BOOK MHA/HQ

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高校3年の9月
こんな時期に転校なんてありえるかっつー文句を何度も何度も
父親に言い放った
それでも、結果は変わらない


『宮城の烏野高校から転校してきた、白銀 出流です。よろしくお願いします』


兵庫の稲荷崎高校に転入した
言葉も違うし、イントネーションも違う
そして、今まで高校生活を費やしてきた部活が、ないという事が
自分的には一番ストレスになってる

はぁと聞こえないようにため息を吐いて
呪文のような英語の授業を、ひたすら板書する

校内案内したる
世話焼きの女子のありがたい誘いに乗って
昼休み、お弁当を食べた後、校内をブラブラ散策
音楽室、科学室、家庭科室、職員室、体育館
その体育館に群がる女子は、黄色い声援を送る
そりゃそうだろ
稲荷崎といえば、バレーボール男子IH準優勝
春高でも優勝候補と謳われる学校だもんな

入口付近で騒ぐ女子の後ろを通り過ぎようとして
一瞬ボールがこっちに来るのを見て
とっさに前の女子を搔き分ける


「きゃっ!」


上手く女子をかばいながらボールを弾いた
我ながらいい反射神経だ、うん


『無理やり押し入ってごめんなさい』


一応形だけの謝罪を残して、案内をしてくれる女子の元に戻れば
かっこいいやん なんて褒められたけど


『爪、やっちゃった』


普段短い爪も、引っ越しと部活がない事に油断して、切るの忘れてた
しっかりと爪に亀裂が入ってしまって、これ、剥くと血が出る奴
保健室まで案内してもらって、教室には一人でも戻れるから先行ってて
数人で保健室を訪れるのは流石に悪いと思ったのか
女子達は教室に戻っていく


『失礼します。先生爪切りと絆創膏ください』

「あらら、3年の転校生の子ね。学校はもう慣れた?」

『初日で慣れたらすごいですよ。まだまだ全然です』

渡された爪切りで、割れた爪を処理、ついでにほかの爪も切っておく
これ以上爪が裂けないように絆創膏したら、処置は終わり


「せんせー、アイシングかしてやー」


ノックも何もなく要件を言いながら入って来た生徒に目線をやれば
かの有名なツインズの片割れ
わ!初めて見た、身長高い、腕長い、手大きい

マジマジと観察してたからなのか、ばっちりと目線が合ってしまって


「3年に転校生来たって噂になっとんの、自分?」

『そうだよ。ツインズの片割れ君』

「何や、自分の事知っとんのか」

『高校男子バレーボール界では有名でしょ』


私もそれの関係者だ
とほのめかして伝えた所で、目つきが変わる
あ、これ、あれだよ、バレー馬鹿の一種のやつ


「はい宮君、アイシング。テーピングは必要?」

「せんせーテーピング下手やから、もうやってきた」

「うーん、先生も下手やと思うわ」


指さす先は、彼の足首だけど
そのテーピングはさぁ
思う所はあるけれど、それを指摘するべきか否か
バレーボールに稲荷崎でも関わるか、関わらないか
まだ自分でも決めてない
むしろ関わりたくない方が強いのかもしれないけど
これを見過ごせと?


『あー、んー、あのさ』

「なんや」

『そのテーピングだと、膝に来るかもしれないから、放課後の練習終わったら、アイシング両膝したほうがいいよ』

「テーピングのやり方、悪い言うんか」

『固定の意味ではばっちり。だけど、伸びる運動にはちょっと厳しいかも?まぁ見ず知らずの奴からの助言だから、理解しなくてもいいよ。先生絆創膏ありがとうございました』


うーん、なんだか機嫌を損ねてしまったきがする
だけど、素直にアイシングしてくれたらいいな
無理か、何か、意地でもやらなそうな頑固な性格してそうだもん
これはこれで、問題児そうだ
まぁ、生意気な後輩に比べれば、全然ましかもしれないけれどね



「せんせー、あの人何組の転校生なん?」

「さぁ、先生も知らん。けど北くんなら知っとるんやない?」






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