銀魂
□第2章:俺の子だが、何か問題でも?
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銀時とルカが会って数日が経ち、今日も同じ布団で眠っていた。
・・・筈なのだが、銀時の布団の中にルカの姿は見当たらない。
その事に気づいていない銀時と神楽は夢の中である。
無理もない。
まだ夜中である。
月が綺麗に輝く晩だというのに、外はパトカーのサイレンの音や役人達の声で騒がしい。
どうやら誰かを追っている様子。
「チッ!何でこんな大事になるかね〜。胸糞悪い役人一人殴っただけじゃないか。そそくさとこの星、出ればよかったかな。」
警察や役人達から逃げているのはこの男のようだ。
男は胸に傷を追っているようで、そこを抑えてはいるが大量の血が流れ続けている。
だが何とか動けるようで、行き交う警察達に見つからないようにして逃げてはいるが流れる血痕から追跡されるのは時間の問題。
痛みに耐えながら仲間の元に急ぐ男だが、血を流しすぎて動くのも億劫になってきている。
男はその場に崩れおち、意識を飛ばしかけた。
目を閉じ、死を待つだけと構えた時、何か暖かい物に包まれたのに気付く。
"あったかい・・・。俺もとうとう終わりか・・・。"
そう思っていたのだが、終わりどころか失いかけていた意識が徐々に戻っていくではないか。
男は閉じていた目を開けると、男を見下ろすように立っている小さな女の子が見えた。
月明かりに照らされる長い金髪と黄金の目は、まるで女神を連想させる。
「・・・嬢ちゃん・・・どうして・・・ここにいるんだい?」
「・・・おなか、いたい?」
「え・・・。」
ルカは男の血が流れるお腹にそっと手を当てる。
「いたいの?」
「・・・痛くねぇよ、こんなもん・・・。って言いたいところだが・・・今回はやばいね・・。」
男はもう動く気力すらない。
限界のはずだが、徐々に意識だけは戻っていくのに気づく。
"さっき感じた暖かいものはなんだったんだ・・・?まさか・・・。"
男に手を当てたままのルカは、血が流れる部分を触る。
「いたいのいたいの、飛んでけ〜!」
「・・ハッハ・・・・、ありがとうよ、嬢ちゃん・・・。もういいから、帰りな・・・。嬢ちゃんが汚れるぞ・・・。」
「いたいのいたいの、飛んでけ!」
ただの気休めだと分かっていても、ルカの気持ちが嬉しくて男は黙ってそれを受ける。
だが、不思議と次第に痛みがなくなっていくのに気づいた。
起きあがれるまで回復し、腹部を見てみるとあれ程出ていた血が止まっていたのだ。
それどころか致命傷だった筈の傷すら其処にはなかった。
どの星の医者も治せなかった傷が跡形もない。
男は驚愕し、先程感じたものがこの子からだったのだと確信した。
「・・・お前さんが治してくれたのかい?」
「・・・もういたくない?」
「・・・あぁ。痛くない。ありがとうな、嬢ちゃん!」
完全に回復した男は質問に答えてくれないルカの頭を寝でだした。
大体聞かずとも分かっていることではないか。
何かお礼をしたい男だが、ここにいては追っ手が来てしまうため移動する事にした。
「嬢ちゃん、俺とデートしないかい?」
「う?いく〜!」
デートの意味を理解していなそうなルカだが、男は御構い無しに抱えて連れていった。
そのまま少し離れた場所に移動し、ついた場所はターミナルの屋根の上であった。
「ここなら大丈夫だろうよ。嬢ちゃん、大丈夫かい?」
「すごいね!」
「そうかい?俺は嬢ちゃんの方が凄いと思うがな。嬢ちゃん、名前は?」
「ルカ!」
「そうかい。見かけと同じで可愛い名前だな。俺は洸夜ってんだ。よろしくな。」
「こうにぃ!」
洸夜はそう可愛く呼ぶルカを撫でる。
「ルカは、何であそこにいたんだい?親はどうした?」
「う?」
「・・・分かんねぇか?ならいいや。俺はな、この星に来る前にある組織と大喧嘩してよ。ま、俺が勝ったが大怪我を負っちまって。この星に休憩がてら来たんだが、通りがかった街で娘が役人に襲われかけててよ。デコピンしただけで其奴のしちまって。で、追われてたって訳だ。」
「う?」
「って分かんねぇよな。気にしないでくれ。さて、恩人の名前も知れたし、送っていくぞ。家はどこだ?」
「・・・あっち。」
そう言ってルカは万事屋の方角に指をさした。
「向こうか。じゃ、送っていくから掴まってろよ。」
洸夜は再度ルカを抱えて屋根屋根を伝い、案内された場所まで移動する。
そうして万事屋の屋根に辿りついた洸夜。
「ここでいいのか?」
「あい!」
「じゃ、降りるぞ。」
「いや。ここ・・いい。」
中に入れるように洸夜は玄関口に降りようとしたが、それをルカが服を引張て止め出した。
「・・ここって、本当にここでいいのか?」
「あい!」
何か事情があるのかと察した洸夜は、言われた通りに屋根の上にルカを下ろす。
「じゃ、下すぞ。・・・ルカ、お前は俺の命の恩人だ。何かあれば何時でも助けに来る。用があるときはこれに願え。俺に会いたいって。」
そう言って洸夜は腕輪をだし、そのままルカの腕につけた。
「いいな?待ってるぞ。」
「あい!」
そうして二人は別れた。
別れた後、洸夜はターミナルに戻り、ある戦艦の前まで来ていた。
其処には出迎えらしき人もいる。
「何処に行かれてたんですか?」
「いや、ちょっとな。」
「・・・皆が心配しております。気をつけてください。」
「分かった、分かった。気をつけるよ。」
「・・・珍しいですね。素直に聞くなんて。何かいいことでも?」
「いや・・・。少し、面白い子に会っただけだ。」
「面白い子ですか?この辺境の星にそんな人間が?」
「・・・いや、あれは恐らく・・・・。」
洸夜はルカに渡した腕輪と同じものを見つめながら、何かを考えている様子。
「・・・恐らく・・・何ですか?」
「・・いや・・・。行こうか、我らの船艦へ。」
「はい。」
そうして洸夜達が乗った船艦はここにあるどの船艦よりも大きく、何隻もあり、帰ってきた洸夜を皆が出迎えてだした。
「おかえりなさい、我らが全宇宙保安隊艦長洸夜様。」
「あぁ。全艦に告ぐ!出発だ!!」
「「「「「「「「「オォォォォォォォォォ!!」」」」」」」」
ターミナルを出た数隻の船艦。
宇宙に出ると迎えに来ていた何万という本部が其処にはいた。
本部と合流した戦艦は誰にも気づかれることなくその場を離れる。
船長室に戻った洸夜は、先程の腕輪を大事そうに撫でていた。
「・・・また会いましょうぞ。ルカ様・・・。」