、体操服も違う、言葉も違う、住んできた場所も違う
そう認識されたって、仕方無いよ
あと数か月、半年もないで、私は卒業するし
そうすれば、ここの学校の誰ひとりと関わりはなくなるんだし
事を荒立てることなんてない


『どうせ私は そよ者 だよ』


一人、廊下でつぶやいた




「サム、白銀さんはどないした」

「北さん。あん人は、俺らの応援はせん言うてました」

「ほんまにそう言うたんか」

「前の学校、応援する言うて」


何や、あん人
前の学校言うても、今、稲荷アの生徒やん
俺ら応援したってええやんか
ムナクソ悪い


「サム。お前の解釈やのうて、白銀さんの言葉、一言一句間違わず言うてみ」

「っ、どれか1校応援するなら、烏野高校を応援するって」

「そんな当たり前の事言われて凹むなや。今までやってきた時間がちゃうんやぞ。しかもバレーに1校しか応援したらあかんルールはないやろ、どっちも応援したらええやんか。どうせお前ん事やから、俺達だけの応援したってって言うたんと違うか。お前が勝手に拗ねとるだけやんか、はよ謝って白銀さん引っ張ってこいや」

「それに応援はせんでも、協力はしてくれるかもしれへんやんか。今回頼むんは応援とちゃうやろ」


レギュラーも監督もコーチもいるなか、蹴飛ばされながら部室を追い出されて
とぼとぼ出流さんのもクラスに、足を運ぶ
ドアから中除いても、出流さんおらん
どこ行ったんやろ、トイレか?
はよー謝って、連れてかんと、北さんにどやされるやん


「宮くんやん!どないしたん?」

「(誰やこん先輩)出流さん探しとるんや」

「教室には戻ってきてへんよ。それよか聞いたで。白銀さんバレー部応援せん、廊下で言うたんやろ。誰か言いふらしてみーんな知っとるよ。やっぱよそ者は冷たい事言うんやなって話してたトコや」

「よそ者ってなんや」

「転校生で、言葉もちゃう、制服もちゃう、友達も作らへんやん?やからみんなよそ者言うてんで。仲良うしてくれてる宮くんの応援もせんなんて、酷い子やな」

「(なに勝手な事言うとんのや、こいつ。でも…)友達おらんのは好都合や。俺が一人占めできるんやから、一緒におれる時間短いしな。でも、よそ者言うんはあかん。女子はホント怖いな、そーやって影で転校生いじめとんのか、そういうん俺は嫌いや」




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