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□第三章:穆公と神子
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養子にだした子供達はすくすくと成長し、将軍や大臣になるものなど国の重鎮になる子達が続出した。
そんな子等の成長をラピスは影ながら見守っている。
黒龍は、腕の中でそんな親バカぶりに毎度呆れている事はこの際言わないでおこう。
子供達の中には私塾を開き、自ら先生となって子供達に教鞭をとる者も現れた。
その一人が孔明(コウメイ)と言い、此処秦国で私塾を開いている。
孔明は、成長段階で記憶が戻った一人で会いたいと望まれれば会いに来ているのだ。
今も孔明に会いに私塾に来たのだが、ついた途端に村の子供等が勢いよく出てきた。
中にいる先生に挨拶をして、それぞれ帰っている。
子供達は皆元気が良く、孔明もそんな子供達が可愛くて仕方ない様子。
だがそんな中に一人だけ違う雰囲気の者がいた。
皆と同じ背格好だが、どことなく気品が感じられる。
その者は竹簡を読みながら帰っており、目で追えない程離れた場所まで見届けた後、ラピスは私塾の中に入った。
それに気づいた孔明は私塾の先生としてではなく、幼子の時と変わらない表情を浮かべ、とても嬉しそうにラピスを呼ぶ。
「母さん!」
「元気じゃったか、孔明。」
走り寄ってくる孔明を抱き締め、孔明も久しぶりに会えた母親に甘えている。
「実はですね、現秦王とちょっとした知り会いでして、私塾を開く際に協力して頂けたんですよ。…母さんは子供達を見られましたか?」
「あぁ、みな活き活きとしておった。…しかし一人だけ雰囲気の違う者がいたのぉ…。」
「…流石、母さん…その子は恐らく今私が預かっている子でしょう…。名を【穆公】と言います。
その子は現秦王から預けられた子なんんですが、他の人や子供達とも関わりを持とうとせず、塾でも浮いた存在になっているんですよ…良い子なのですが…。」
「…そうか。」
暫く孔明と話し、また来ると告げてある場所にへ向かう。
ついた場所には、民家と少し離れた所の大木があり、寄りかかるようにして座る穆公がいた。
穆公は静かに竹簡を読んでいるが、そんな穆公にラピスはそっと近寄る。
「何をそんな真剣に眺めておる?」
「わッ!!」
突然現れた人に驚いた穆公は、反射的に後ろに飛び退いてしまった。
実はそれを狙ってしたラピスは、成功した事に笑いが止まらない。
穆公も揶揄われた事に気づき、腹を立ててその場から去ろうと立ち上がるが、それを袖を引っ張り制した。
「待て待て。ちと、ふざけすぎた。お主が余りにも真剣に読んでおるから、邪魔をしてみたくてのぉ。」
穆公はあまにも呆気らかんに言うラピスに、怒りを通り越して呆れてしまう。
あまりにも子供じみた行為に溜息が漏れる。
「貴方は子供ですかッ!そんな理由で話かけないで下さいッ!!勉強の邪魔です!」
「クスクス。そう怒るな。悪かったのぉ、邪魔をして。…で、お主は何を読んでおったのじゃ?」
穆公はまた同じ場所に座り直した。
「兵法ですよ。私は将来皆を導かなければいけない…。父上の期待に応える為にも…。」
そういう穆公の姿は、何かを背負っているのは見て明らか。
こんな若い子が今から色んなものを背負う現状が哀れに思い、ラピスはあることを閃いた。
思ったら即行動とラピスは穆公の後ろに回り込み、急に肩を揉みだす。
「…何をしているのですか。」
「いや何、お主の肩が凝ってそうだったから解してやろうと思ってな。」
「…意味が分かりません。」
「クスクス。知りたいか?」
「…別にいいです。」
「そう言わず、ついてくるのじゃ。」
穆公の腕を掴み、なかば強制的にある場所に連行した。
「何なんですか、あなたは?!」
「意味が知りたいのじゃろう?なら、ついてくれば分かる。」