BOOK 十六夜

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任務の報告書を出して、いい具合に日がさして
いい具合に陰になってる場所を見つけて
ごろんと横になった
木々の間から見える雲と青空がいいコントラストで
すっごく良く眠れそう…

だったんだけど


「久しいの、十六夜」

『パックン、今はナギってゆーんだ』


お腹の上に降って来たのは、カカシの忍犬
あーあ、もう見つかっちゃった
と笑えば、すぐカカシも追い付くと残し、ドロンと消えてしまった


「ナギさん」

『もう見つかっちゃった』

「朝の話だけど」


やっぱりそうだよね
気になっちゃうよね、カカシもヤマトも何度体験しても慣れないって言ってたから
怒られちゃうかなーとは思ってたんだけどね


『大丈夫だよ』

「でも周りは心配するんだから、避けるぐらいしてっていつも言ってるでしょーよ」

『水量あったから、目くらましになるかと思ってさ』


見上げたカカシは、困ったように眉が下がっていて
こんな顔させたいわけじゃないんだけどね


『わかった、なるべくしないようにする。いざという時はしょうがないけど、気軽にしない』

「約束だよナギさん」

『うん、約束ね』


と小指と小指を結んだ
心配症なのは変わらないね
と言えば、ナギさんはもう少し一緒に任務に行く人の気持ちを考えたらいい
と言い返された


「今でも水は友達なんだ」

『そーだね、前より仲良しになってる気がするよ』


右手を上げて、意識をすれば周りの水分が集まりだす
くるくると円をかけば、水も回り、ぴちゃんと跳ねる


『シカマルが驚いてた』

「俺だって最初驚いた」

『ヤマトもびっくりして、怪我ないかってすごくあわててた』

「アイツは今でも同じ反応するよ」


たしかに
ぐしぐしと頭を撫でられて、頭についた草を優しく取ってくれる
カカシが暗部を抜けた時、すでに私より大きかったけど
その頃より、大きくなってる気がする


『カカシ、大きくなったね』

「そりゃね」

『もう私なんかより、すごい忍になってるもんね』

「そんな事ない」


俺、ナギさんの 私なんか って嫌い
むすっとする右目は、あの頃と変わらない


「ナギさん、もう俺の家に住んじゃいなよ」

『ヤマトが拗ねるよ』

「しょーがないから、アイツも一緒に」

『それは賑やかでいいね』

「ナギさん、一人ぼっち嫌いでしょ」


うん
一人ぼっちは嫌い
だけど、知らない誰かと一緒にいるのも好きじゃない

仲間は好きだけど、不用意に体に触ったり
気にかけたり、気にかけられたりは特定の人間だけ
カカシとヤマトだけ
この二人は、数多くいる後輩の中でも
特別な後輩


『ならそうしよっか』

「うん、火影様に報告しとかないと」

『よろしく』


んじゃ私はヤマトを御誘いに行こうかなー
立ち上がって、ぐーんと伸びをする
あ、と思い出したようにカカシは手をぽんと叩く


「それからシカマルに呼び捨て許したの?」

『うん』

「ずいるい」

『カカシだって呼び捨てで呼んで良いんだよ』


黙ったカカシ
一番最初に『さんはいらない』って言ったのに
年上でしょって、断ったのはカカシなのに


「ナギ」

『なぁにカカシ』

「ナギ」

『なぁに』


クスクス笑えば、ぎゅっと抱きしめられる
私を抱きしめる意味を、私はとうの昔に知っていて
それを甘んじて受けている
私の気持ちも、カカシは知っていて
それでも抱きしめてくる
私たちはそういうバランスの上を、グラグラ揺れながら
付かず離れず、一緒にいる


「きっとヤマトが騒ぐね」

『ヤマトは中々呼べないだろうね』

「そうだね、ヘタレだからね」


帰ろっか
と差し出された手に自分の手を乗せ
手をつなぎながら家に帰る
あ、シカマルに説明しなきゃ
後ででいっかな?




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