銀魂

□第6章:帰んな嬢ちゃん
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銀時は、大荷物を片手で持ちながら、ルカの手を繋いで帰っていた。


「いや〜、お前といると運が俺に回ってくるわ〜!まさか、本当にあの馬、勝っちまうとはよ。」

「おうまさん!」

「ルカが選んだ馬は間違えねぇな。な、「何子供にやらせとんじゃ、我はァァァァァ!!」ゴフッ!」


新八の華麗な蹴りが、銀時にクリティカルヒット!

吹っ飛ばされた銀時に一歩一歩近づく新八。


「神楽ちゃんに金を稼ぎに行ったと聞いて来てみれば。あんた、恥ずかしくないんですかァ!!子供を競馬なんかに連れて行って!!しかもルカちゃんに稼がせるなんて!!」

「待てって!俺はただ此奴の事を確かめるためにしただけだって!いや、マジで!」

「確かめるって何をですか?!運の良さをですか?!」

「違うって!・・・お前も見ただろ?政宗の時、動物と仲良くなれるルカを。」

「政宗って・・・あ〜、あの松茸狩りの時にあった熊ですね。確かにルカちゃんは動物とも仲良くなれるみたいですが・・・。それが?」

「だからよ〜。それを確かめるために行ったわけよ。そしたら案の定ルカが元気のいい馬を言い当てて、大勝ちしたって訳だ!」

「・・・それで物に変えたと?」

「おうよ!いや〜、まさか本当に勝つとはな〜。これからも行こうな、ルカ!」

「あい!」

「やっぱり、ルカちゃんに稼がせてるだけじゃないですかァァァァァ!!最低だな、あんた!!こんなに幼気な子にそんな事させて恥ずかしくないんですか?!」

「・・わーったよ。止めればいいんだろ?止めれば。ッチ。」

「あんたはなからルカちゃんに稼がせるつもりで行った気満々だよね?」

「・・・・。」

「オイィィィィィ!!・・・ってあれ?ルカちゃんは何処に・・・。」


銀時達の言い合いの最中、ルカはまた迷子になってしまった。


「「ルカーーー!!」」


必死に捜索しだす二人。

当の本人はというと、先程のところと離れたところにある浅瀬側にいた。

だが先客がおり、肌の黒い男の人が一人で其処に立ち尽くしている。

その男の人の元まで歩き、服を引っ張る。


「・・・ん?」


男は後ろを振り返るが其処には誰もいない。

足元を見て漸くルカがいるということに気づく。


「おじいちゃん、これあげる!」


ルカは先程買ってもらったお菓子をその人に渡しだした。

全く自分を見て怯えもしないルカに、男は目を見開き、対応に困っている様子。


「・・・・くれるのか?」

「あい!」


笑顔でいうルカにつられるようにして男は微笑を浮かべ、受け取り、ルカの頭を撫でる。


「ありがとな、嬢ちゃん。」


"・・・不思議な餓鬼だ。この俺が素直に受けとるなんざ・・・。なんでだろうな・・・此奴の笑顔があいつとかぶって見えちまう・・・。"


男は見つめている駄菓子を食べだした。


「おいちい?」

「・・・・あぁ、うめぇ・・・・。」

「わーい!あのね〜、パパにかってもらった!」

「そうかい。よかったじゃねぇか。」

「あい!」


そうしてルカと男は暫く一緒におり、今ではルカが男の膝の上に乗っている状態で川を眺めていた。


「俺はなぁ、昔此処で誓ったんだ・・・。あいつの愛した女とこの街を守るってよ・・・。そのためにはなりふりなんざぁ、構ってられなかった・・。悪どいことなんてざらにやってきた俺だぁ・・・。ろくな死に方出来ねぇさ。だがあいつを守って死ねるなら、本望だな。」

「う?」

「クククッ。こんな餓鬼に愚痴るなんざぁ、俺も焼きが回っちまったな・・・。だが、お前になら話してもいいような気がしてならねぇのはなんでだろうな?」


そう言うルカを撫でる男の表情は、何処にでもいるおじいちゃんそのもの。

そんな男の頭をルカが撫でる。


「よしよし。いたくない、いたくない。」


男はルカの行動に目を見開き、黙ってそれを受ける。


「いたいのない?」

「・・・あぁ。痛くない。ありがとな。」

「あい!」

「・・・ッフ。嬢ちゃんに菓子を貰った礼をしなくちゃならねぇな。」

「う?」


そう言って男は、ルカを抱えて立ち上がり、ある場所へと向かい出す。

ついた先は、とても大きな屋敷で玄関に溝鼠組という看板が、デカデカと掲げられていた。

一歩門をくぐれば、広い庭を一列に家の玄関までゴツい男達が出迎えていた。


「「「「「「「「お帰りなさいやせ、おじき!」」」」」」」

「あぁ。嬢ちゃん、何か困ったことがあれば此処に来な。直ぐに此奴らが俺のところまで連れて来る。次郎長を訪ねたといいな。」

「う?じろじい!」

「クククッ。好きなように呼べ。」

「あい!」

「オイ。」

「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

「此奴を親の元まで送ってやれやぁ。」

「ルカ、ひとりでかえれる!ばいばい!」


ルカは男の腕からいつのまにか降りており、走って行ってしまった。


「あ・・おい・・・。」


男は何が起こったか分からないでおり、走って行くルカの後ろ姿を見守ることしか出来なかった。


「ッフ。また来いよ、ルカ。」


その後、ルカは銀時の居場所を知っているかのように探し疲れていた銀時と新八の元に帰っていた。


「「ルカ(ちゃん)!!」」


ルカを漸く見つけた銀時達は飛びついていき、その目には若干涙が浮かべてあったとかなんとか。

翌日、万事屋に依頼の話がきたのだが、その報酬が半端じゃない額であり、銀時達はウハウハな気分でその依頼主の元にベンツで向かっている最中である。

だが、その内容は聞かされておらず、高級ホテルに泊まれるとでも勘違いしたのであろう。

そのため、今回ルカも連れて来たのだが・・・。

ついたところは、ルカが昨日見た屋敷となんら変わりなく、体に刺青を掘った人や人相が怖い人達がズラッとお出迎えしていた。

銀時達が唖然とする中、ルカだけはご満悦の様子。


「じろじい!」

「何でこの子はこんなにご機嫌なの?銀さん、もう帰りたいよ。じろじいって誰?」

「銀さん、そんなに一変に聞いてもルカちゃんは分かりませんよ。珍しい光景だから、喜んですよきっと。」

「可愛いネ!ルカ、おいで〜。」

「あい!」


銀時から神楽に移るルカ。

案内されるまま屋敷の中に入るが、何処からどう見ても極道の屋敷であり、皆が余所者の銀時達を睨んでいる。

・・・と思ったのだが。


「「「「「「「・・・ッポ。」」」」」」」

「照れてるゥゥゥゥ!!銀さん!あれ照れてますよねェ!分かりにくいけど、ルカちゃんを見て、完全に照れてますよねェェェ!!」

「いい歳こいた男が気持ち悪いな、オイ。俺のルカを見るなんざ、金払ってからにしろよい。」

「あんたまたルカちゃんで儲けようとしてるでしょォォ!!大体、銀さんのものでも何でもないですからね!」

「そうネ!いい歳こいたおっさんが発情してんじゃねぇヨ。ルカは私の子ネ。見たいなら見物量払うヨロシ。」

「お前もかいィィィィィ!!」


そして今回の依頼主である此処の頭が現れた。


「あんたら、万事屋か?よく来てくれた。儂が魔死呂組組長、魔死呂威下愚蔵だ。」

「やべーよ・・・。真っ白い粉嗅ぐき満々だよ・・。」


銀時達は違法の真っ白い粉を運ばせられると勘違いしている。

だが、どうやら予想と反し、この組長の依頼は跡取り息子を蔵から出してほしいというものであった。

5年前から閉じこもり、出て来ないんだとか。

跡を次ぐ事を昔から嫌っており、呉服問屋に働きに行っていきなり帰ってきて篭りだしたという。


「オイオイ、それもう中でおっ死んでんじゃないの?」

「銀さん止めて!」

「この5年会ったことも話たこともないが、食事や欲しいものを書いた紙が毎日扉の隙間から出てくる。」


その時にも紙が出てきた。


「あ、ほんとネ。出てきたアル。」

「オイ!アニメーズとジャンプを買ってこい!」

「「「「「へいッ!」」」」」

「ヤクザの息子が引き篭もり・・・。そんな事が世間に知れれば面子が命のヤクザにはやっていけね・・・。そんな体裁ばかり気にして、儂は息子と正面から向き合わず、気付けば5年の月日がたっていた・・・。鬱蔵を此処まで追い込んだのは儂の責任だ・・・。息子の人生を取り戻すためなら、儂は何だってやるつもりでいる。だが情ない話で、何をやっていいのか分からんのだ・・・。人の親とはこんな時何をやればいいのだ・・・。」


組長は、そう言って辛そうに下を向く。

だがそんな組長の元にルカがトテトテと歩きだした。

銀時達もルカが組長に近づいてい事を見ていたが、止めはしない。

ルカがしようとしている事を何と無く察したからだ。

ルカは組長の足元にたどり着き、そのまま抱きついた。


「・・・嬢ちゃん、どうした?」


組長はそのままルカを抱える。
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