銀魂
□第7章:君の事、気にいっちゃった☆
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チリンチリン チリンチリン
〜♬〜♬〜♩〜♩〜♩〜♬〜
鈴音と共にとても綺麗な優しい声が聞こえだす。
それを聞いていたのは、路地裏に座り込むようにして片腕をなくした阿伏兎であった。
この阿伏兎、神楽と激闘を広げ、神楽と新八を助けるために遊郭からここまで落ちてきた。
漸く起き上がれはしたが、壁に寄り掛かるのがやっと。
だんだんと意識も遠のいていく中、それが聞こえ出したのだ。
徐々に音は近くなってきて、目の前に誰かの存在が見えたと同時に歌が止む。
「・・・だれか・・・いるのか・・・。」
阿伏兎は視界も定まっていない様子で、目の前の存在が見えていない。
現れたその人は阿伏兎の無くなった腕を触ってきだす。
「いたい?」
そう、その人とはルカであった。
「ここ、いたい?」
「・・・もう・・痛みも感じねぇよ・・・。」
「いたいのいたいの、とんでけ!」
「ッフハハ。・・・だから痛くねぇんだって・・・。」
だが不思議な事に話してるうちに阿伏兎は、徐々に意識が戻っていることに気づき、腕に何か温かいものを感じた。
その直後、漸くルカがはっきりと見えだす。
「・・・お嬢ちゃん。偉い別嬪だなぁ。お嬢ちゃんもここの住人か?」
そう言って阿伏兎はルカの頭に手を乗せる。
だが見て初めて気づいた。
無意識に置いた手がなくなったはずの左腕であることに。
もう唖然とするしかない。
「・・・俺の腕がある・・・。一体これは・・・。」
そんな阿伏兎にルカは更に近づき、左耳にそっと触れた。
「ここ、いたい?」
「え。」
思えば其処は先程神楽によって食い千切られた方の耳であった。
「いたいいたいの、とんでけ!」
ルカが真近で笑顔を浮かべ、それを呆気らかんと見ていた阿伏兎だが、耳に先程のように温かい感触を感じ、もしやと思い触ってみると案の定耳が元に戻っているではないか。
この二度も起きた不思議な現象に当てはまる事は一つ。
ルカが触れて呪文のように唱えたということである。
「・・・まさか・・・お嬢ちゃんが治してくれたのか?」
ルカは阿伏兎の質問には答えず、ただ満面の笑みを浮かべるだけである。
阿伏兎はこれを肯定と受け取った。
「・・これはたまげたねぇ・・・。こんな摩訶不思議な力を持った奴が、辺境の星にいるとはな。」
「う?おじちゃん、パパどこ?」
「パパ?お前さん、親がいるのか?吉原に売られた奴らは親はいないと聞くが・・・。」
ルカは阿伏兎の服を引っ張りながら、パパはどこと聞く。
「お前さんのパパなんて知らねぇよ。」
「パパ・・・。」
ルカのあまりにも悲しそうな表情に、自分が虐めてるみたいな罪悪感に蝕まれ、阿伏兎は根気負けした。
「・・・しょうがねぇな。一緒に探してやるよ。」
「あい!」
一機に笑顔になったルカを見て阿伏兎は溜息を吐くも、自ら肩車をし、見つけやすいように手助けした。
なんだかんだ言って、面倒見のいい奴なのだ。
暫く歩くもそれらしき人は見つからない。
「お前さんのパパとやらは、どこにいるんだ。このスットコドッコイ。」
「う?」
「・・・はぁぁ。その辺の奴に聞くか。吉原での子供は珍しいしな。」
阿伏兎はルカを肩車したまま片っ端から遊女に声をかけていく。
「ちょいとすまねぇが、お前さんこの子を知らねぇか?」
「ま〜!可愛い子だね〜!❤あんた、親を探してるのかい?」
「あぁ。吉原の餓鬼なら有名だと思ったんだが、ちっとも見つかりはしねぇ。」
「今の吉原にそんな別嬪の神室がいるなんて聞いたことないね・・・。上の子じゃないのかい?」
「スットコドッコイ。そんなはずねぇだろ?こんな餓鬼がどうやって上から・・・。」
「ん?どうしたんだい?」
言いかけた阿伏兎だが、先程の力を見たばかりでこの子ならあり得ると思ったのだ。
「・・・なんでもねぇ。助かった。」
そう言って阿伏兎はルカと手を繋ぎ、その場を離れた。
「お嬢ちゃん、名前はなんて言うんだ?」
「ルカ!」
「そうかそうか。にしてもルカは本当に可愛いなぁ。親が余程の器量持ちなんだろうよ。羨ましいね〜。」
「あい!」
「・・いや、意味わかって返事してる?」
「う?」
「・・・ま、いいや。パパはどこだろうな?」
話していくうちに阿伏兎はすっかりルカと息があい、手を繋いで歩いてる姿は本当の親子のよう。
ルカに団子を買ってあげたり、肩車をしたりしていると、鳳仙がいる遊郭の中から更にどんぱちが聞こえだした。
するとその方をじっとルカが見つめており、それに阿伏兎も気づいた。
「どうしたよ、ルカ。」
「・・・パパ、いる。」
「え・・。」
「パパ、あそこにいる!」
「・・・あそこってあのドンパチやってる最中の遊郭にか?」
「あい!」
「・・・まじかよ・・・。またあそこに行けってか?」
行きたくなさそうな阿伏兎の心情を察したのか、ルカは阿伏兎からおりる。
「おじちゃん!ありがとう!」
お礼を告げたルカは、遊郭に向かって走っていく。
「・・あの餓鬼、一人で行ってどうする気だ?ったく、仕方ないねぇ。」
阿伏兎は去っていったルカを追いかけたのだった。