銀魂
□第4章:いじめちゃ、メ!
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一段と天気がいい今日、仕事の依頼が全く来ず、通帳も底に近い。
家賃すらろくに払えない今の状況に銀時達は、家賃請求にきているキャサリンから身を隠すためにデスクの下に三人とも音を押し殺して入り込んでいる。
ピンポン ピンポン ピンポン ドンドン
玄関を叩く音や呼び鈴が連呼される。
「オトセさんのカワリニ、ヤチンのカイシュウにきました〜。アケテください。イルのはワカッテまーす。アホのサカタさ〜ん。」
そんなキャサリンにばれないようにコソコソしながら話す三人。
「あ〜あ・・、だから速く出ようって言ったのに・・。」
「しー。静かに。気配を殺せ。自然と一体になるんだ。お前は宇宙の一部であり、宇宙はお前の一部だ・・。」
「宇宙は私の一部ゥ?!スッゴイある!ちっさな悩みなんて吹っ飛んじゃうアルネ!」
「うるせェよォ!静かにしろやァ!」
「あんたが一番うるさいよォォ!!」
「いいや!お前のツッコミが一番うるさーいィィ!!」
言い合いをしだした三人の前に起きてきたルカ。
「・・・パパ・・・。どこ?」
「ルカちゃん、起きちゃいましたよ。」
「ルカ、こっちだ。」
ルカは銀時の声のする方に歩き、デスクの下の隠れている銀時の前に首を傾けてしゃがむ。
「かくれんぼ?」
「いや、そうじゃなくてだな・・・。あれだよ、あれ・・・・。希望の星を探してるんだよ。」
「希望の星って何ィ!?あんた家賃取り立てられるのを隠したいからってその言い訳はあんまりでしょうがァ!ルカちゃん、信じちゃいますよ!ね?神楽ちゃん。」
カシャッ!
「首コテンってしたルカも可愛いネ!また私のコレクションが増えたアル!」
そう言って何処からともなく出したカメラでルカを取り出した。
「気持ちは分かるけど今は撮ったらダメでしょうがァ!!」
「そうだぞ、神楽。ルカの写真、銀さんにもください!」
「分かったネ!」
「オイィィィィィ!!あんたら、状況分かってるゥゥゥゥ!?」
言い合いをしていている間に先程までいたキャサリンがいなくなっていた事に銀時達は気づいた。
その瞬間、後ろから。
「なんか、シュウガクリョコウみたいで、ドキドキするね。」
とキャサリンの声が聞こえたのだ。
これには皆が驚く。
「「「ウワアアアアアア!!!」」」
隠れていたデスクを放り投げ、ルカを銀時が抱えて窓から外に逃げる。
「マチナサイ!」
キャサリンの手から逃げ通した三人は、そこから逃げようとしたがお登勢から待ち伏せされてしまった。
「あんた、そんなとこルカに見せて恥ずかしくないのかい?それにキャサリンは鍵開けが十八番なんだ。例え金庫に立て籠もろうが逃げられないよ。」
「お登勢さん!」
「カギっ子キャサリンってよんでね。」
「こーら、天然パーマァァ!!今日こそは溜まった家賃、払ってもらうからねぇぇぇ!!」
「ぐッ・・。」
お登勢から逃げようと後ろに下がる銀時。
そんな銀時を見て、ルカはまた首を傾げた。
「パパ?どうしたの?」
「・・・なんでもねぇよ。気にすんな。」
ルカの頭を撫でる銀時。
「全く・・・・。恥ずかしいよ、ルカの前でこんな醜態晒すなんざ。父親失格だね。」
「うるせぇ!世の中の厳しさを教えるのも親父の務めなんだよ。簡単に金は入ってこないっていう教訓だよ、これ。」
「なに正当化しようとしてるんだい!!あんた万年ニートだろうがァ!!もっとちゃんと働いてからいいなぁ!!」
ガブッ!
あ・・・・、食われた・・・。
定治に。
「今だ!」
その隙に銀時達はお登勢の隣を抜けて逃げた。
「銀さん!ほんとに家賃払えるぐらいに松茸とれるんですよね?!」
「そうネ!帰ってこられないアル!」
「大丈夫だって!俺の情報を信じろよ!ルカ、高級食材食べ放題だぞ!」
「あい!」
そうして四人はある山の中に松茸狩りに出かけた。
だが、探せども探せども松茸は出てこない。
時間だけが過ぎていく中、ルカは眠気に襲われてしまった。
「・・・パパ・・・。」
目を擦り擦りしながら銀時の服を引っ張るルカを見て、それを悟った銀時はルカを抱えてポンポンと軽く背中を叩いてあやす。
「ここで眠りな。後は俺らが探しとくからよ。」
「・・・あい・・・・。」
銀時に横抱きにしてもらい、胸に顔を当ててスヤスヤと眠りだした。
「ほんと、何度みてもルカちゃんの寝顔は可愛いですね。それに、銀さんもお父さんがいたについてきましたね。」
「・・・そうだな。可愛いな。」
そう言いながらルカを見つめる銀時の表情は本物の親の顔であった。
ルカの前でだけ見せるこの表情に慣れている新八でさえ、かっこいいと思ってしまう瞬間である。
三人は松茸狩りを再開し、山の奥に移動する。
途中、変な男に山を降りろと忠告されるも、諦める訳にはいかない三人は更に奥へと進む。
その時、頭にキノコを生やした何倍も大きい熊が襲いかかってきた。
死んだふりをしてその場をしのごうとしたが、当たり前だが効果ない。
危機的状況に先ほど忠告してきた男が助けに入った。
男が撃った銃声でルカは目を覚ました。
「あの熊は政宗って言ってな。謂わばこの山の主よ。」
「あんた一体・・・。」
熊が何処かへ行ったことを確認し、男は銀時の問いに応えた。
「俺の名は鞠の助。奴を追うものだ。」
漸く眠気がとれ、意識がはっきりしてきたルカは銀時に声をかけた。
「パパ?」
「おぉ、ルカ起きたか。今ちょっと立て込んでるから、大人しくしてるんだぞ。」
頭を撫でて落ち着かせようとする銀時だが、ルカは何処か違う方を見ている。
ルカは去っていく熊を見ていたのだが、それに銀時達は気づいていない。
鞠の助を含めた万屋一行は場所を変え、食事の準備にとかかりだした。
「キノコ狩り?この山が今どんだけ危険か知らないのか?」
「そんなこと言って、松茸独り占めするつもりアルな!」
「神楽ちゃん!助けてもらった人になんて暴言ン!!鞠の助さん、どうぞこっちに来て食べてください。」
鞠の助は素直にこちらにくる。
「あの山の主とかいう熊。どうかしちまったのか?」
「お前らも見たろ?政宗の頭に生えた奇妙なキノコを。何処からきたのか知らんが、あのキノコに寄生された奴はみなキノコを育てるための生きた肥料になる。自我を失い、栄養を送る為だけのただの化け物になっちまう。下の里じゃ、畑は荒らされるわ、人は襲われるわで壊滅的な被害を受けてるそうだ。そこで俺の出番って訳だ。俺はこいつの名手でな。大熊如きに引けはとらねぇ。」
鞠の助はそう言って持っている愛用の銃を見せる。
「報酬目当てか?幾ら貰えんだ?そいつを倒すと。」
「そんなんじゃねぇさ・・・。ま、奴とは少し・・色々あってな。」
「あんな化けもんがいるんじゃ、松茸なんて言ってる場合じゃねぇな。仕方ねぇ、俺たちは山を降りるとするか。」
「って銀さん!!頭からキノコ生えてますよォォォォ!!」
「え?あれェェェ?!」
「ブフッ!頭を使って生活してないからアルヨ!」
「ってお前も生えてるよォォォォ!!って僕もォォォォ!!」
「言わんこっちゃねぇ。寄生されたな。素人が山を舐めるからそんな事になるんだ「「「お前もな!!」」」あれェェェ?!なんでぇぇ?!お前ら、この鍋に何を入れたぁぁ?!」
「失礼アル!私の鍋にケチつけるアルか!?熊の頭に生えたキノコなんてそうそう食えないアル!」
「お前ェ!!何してくれてんだァァ!!死体に生えたキノコを入れる奴があるかァァ!!」
「どうしよォォォォウウ!!僕達、どうなるんだァァァァ?!」
「おい!ルカ、お前は食べてないよな?な?」
「う?」
慌ててルカを心配する銀時だが、もうすでに遅し。
「銀さん・・・。ルカちゃんも食べてましたよ・・・。」
「神楽ァァァァァ!!」
「ウワァァァァァンン!!ルカ、ごめんヨ!!」
ルカの身を案じ、抱きしめる神楽だがルカの頭にはキノコが生えていない事に気づく。
「・・・キノコないヨ。やったネ!ルカには生えないネ!」
「そう思いたいが、後から出る可能性もある。用心しといたがいい。」
「そんな・・・。」
「だが、慌てるな。初期段階なら村に戻れば元に戻る。頭のキノコには決して触れるな「えい!」人の話を聞けェ!!」
神楽は自分に生えたキノコを抜き取った事によって、キノコが増殖した。
だが神楽は焦るどころか何処か満足気である。
「何嬉しそうな顔してんだ?別に一杯あっても偉くねぇんだよ?」
現場は更にパニックになる。
そんな中、ルカだけはまだ違う方向を見ていた。
「どうした、ルカ?さっきから、何処見てんだ?」
その視線に気づいた銀時はルカに問い、ルカの視線の先を見るとそこに先程の熊が現れたのだ。
「ウソォォォォ!!最悪だ!!なんでよりによってこんな時にィィィ!!」
新八が焦る中、ルカは一点に自我を失った熊を見ながら指をさす。
「・・・くまさん・・えんえんしてる・・・。」
「・・・え?」
どういう意味かと聞こうとした銀時だが、先に熊が襲いかかってきたためそれも叶わず、熊から逃げるしか出来ない。
だが、鞠の助だけは逃げずに正面から立ち向かっていた。
「ここは俺一人でいい。お前らは里に降りろ。男の喧嘩は神聖なものだ。邪魔はいらねぇ。な?政宗。」
「グルルルゥゥゥゥ!!」
「でも!銀さん、「ギャァァァァァ!!なんか増えてるゥゥゥゥ!!」「無限アップネ、これ!死んでもまた生き返れる気がスルネ!」っていうか、ほんとに死んでしまえェェ!!銀さんはルカちゃんを抱えてるんですから、必死に逃げてくださいよ!!」
「分かってるよ。・・・あれ、ルカ?」
「どうしたんですかってルカちゃん何処ですか?」
「・・・分かんね・・・・。」
「分かんねってあんたねェェェ!!」
銀時の腕の中からルカは消えていたのだ。
何処だ何処だと探すと、鞠の助と熊の間にルカがいる事に気づいた。
「ルカーーーーー!!」
「嬢ちゃん、あぶねぇぞ!」
銀時と鞠の助は、ルカを助けるために慌ててその場から走り寄るが、熊の攻撃の方が速く、あと少しでルカに襲いかかろうとしている。
銀時達は、いちかバチかで攻撃を加えようとしている熊に攻撃しようとした。