おジャ魔女どれみ

□第3話:魔女界
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正式に日向プロダクションと契約を交わした私は、毎日プロダクションの人の送迎で撮影に行っていた。

そんなある日。

藤原さんが監督を務めたあのドラマが完成し、テレビで放映される事になった。

如何やらそれが大反響だったようで…

私は、業界で無名の新人として、多くのテレビ番組や取材やらを頻繁に対応するようになった。

他にも、ウルと撮った写真や動物園で撮った写真が掲載された雑誌などが販売され、何処の書店も増刷がかかる程の売れ筋だとか…。

それにあの録音した曲が正式に商品になった…?とかで、それの売れ筋も鰻登りだそうだ。

それを、日向さんやプロダクションのスタッフさん達が会う度に教えてくる…。

今日も今日とて、テレビ番組に呼ばれ、おんぷと共に出演することになっている。


「ライムちゃん!ライムちゃんとまたテレビに出れるのね❣宜しく!」

「うん…よろしく…。」


おんぷのこの張り切り様に、ついていけていない私…。

私の腕を掴んだまま、ブンブンと振る腕を止め、満面の笑みで手を握ったままこちらを憂うれと見るおんぷ…。

…この花の様な微笑みを久しぶりに見た私は、何処か安心して微笑み返した。

そのままおんぷと手をつないで、藤原さんと日向さん四人で番組部屋に足を進める。

先に日向さん、藤原さん、そして私とおんぷが共にゲストとして行くのだが…。

私達が入った途端に、当たりは静寂に包まれる。

辺りを見渡すと、会場にいるスタッフやMC、お客を見渡すも皆こちらを見たまま固まっているように見える。

…なんなのだ…一体…。


「大丈夫だよ。みんなライムちゃんを見れて嬉しいんだよ…チッ…。」


今の状況に気になっている私に、おんぷは親切に耳打ちで教えてくれたが…。

…なんで舌打ち…。


"私のライムちゃんなのにッ!"


おんぷの考えが知れないその直後だ。


「「「「「キャーーーー!!!❤」」」」」


先程の静寂とは、真逆にあちらこちらから悲鳴にも似た叫び声が飛び交いだした。

耳が壊れるかのような大盛況に、若干引き気味になってしまう。

…何なのだ…?


「早速の大盛況ですね〜。どうぞお座りください。」


MCの人に促されるまま、おんぷに椅子までエスコートされながら共に座る。

…ありがとう、おんぷ…。


「え〜。今日は今話題の完結ドラマ『memory』の主演の子達、瀬川おんぷちゃんとライム・リーシャちゃん、そして原作者の日向功さんと全責任者でもある監督の藤原明さんに来ていただきました!よろしくお願いします。…いや〜、それにしても凄い作品が出来ましたね〜。アカデミー賞間違いないと噂される程ですが、何よりおんぷちゃんとライムちゃんの演技力が素晴らしいですね。私も見させてもらったんですが、とても感動しました!memoryはCGを使われていないとの噂ですが、実際はどうなんでしょうか?」

「はい。CGは一切使っていません。全てそのままの撮影です。」


藤原さんが答える。


「では、途中のシーンに出てくるライムちゃん演じるカレンとおんぷちゃん演じる葵の動物達の関わりも全てそのままのものなんでしょうか?」

「そうなんですよ!カレンの撮影中に森にいた動物達が集まり出して、それがあまりにも絵になったものでそのまま使ったというわけです!」

「ふふふ。その興奮を見ると、藤原監督自身が過去最高の撮影と絶賛されているという噂は間違いないようですね!カレンと葵の関わりのシーンは、全て台本にはなかったものでライムちゃんのアドリブだという噂も本当でしょうか?」

「あれ?そんな事も流れてるんですね。…その通りなんですけどね。」

「クスクス。実際撮影中にアドリブが採用される確率とは、どのくらいなのでしょうか?」

「基本、台本に沿ったアドリブはその都度の監督の判断によって違いますが、台本よりそちらの方がいいと判断された場合は採用されます。…ですが、今回はアドリブが凄すぎて、台本より原作を上手く表現出来ている場合はそれに合わせて台本事態を変更させるという状態になってしまって…。」

「では日向さんから見て、子役二人のアドリブをどう捉えられましたか?」

「そうですね…。一言でいうと無限の可能性を感じました。ライムちゃんやおんぷちゃんはこの歳で表現するには難しい役を予想以上に演じてくれたのです。まるで本当に物語の中に入って本物の葵とカレンを見ているような錯覚まで起こした程です。そんな二人の才能に、こんな表現の仕方もあるのかと私の方が学ばされました。」

「成る程〜。私も見ていて二人が本当の親子の様に見えて、別れのシーンなんて涙が止まらなくなりました。ところで、最後の葵が成長してカレンが会いに来たシーンがありましたが、あれもCGではないのでしょうか?とてもそうには見えませんでしたが…。」

「あれも現場で撮ったものをそのまま使ってます。このドラマ事態、CGを使っては質が落ちると思ったんですよ。二人が演じる葵とカレンをそのまま皆様に見せたかったので。」

「そうなんですね〜!二人の演技力といい、アドリブ性といい将来日本を引っ張っていく役者の誕生に心躍りますね!では、次に出演を務めたお二人に質問してきたいと思います。おんぷちゃんはどんな気持ちで葵を演じたの?」

「…初めは葵の気持ちが分からなくて…何度も撮り直しをしてもらったりしました…。でも…ライムちゃんの演技に惹かれて、自然に私自身が葵になれていたんです。全部ライムちゃんのおかげなんです…。」

「おんぷちゃんはライムちゃんが大好きなのね〜。二人はお友達か何かかな?」

「はい!お友達です!ライムちゃんが大好きなんです!」


そう言うおんぷの顔には、満面の笑みを浮かべられている。

…おんぷ…

私は、そんなおんぷに微笑み返した。


「まぁ可愛い〜!❤二人はとっても仲良しなのね〜。ライムちゃんはこのドラマに出るまでは一般人だったとお伺いしたのですが本当ですか?」

「はい。たまたまテレビ局に来ていたライムちゃんを見てこの子しか居ないと思って、つい声をかけたんですよ。実際に撮影に入ってから凄い子を見つけたととても嬉しかったですよ。」

「ライムちゃんはこのドラマがきっかけで日向芸能プロダクションと契約されたんですよね?」

「そうです。私が台本を変更せざるを得ない程のアドリブをする子と聞いて興味を持ちまして。その場で実際に見て、是非うちに来てほしく直ぐにスカウトしちゃいましたよ。」

「ライムちゃん特集の雑誌も出されて、増刷がかかる程の人気ですね。ライムちゃんの動物達と写っているあの写真は合成ではという話もありますが?」

「あれは本当に動物達と戯れているライムちゃんそのものを写しています。」

「その写真があります。」


そして雑誌の写真の数枚を出される。


「これは…。ホワイトタイガーですね…。よくこんな写真が撮れましたね…。それに…ホワイトタイガーもとても嬉しそう…」

「ライムちゃんは動物達と直ぐに仲良くなれる不思議な子なんです。実際にその映像もありますよ。」


動物園で撮られたと思われる映像を流された。

写真だけではなかったのか。

皆がそれを見て、目を見開いて驚く。


「…こんな事が…。私感動しました!こんなにも動物達から愛される子がいたなんて…。それに動物達もやっぱりライムちゃんに触れられて嬉しそうに見えますね。この隣の写真の動物は狼の子だという専門家もいるのですが、実際はどうなんでしょう?」

「この子はライムちゃんの家族です。何でもライムちゃんの父親が出張先で助けた子らしいですよ。狼の子で間違いないと思います。ライムちゃん、連れてこれるかい?」

「…はい…。」


日向さんに促されるまま、撮影裏に待機してくれているウルを抱える。

…この為に連れて来いって言っていたのか…。

粗方ウルには、事情を話しはしていたが、テレビに出すとなると…。

だがウルは、


「俺は構わない。」


と言ってくれたのだ。


「ありがとう…ウル。」


何時も私のために…ありがとう…。

私は、ウルの額にキスを落とし、そのまま撮影場に戻る。

戻った瞬間に、またあちらこちらから甲高い叫び声が飛び交いだす。


「「「「「可愛い〜〜〜!!!❤」」」」」


私は、気にせずウルを抱えたまま先程の椅子に戻る。


「可愛いわね〜❤名前は何て言うの?」

「…ウル…です。」

「ウルちゃん〜❤ライムちゃんとのツーショットが絵になるわ〜❤ウルちゃんは大人しい?」

「…いい子ですよ…。」


こんな私のために何時も側にいてくれる子の一人…。

何時も…感謝している…。

私は、微笑みを浮かべ、ウルを撫でながらそう応える。

するとまた周りから甲高い声が…。

…うるさい…。


「ライムちゃんはあらゆる楽器も弾けるのよね?何でもあの有名な指揮者デイビッドからその実力は認めれているとか…。凄いわ〜。」


何処からそんな情報を…

…って、日向さんしかいないな…。


「即興曲が得意なのよね?CDも出して相当な売り上げを出しているとか。ね〜、よかったら聞かせてくれない?」


そう言ってスタッフがバイオリンとピアノ、オカリナを持ってきた。

何故…オカリナ…。


「memoryに因んでオカリナも用意したみたいよ。好きな楽器で弾いてもらっていいわよ〜。」


私は、弾いていいか日向さんに目線で確認をとる。

すると日向さんは、躊躇せずに許可をだしてきた。

…はぁぁ…

…仕方ないよね…。

私はウルをおんぷに預け、用意された楽器を全て持ち、ピアノの椅子に移動する。

そしてこの間録音された曲ではないのを即興で作り、バイオリンから演奏していく。

つぎに音調を変えてピアノを弾き、歌をのせる。

最後にオカリナをとり、吹きながら中心まで歩く。

昔、ある次元で見た伝統な舞と共にオカリナを吹く…。

オカリナの音色は大地を芽吹かせ、舞には神を降ろすとされている。

私は音色に合わせて、感じるままに舞った。

拭き終わった直後に、私は会場全体にお辞儀をする。

…だが当たりは静まり返ったまま反応がない…。

ドラマの撮影の後の様に、皆の視線があっておらず、ぼーっと此方を見続けたまま…。

そんな状況に何時も真っ先に動くのが日向さん。

日向さんが拍手をしだすと、皆がハッと我に返り、一気に拍手喝采が起きた。


「…今…私は凄いものを見てしまったわ…。これが…ライムちゃんのアドリブ…?」

「そうです。私達も撮影の度にこんな風に驚かされています。」

「…ご覧になりましたか、皆様…?まるで違う世界に飛んでしまったかのような感覚になってしまう程の音楽性と実力…。いいですかッ!これは即興なのです!何と才能溢れる子でしょうかッ!これだと色々なところからのオファーで会社も大変になりますね。」

「クスクス。そうですね。」


日向さんは、とても嬉しそうに答えた。

私は、おんぷに預けたウルを受け取る。

そんな感じで撮影が終わり、おんぷから一緒に帰ろうと誘われるが日向さんが会社に来て欲しいと言ってきた。

おんぷは何故か不機嫌になり、一緒についてくると言い出す始末…。

日向さんも了承し、日向さんの車で会社に向かった。

すると職員さん皆がとても忙しそうに動いており、鳴り響く電話の対応に追われている。


「これ…もしかして全部ライムちゃんへのオファーですか?」

「そうだよ。さっきの生テレビの影響だろうね。」


私のオファー…。

何がそんなによかったのだろうか…。

特別なことはしてないが…。


「兎に角、ライムちゃんにはこれから沢山の仕事がくるよ。勿論その分の給料は高くなる。大変になるけど、やっていけそうかい?」


…どっち道、働かなくてはいけない…。

なら…給料がいい方がいい。

そっちがリカ達を助けてあげられる…。


「…やります。」


おんぷは不安そうに此方を向いており、心配してくれている。


「大丈夫…。何とかなるよ…。」


おんぷの頭を撫でてそう告げる。

そして美保さんに魔法堂まで送ってもらい、家に入るとララが飛んできた。


「ライムー!見たわよ〜。凄かったわ〜❤感動したッ!」

「ありがとう…ララ。」

「ライム様ーーーー!!」


今度はラズリが飛んできた。

あれからリカ達にラズリを紹介した為、ラズリを仕事の間は預かってもらっているのだ。


「ライム様は凄すぎです!あんな風に曲を作れる何て…流石ラズリのライム様です!」

「ちょっと、ラズリ!ライムは皆のよ。独り占めは駄目よ。」

「馬鹿言ってないで、食事にしようじゃないか。」


リカが来て、私の頭を撫でる。


「いいか?呉々も無理はするんじゃないぞ。一人で抱え込むんじゃないよ。」

「うん…。ありがとう…リカ。」


私は微笑んで返した。
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