銀魂

□第3章:久しぶりだな、嬢ちゃん
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春雨に囲まれる中、銀時達は活路を切り開き、逃げだしていた。

目的を果たした高杉達は二人を深追いしなかった。

春雨の協力を得られることになった高杉達は、春雨と一旦別れ、今高杉は一人で部屋に居り、月を見上げている。


「なにしてるの?」


誰もいない筈の場所から声が聞こえた事に目を見開き、其処を見るとルカがいた。

ここにいるはずのない子供が何故こんなところにいる。


"どうやって現れた?"


「・・・テメェ・・・、何もんだァ?」


高杉は片目を失ってからというもの、人の匂いや気には敏感になっているのだが、ルカの存在には全く気づけなかった。

あまりにも異様な存在に警戒し、剣を抜き、ルカの首元に押し当てる。

だが、そんな中でもルカは怖がったりしない。

それどころか、何処か寂しそうにも見えてしまう。

何故こんな状況でそんな表情が出来る・・・。


「・・・ルカのこと、きらい?」

「・・・は?」


高杉はルカの言った意味が分からないでいる。


「・・・おめェ、ルカっていうのかァ?」

「うん!ルカのこと、きらい?」

「・・・嫌いも何もねェだろォ。お前みたいな餓鬼、知らねェしなァ。知らないのに嫌いもクソもねぇだろ?」

「・・・・じゃ、きらいじゃない?」

「・・・・まぁ、そうなるなァ。」


"何だこいつ・・・。調子が狂わせられる・・・。"


ルカは、それを聞いて満面の笑みで答える。


「よかった!ルカもね、パパだいすき!」


そういうルカはいつの間にか向けられた剣先にはおらず、高杉に抱きついていた。

全く動くところが見えなかった高杉は、いきなり足元に来て抱きついて来るルカに更に警戒し、剣で切ろうとしたが、何故か体が動かない。


"・・・動かねェ・・・。"


「パパ!だいすき!」


いくら動かさそうとしても、何かに押さえつけられたかのように体が重くていう事を聞かない。


"さっきから此奴・・・誰と間違えてやがる・・・。"


「・・・誰がパパだァ?殺すぞ、餓鬼ィ。」

「パパ!ルカのパパ!」


ルカは高杉に抱きついたまま、殺気にも怯えずに満面の笑みで見上げて答える。

動かない体と格闘しながら、パパじゃないと告げるが何度も「パパ〜、パパ〜♩」とリズミカルにいうルカに高杉が折れた。

子供に向きになっている自分が情けなくなったのもあるが、あまりにも嬉しそうにいうルカの笑顔をみて毒気を抜かれてしまったのだ。

ルカに折れた高杉は否定する事をやめ、この状況を打開すべく、ルカに話を振ってみた。


「・・・オメェ、どうやって此処に来たァ?」

「う?」

「・・・じゃァ、誰の差し金で来たんだァ?桂かァ?」

「パパ!」

「・・・・・・・。もういい。最後に、何でここに来たァ?これだけは答えろォ。」

「あのね。おじちゃんたち、ちょうだい!」

「・・・おじちゃん?誰だ、それはァ?」

「にぞおじちゃんとてつおじちゃん!」


それを聞いた高杉は更に驚愕した。

銀時達が去った後、似蔵達の骸を片付けるために二人の場所に向かったのだが、そこには骸がなかったのだ。

それを聞き、二人を連れ去ったのはルカなのだと気づいた。


「・・・あんな死体、貰ってどうするんだァ?幕府にでも渡そうってかァ?物好きは腐るほどいるもんなァ?」

「あそぶの!おじちゃんたちと!」

「・・・オメェが死体と遊ぼうってかァ?オメェも、見かけによらず狂ってやがるなァ。」

「う?」

「クク。気に入ったぜェ。ルカとか言ったなァ?似蔵達の所に案内しなァ。」


攻撃する気が失せた高杉はいつのまにか動く体に気付き、剣を下ろし、抱きついているルカの頭に手を乗せる。

だが、ルカは首を横に振った。


「・・・だめ・・・。」

「合わせられないってことかァ?別に取りはしねェよォ。」


それでもルカは横に振った。


「あったら、おじちゃんたちが、つかまっちゃうから・・・。」

「・・・俺は捕まえないぜェ?」

「ちがうの・・・。おじちゃんがころしちゃったひとたちみんななの・・・。」


それを聞き、唖然としだす高杉。


「・・・どういう意味だ、それはァ?」


"死んだ奴らが捕まえに来る?そんな事できるはずがない・・・。だが、もしそれが此奴には見えているのだとしたら・・・。"


「パパでも、おしえちゃメなの・・・。」


ルカがそういった途端に、高杉の周りに強い風が出現し、高杉は目も開けられない状態である。


「ック!此奴の仕業かァ!」


目を庇いながら目を細めてルカの姿を捉えようとする高杉。

その時に気づいたのだ。

先程とは違い、目が赤く輝くルカの姿を。

その姿はまるで血を象徴するかのような美しい存在。

過去最強と謳われる夜叉姫のごとく、見るもの全てを虜にさせ、星を破滅へと導く存在が頭をよぎり、全身が疼き、見ているだけで血がたぎる。

高杉は興奮に満ち溢れた目でルカを捉えていた。


「ごめんねパパ・・・。ルカ、いくね。」


そう言ってルカはその部屋から姿を消していた。

ルカが消えた途端に風も消えてしまい、辺りは静寂に包まれた。

そして気づいた。

腹部に負った傷が治り、切られた筈の学書が治っていた事に。


「・・・く・・・ッククク。面白れぇ!こんな高ぶりは何時ぶりだろうなァ?」


高杉はもと通りになっている思い出ある学書を見ながら、狂ったかのように笑っている。

そして高杉は鬼兵隊を招集させ、ある命令をだした。


「いいなァ?必ず見つけ出せェ。」

「「「「「「承知!」」」」」」」


鬼兵隊は命令遂行のため、ばらばらに散った。


「お前は俺のもんだァ。なぁ、ルカ?」


ルカの目を思い出しただけで未だに体が高揚してしまう。

ルカが欲しくて仕方ない高杉はずっと怪しく高笑いし、その声は戦艦中に鳴り響いていたのだった。
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