おジャ魔女どれみ
□第7話:家族
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マジョルカの件も落ち着いて、MAHO堂に帰った私達。
店の新装開店で再スタートをきり、上場な売り上げである。
実家のイザコザが落ち着いたことを日向さんと櫻井さんにも告げ、借りていたマンションをお礼を言ってお返しした。
日向さんも櫻井さんも自分のことのように喜んでくれた。
以前と変わったことといえば、ぽっぷちゃんが加わったことぐらいか…
以前より賑やかな毎日を送っていたある日のこと。
「…運動会…。」
「そっか、ライムちゃんは初めての参加だよね〜。運動会ってのは、全校生徒が赤組と白組に別れて色々な種目で競いあうイベントなんだよ!」
学校にはそんなのもあるのか…
「家族の人も来てくれて、お弁当だって何時もより豪華なんだよ!」
「どれみちゃん〜、本音はお弁当の方やろ〜。」
「ばれたか〜。」
そんなにニヤける程嬉しいのか…
……………………。
運動会か…。
「あッ、マジョリカも来るでしょ?ライムちゃんの晴れ舞台を見に!」
「フンッ!当たり前じゃろうが!」
ッ!
「クスクス。マジョリカったらね、運動会の為に色々料理を覚えてるのよ〜。」
…リカ…
…どうしよう…
嬉しくて顔が火照る…
塵取で飛んでいるリカを捕まえて抱きしめる。
「やっぱマジョリカは、ライムちゃんの事となると目の色変えるよね〜。」
「ほんま、微笑ましいわ〜。」
「…でもマジョリカ…どうやってその姿でお弁当を持って行くの?」
「「そう言えば…。」」
「ふふふ。其処は大丈夫よ。ある人に頼んでるから。」
「「「ある人?」」」
…?
誰か来てくれるのか…
腕の中にいるリカに視線を移しても、「お楽しみじゃ」と教えてくれなかった。
そんなこんなで日にちが近づくに連れ、学校中が運動会ムードになり、あっというまに当日になる。
皆がそれぞれやる気に満ちている中、なにか違和感を感じる。
何だろう…
この禍々しい気…。
グランドの至る所から感じる…。
こういう気は、必ず誰かを巻き込み、大惨事を起こす。
子供達が怪我をする姿は見たくないし…
…結界を張っておいたがいいか…
結界を張る事で、先程までの禍々しい気が消失し、辺りは清浄な空間になった。
誰も怪我をすることなく、運動会は開催され、生徒達も皆浮き足立っている。
自分の活躍を親に見てもらおうと、辺りをキョロキョロと見渡し、保護者を探している春風さん達。
保護者スペースは少し離れた向かい側に設けられているのだが、どうやらそれぞれ自分の家族を見つけたようだ。
「あ、いたわ!パパ、ママ、婆や〜!」
「あ!お父ちゃんもおる!おーい!」
家族に手を振る藤原さんと妹尾さんに、おかずの心配をする春風さん。
そんな春風さん達を少し離れた木陰から私は見守っていた。
私だけ他の子達がいる席から離れ、読書をしているのだが…
そうせざるを得ないのだ。
何故なら…。
「はい、ライムちゃん!こっちにアングル頂戴。」
「いいね〜。もう一枚!」
パシャパシャ!
「ライムちゃん。はい、お水。脱水と日焼けには気をつけてね。」
「…はい。」
学校行事だというのに、何故か撮影スタッフや櫻井さんまで来ているのだ。
櫻井さんがどこからか運動会の話を聞きつけたようで、「可愛いライムちゃんの晴れ姿を写真集に収めるね!」と意気込みだし、今に至る。
学校側にはもう許可をもらったとか…
はぁぁ…
撮影が一旦終わり、休憩時間になったため、その場で読書をしているのだが…
落ち着かない…
何故なら、撮影中からずっと学校の生徒や保護者達のギャラリーが辺りを囲んでおり、逐一こちらを見ているからだ。
「ライムちゃん…体操服姿も可愛い〜❤」
「あの本を読む姿も凛々しくて、堪らないわ〜❤」
「生足…❤」
「お前、声かけてこいよ!」
「嫌だよ!邪魔したくないし…」
「あの子がライム・リーシャちゃんね❤娘が言った通り、本当に同じ学校だなんて〜❤」
「ほんと…テレビで見るより可愛いわ〜❤」
写真を撮られたりして、休まる時がないが…もう慣れた…
特に害はないため、放置したまま読書を読み続ける。
「…ライムちゃんの周りだけ世界が違う…。」
「ほんま…ライムちゃんが休まる時がないな…。」
「「「芸能人て…大変…。」」」
そんな時だ。
少し離れた場所から悲鳴にも近い、物凄い歓声が聞こえてきた。
「「「「「「「「キャーーーーーーー!!!!❤❤❤❤」」」」」」」
声の方にギャラリー達の視線も移り、私も咄嗟にその場を見るが…
一瞬、自分の目を疑った。
…え…
なんで…ここに…
其処には、人型の白龍とウル、グリム、そしてウルの肩にいる梟姿のラズリがいたのだ。
白龍は何時もの保護者姿であるが、ウルとグリムは普通の人と変わりない姿であった。
元々二人は、破面と呼ばれ、死者の格好をしていたが、私の眷属になってからは使者として人型にもなれる。
私の使者として、色んな次元に行く時は以前と変わらない服装だが、今はモデルが着そうな服を着ている。
普通の服を着ている姿を久しぶりに見たが…
似合っている…
元々二人は、筋肉がバランスよくついた身体つきをしており、何を着ても様になる。
ギャラリー達に叫ばれながら、白龍達は真っ直ぐこちらに歩いてくる。
よくよく見れば、猫姿のララと人形のふりをしたリカを白龍が抱えており、グリムが弁当らしき包みを持っているという…
…何ともシュールな団体…
ララが言っていたことって…
こういうことだったのか…
私の前まで来た白龍達に合わせて、私もその場に立ち上がる。
「ライム…驚いたか?」
「…驚いた。」
「ライムを驚かせたかった。成功だな。」
未だに驚いている私をウルが撫でてきた。
「チッ、ほらよ。」
そう言ってどこからともなく出したグリムは、ピンク色のパソコンを私に差し出してきた。
「…これは…」
確か…春風さん達の…
バッドアイテムと呼ばれるものを集めるために、女王から預かったと言っていたパソコン。
確か、ピュアレーヌという称号だけが管理できるものだと教えてもらったが…
何故ここに…
「ララ達が持っていけだとよ。…にしても、なんだァ?この人間の数は。…ウザってェな。…昔の俺なら…全員、食っちまうのによォ。」
ビクッ!!
グリムのその怪しい気に気づいたギャラリー達は、身体をビクつかせる。
「…グリムジョー…。」
そんなグリムを白龍が威圧しだす。
「…チッ。分わぁってるって。…ライムが鬱陶しそうにしてたからよォ。」
「単純馬鹿が…。」
「やるかァ?ウルキオラ。」
そうか…
グリムは私のために追い払おうと…
私は一触即発のウルとグリムの間に入った。
グリムの方に向き直り、手をとって私の頬に当てる。
いきなりの私の行動に目を見開くグリム。
そういえば…こうやって、グリムと話すのは久しぶりか…
「…心配してくれて…ありがとう、グリム。」
…暖かい手…
この手に何度救われてきたか…
「ッ!…ケッ!」
クス。
どこか照れ臭い様子のグリムが可愛く見えてくいると、猫の姿のララがリカを抱えて白龍から降りて私の腕に乗ってきだし、ラズリも私の肩まで飛んできた。
二人から擦りよられて、ちょっとくすぐったい…
「クスクス。…擽ったいよ。」
「ニャー。」
【ライム様〜❤】
ドキンッ!!!!!!
え…
今…周りからなにか聞こえたが…
辺りを見ても、ギャラリー達が目をトロンとして顔を赤らめている以外変わりなく…
気のせいかな…
パシャパシャ
すると休憩していた筈のカメラマン達が、いつのまにか私達の周りにおり、また写真を撮り出している。
「…ウザってェ…こいつら、俺のライムを見過ぎなんだよォ。」
「…奇遇だな。それは俺も同感だ。だが、ライムは俺のだ。…お前のではない。」
「面白れェ。決着つけるかァ?」
「いいだろう。」
「…よくない。」
なんで何時も…
二人にデコピンをして、少し黙らせる。
デコピンされたことで、反省したのか二人は一気に大人しくなり、額をさすりながらどこか嬉しそうだが…
反省したのなら…
いいか…
だが、この時二人は同時に思っていた。
""久しぶりの…ライムのデコピン…""
「…馬鹿が。」
そう言った白龍の声が聞こえたのは、リカとララ、ラズリだけであった。
そんな二人の想いを知る由もない私のもとに、櫻井さんが歩みよってきだす。
「もしや、ライムちゃんのお父様ではありませんか?初めまして。何時もお世話になっています。私、櫻井功というもので、ライムちゃんのマネージャー業をしております。以後、お見知りおきを。」
「…此方こそ、何時もライムがお世話になってます。今日は従兄弟達を連れてきたのですが…まだまだライム離れ出来ていないようで…お見苦しいところをお見せしました。」
「クスクス。いえ、とんでもないです。ライムちゃんは身内にも好かれているんですね!今日は普段のライムちゃんというテーマで撮影させてもらいますので、よろしくお願いします。」
「分かりました。…ライム、みんなで見てるから、お昼は一緒に食べよう。」
「…うん。」
みんなで…一緒に…
なんか…
嬉しい…
そんな私の頭を白龍が撫で、ウル達を連れて保護者席に移動していった。
ラズリだけがそこに残ったので、離れそうにもないため、仕方なく一緒に自分の席に戻る。
戻ったはいいが、相変わらず視線を寄せらる中、肩に乗るラズリに気づいてようで物珍しそうに集まり出した。
「その鳥、もしかして梟?」
「白い梟なんて珍しいね〜。」
「ライムちゃんのペット?」
「可愛い〜❤」
「触らせてもらってもいい?」
………。
大丈夫?
【はい!】
「…いいよ。」
「「「「「「「「やったーーー!!!」」」」」」」」
「羽根が気持ちいい〜❤」
「大人しいね〜❤」
「本当…可愛い〜❤」
皆がラズリを触る中、春風さん達も来た。
「あれ?ラズリだ!」
「ほんまや〜。相変わらず、可愛いな〜❤」
「レレ達も動物になれればいいのに〜。」
「「はづきちゃん!!シー!」」
「あ…つい…。ごめんなさい。」
そんな中、保護者席の方からまた甲高い声が聞こえだした。
其処には、白龍を中心に女性の保護者達が集まっており、皆顔を赤くしている。
そこにウル達の姿はなかった。
…逃げたな…
「白龍さん…大変そうやな…。」
「…あんなにイケメンが来たんじゃしょうがないよね〜。」
「あの人ってライムちゃんのお父さんなんでしょ?」
「…そうだけど…。」
「「「「「いいな〜❤❤」」」」」
………。
「親子揃って美形…ライムちゃんとライムちゃんのお父さんに挟まれた生活がしてみたいな〜。」
「「「「「「同感❤❤」」」」」」
なにがいいのか…
私には分からないが…
確かに白龍達に囲まれている私は、幸せものだ。
漸く競技が始まり、玉入れからスタートした。
だが、始まった途端に地面から何か黒いものが浮かび上がってくるのが見えた。
あれは…
おかしい…
結界で禍々しい気は消えたはずなのに…
私の結界でも防げない程の力なのか…
それとも…何か特別な力なのか…
いずれにしても、あの気の正体がはっきりしなければ、完全に防げない…
しばらく様子を見るか…
黒い気は道具にとり憑き、玉入れの網を破り、その後も似たような現象が起きる。
どれも対した被害にはなっていないが、一旦競技が中止となり、速めの昼食の時間となった。
白龍達がいる保護者席に向かうと、偶然にも春風さん達の保護者達も近くにおり、皆で一緒に食べることになった。
以前お世話になった藤原監督の姿もそこにあった。
「ライムちゃんじゃないか!久しぶりだね〜。あれから、一気に有名人になっちゃって!あんまり会うこともなかったもんね〜。」
「…その節は…お世話になりました。」
「いやいや、いいんだよ!一気に忙しくなったみたいだから、心配してたんだけど…元気そうでよかったよ。それに、ライムちゃんのお父さんにも久々に会えたしね。」
…藤原さんも相変わらずのようだ…。
藤原さんとの会話が終わり、白龍に視線を移すと、我先にとおかずを食べさせてくるお母様方の相手をしていた。
そのあまりの変わりように、春風さんの父親が泣き出し、そんな父親をぽっぷちゃんが慰めているという…
そんな様子を春風さん達も遠目で眺めている。
「なんか…修羅場だよね…。」
「「確かに…。」」
その時だ。
近くから重い気を感じた。
先程の気とはまた違う…
その気を辿ると、ある家族がいた。
あれはクラスメイトの浜田さんという子の家族のようだが、とても消沈している様子…
春風さん達も浜田家族に気づいてようで、同じように見ていた。
全員揃う最初で最期の運動会なんだとか…
そういうことか…
道具が壊れても、怪我人が出なければこのままやり過ごすつもりだったが…
そうも言ってられないか…
少々、あの禍々しい気に想い当たる節があるため、私は春風さん達を連れて林の茂みに移動した。