銀魂
□第4章:いじめちゃ、メ!
2ページ/2ページ
だが、その瞬間。
「メ!!」
ルカの声が鳴り響いた。
初めて怒ったところを見せたルカ。
その声に反応したかのようにして、銀時と鞠の助は指一本ですら体が動かなくなってしまった。
それは熊も同じであり、攻撃態勢から固まっている。
何が起こったか分からないでいる銀時達は、ただ黙って見守ることしか出来ない。
「・・・クマさんいじめちゃメ!」
「ば!馬鹿かお前は!そんなこと言ってる場合じゃ「メなの!クマさん、えんえんしてる・・・。」・・・え・・・。」
その意味に驚く鞠の助。
「・・・そういえば、さっきもそんな事言ってたな・・・。えんえんしてるってあの熊の事だったのか・・・。ルカ、お前には聞こえるのか?」
「クマさん・・・ずっとえんえんしてた・・・。」
その言葉に銀時達は目を見開く。
鞠の助は政宗に心がまだあったという事実に、銀時はルカに備わっている力をまた知った事に驚愕しているのだ。
そして今こうやって動けないのも、ルカの力によるものではないかと銀時は気づく。
そんな中、ルカは固まっている熊に手を伸ばす。
不思議な事に固まっていた熊は、ルカが何をしようとしているのか理解したかのように頭を下げてきたのだ。
ルカはそのまま熊の頭のキノコに触れようとしている。
「駄目だ!!触れたら増えるぞ!!」
鞠の助の忠告も今のルカには聞こえていない。
そのままキノコに触れると、その途端にキノコが枯れていったのだ。
キノコが枯れたと同時に、侵食していたもの全てが枯れてしまい、血走った目をしていた熊の目に生気が戻っていた。
ルカはそのまま熊を撫でる。
「いいこいいこ。もういたくないよ。」
「クウゥゥン。」
熊は気持ちよさそうに鳴き、目を閉じながら大人しくルカに撫でられている。
それを見ていた神楽や新八、銀時、鞠の助も信じられない目でその光景を見ていた。
「・・・奇跡だ・・・。侵食されたものが元に戻るなんて・・・。」
「一体これは・・・。」
「凄いネ!ルカは動物の心まで掴めるネ!」
元に戻った熊はルカの前に座りだし、ルカを足の間に入れた。
ルカも嬉しそうに熊に抱きついている。
「きゃっきゃ!パパ〜!クマさんいいこ〜!」
先程まで驚いていた銀時だが、何時ものルカを見て冷静さを取り戻した。
「・・・あぁ。よかったなぁ。」
銀時達はいつの間にか動けるようになっており、そんな楽しそうなルカを見つめる。
そこに神楽が寄ってきた。
「ずるいヨ!ルカ、私も政宗と遊びたいネ!」
「ちょっと、神楽ちゃん!!危ないよ!」
「でも、こんな経験したことないネ!私も遊びたいヨ!」
「それは一理あるけど・・・。」
「ルカ〜!私も混ぜてヨ〜!」
ルカはそれを見て熊に「いい?」と聞ききだした。
熊に聞いてどうすると端から見たら思うだろうが、不思議な事にルカのその問いに熊が相槌をとったかのような仕草をしたのだ。
近くから見ていた銀時達は更に驚愕した。
"ルカの言葉は、熊に届くってことか・・・。ルカは動物と話せるのか?"
「いいって!」
ルカは神楽にそう告げた。
「ヤッホーい!」
神楽は嬉しいあまりにそのまま熊に抱きついた。
大人しく抱き閉められている熊。
次に新八が恐る恐る抱きつき、感動して涙まで流している。
「銀ちゃーん!銀ちゃんも触ってみたら?ゴッさ可愛いヨ〜!」
「・・・あぁ。」
"ま、今はいいか。ルカも楽しそうだしな。"
銀時は吹っ切れて熊に近づき、何時までも抱きついている新八を蹴り飛ばし、己が陣どり出した。
「何するんじゃぁ!!」
「うるせ!何時までも抱きついてんな。独り占めすんな。」
「いいじゃないですか。だって野生の熊ですよ!熊!皆んなに自慢できますよ!」
「これだからお子ちゃまは。こんくらいの事で大はしゃぎしちゃってまぁ。熊は俺んだァァ!!」
「あんたが一番はしゃいでんだろうがァァァ!!」
二人がはしゃぐ様を遠くから見ている鞠の助。
政宗を見て何かを思い出してる様子。
そんな鞠の助の前にルカが現れた。
「おじちゃんいこう!クマたん、まってるよ!」
そう言って手を握り、熊のところまで引っ張っていくルカ。
鞠の助も大人しくついていき、政宗の前に止まる。
「・・・大きくなったな、政宗・・・。」
「クウゥゥゥン。」
政宗はルカの時よりも何処か嬉しそうに鳴き、自ら顔を摺り寄せていった。
「・・・よかった・・本当によかったな、政宗。」
鞠の助は涙を流しながら、政宗が助かった事に歓喜して、政宗に抱きついた。
そんな心温まる光景に周りは笑顔で見守っており、今回の一番の功労者のルカの頭を銀時がそっと撫でた。
「そういえば、松茸まだ見つけてないネ!」
神楽が思い出したかのように告げる。
「何かもうよくね?」
「え〜!食べたかったヨ!」
その途端、政宗がルカを掴み、自分の背中に乗せてどこかに行きだした。
慌てて銀時達はルカを返せと熊に迫るが、またルカがそれを止めた。
「いじめちゃ、メ!」
ルカが止めることもあり、迂闊に近づけず、黙ってついていくしかないメンバー。
暫くついていくと其処には、沢山の大きな松茸がなっていたのだ。
これには皆が唖然である。
「・・・お前・・・もしかしてこれを教えるためにルカを?」
「きっと政宗は、助けてくれたお礼がしたかったんだろうよ。」
「政宗ー!お前は熊の中でも熊らしい熊ネ!」
「意味分かんないよ、それ・・・。」
「いいこいいこ。」
ルカは政宗の背中を撫でる。
そして思いっきり松茸を取った万屋メンバーは、自分達の食料分と売り捌く分と分けて市に売捌きにいった。
滞納していた家賃分と暫く料理には困らない程の賃金を手に入れたとか何とか。
ま、それも長くは続かなかったがな・・・。
銀時のパチンコ代や神楽の食費にあっという間に消えたから。
ダメなやつらが幾ら金を持っていても、駄目ってことだよ。「オイィィィィィ!!ナレーター、私情挟むなァァァァァ!!」