銀魂

□第2章:俺の子だが、何か問題でも?
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洸夜と別れたルカは未だに屋根の上におり、星空を眺めていた。


「・・・・かあさま・・・・。」


そう呟いた空を見上げるルカの目には涙が浮かんでおり、静かに顔を伝い出す。

その涙は誰にも知られることなく、ルカはその場から消えてしまった。

一方、先程の騒ぎに何事かと駆けつけていた攘夷志士達が街中におり、建物の中からその様子を覗いている。

その部屋に情報を持った者が入ってきた。

その部屋には、攘夷志士の中心人物である桂がおり、収集した情報を報告した。


「どうやら、嫌がる娼婦に手を出した役人に攻撃した者がいたようで、その者が追われているようです。」

「そうか・・・。この騒ぎはその者を追ってのものか。ご苦労。下がっていいぞ。」

「はっ!」

「桂さん、どうしますか?まさか、白夜叉殿が・・・。」

「・・・確かにありえない話ではないな。彼奴なら関係なしに困ってる者を助けるからな。・・・少し出かけてくる。」

「桂さん!俺らも行きます!!」

「桂さんの身に何かあってはことです!」

「それはいかん。お前達は休んでいろ。情報収集などで疲れているだろう?休息も立派な戦略だ。」

「「「「「「「桂さん・・・。」」」」」」


部下を労う桂に皆が心打たれていた。

桂自身も"決まった"と内心で呟き、そのままかっこよく出るつもりだったのだが、階段から滑り落ちてしまった。


「ほわっちゃァァァァァァァ!!」


桂の叫び声が鳴り響く。


「折角感動してたのに・・・。」

「あれさえなければ、最高の指導者なんだろうが・・・。」

「なんで、叫び声がほわっちゃ?」


落ちた桂は、気を取り直して役人達が探している人物の元に向かいだす。

役人達が追っているのが銀時ではないということが分かり、そのまま見つからぬようにして帰ろうとしていた。

すると通りがかった橋の上で、川岸に一人座る子供を見かけたのだ。

こんな時間に子供がいることが奇妙な話であり、桂はもしかしたら幽霊ではないかと思い、橋に身を隠すようにして隠れる。


「ま、ま、待て・・・!お、お、落ち着け!まだ、そうとき、決まった訳ではない!と、と、兎に角確認せねば!」


桂は、震えながら子供の元にソロリソロリと近づいていく。

木陰に隠れながら移動し、ある程度近づいたところでその子供を見る。

子供は女の子だという事に気付き、座っている事で長い髪が地面についていた。

角度の違いからか、先程は気づかなかったが、女の子の金色に輝く髪と目がとても神秘的に見えてしまう。

その女の子こそ、屋根からいなくなっていたルカであった。

桂は初めて見る光景に見惚れてしまい、その場に立ち尽くしてしまう。

自分でも知らぬ間にルカの元に近づいており、気づいた時にはルカの真後ろに立っていたのだ。


「・・・俺は・・一体・・・。」


ルカもそんな桂に気づいたようで、後ろを振り向く。

ドキッ。

ルカの顔をまじかで見た桂は鼓動を高鳴らせた。


"美しい・・・・。"


そんな桂の思いを他所に、ルカは満面の笑みを浮かべてそのまま桂に抱きついた。

桂も何が起きたか分かっていない。


「パパ!」

「・・・・・え・・・・。」


桂はルカが抱きついている事に漸く気付き、自分でも顔が赤くなっている事に気づいた。


"俺は・・・こんな3歳ぐらいの幼子になんでこんな反応をするのだ?!・・・それにこの子、今何と言った?"


桂は抱きしめて来る女の子の頭に手を乗せて問う。


「すまぬがもう一度言ってくれぬか?」

「パパ!」


ルカは桂を見上げ、満面の笑みで答えた。


「・・・・・。」


桂は固まった。


"俺が・・・パパだと?"


「・・・すまぬが、もう一度言ってくれ。」

「ルカのパパ!」

「ハハ・・・。俺は疲れているのだ・・・。そうだ、そうに違いない・・・。でなければパパなどと聞こえるはずが「パパ〜、大好き〜!」パパもだよーーー!!」


あれ?

これ、デジャブ?

ルカの笑顔にやられた桂は、あっさりと認めてしまい、そのまま抱きしめていたのだ。


「し・・・しまったァァァァァ!!」


後悔後に立たず。

認めてしまったものは仕方ない。

桂は、何時迄も離れようとしないルカを抱えて住処に戻る。

当然、いきなり子供を抱えて戻ってきた桂に皆が唖然としている訳で。


「・・・と言うわけだ。これから、この子を俺の子供とする。皆、よろしく頼むぞ。」

「・・・・・・。」


もう、口が塞がらない。

だがそんな中、エリザベスが桂に渾身の一撃を与える。

抱えられていたルカは、桂の計らいで床に降ろされていたために被害はない。

エリザベスはプラカードをだす。


《何がという訳だ!肝心なところをはしょってるじゃないか!!》


「そうですよ!!此処から出た後何があったんですか!!たった数十分の出来事ですよね!?」

「・・・まさか、隠し子ですか?!」

「桂さんに隠し子いたなんて!!」


壁に埋め込められていた桂は、漸くの思いで出てきた。


「い・・いや・・・。隠し子などいない・・・はずだ・・・。」

「はずってなんだ!はずって!!身に覚えはあるんかいィ?!」

「ま、待て!落ち着け!!お、お、俺にも何がな、な、なんだか。みっちゃんとの時はゴムつけたし、あやちゃんの時にも外だしした「あんたが落ち着けよォ!なに赤裸々に18禁内容織り込もうとしてんのォォ?!あんた、意外に遊んでんだな!!」

「俺じゃないぞ!馴染みの大西君がだ!」

「じゃ、今言うなァァ!!紛らわしいんだよォォォォ!!」

「と、兎に角!俺には身に覚えがない!!無実だ!!」

「本当ですか?本当に違うんですか?」

「一旦落ち着こう!な?何かの間違いかもしれんぞ?この子の父親に俺が似ているだけとか。」

「・・・確かに、その可能性はありますね・・・。」

「此処は確認が先だ。嬢ちゃん、この人は誰だ?」


攘夷志士の一人が桂を指差して問う。


「パパ!」


皆んながもしかしたらと思った希望は、簡単に崩れ落ちた。


「間違いないんだね?この人は君のパパなんだね?」

「パパ!だいすきなパパ〜!」


そう言ってルカは、地面に触れ伏している桂に抱きつく。


「パパ〜。」


憂うれと笑みを浮かべて抱きつくルカに、桂も満更でもないみたいで、顔がニヤついている。


「・・・もう、俺がパパでよくない?」

「「「「「「「「「「オイィィィィィ!!!」」」」」」」」」


その後、すっかり骨抜きにされた桂を皆で止めるが、一向に聞こうとしない。


「嫌だ!俺がパパだ!パパは愛しい娘と一緒に何時もいるもんなの!!」


この調子である。

今ではどっちが子供か分からない。


「だからですね、その可愛い子を戦場に連れて行くのは危ないでしょ!誰か預かってくれる人を探さないとでしょ!!」


もう、説得の仕方がルカが桂の子供と認められた上での話である。


「ルカも俺と一緒にいたいだろ?」

「あい!ルカ、パパといる!みんなといる!」


ズキュンッ!

そういうルカの笑顔に皆がやられてしまった。


「「「「「「「「「可愛い〜!❤」」」」」」」」」


それからというもの皆がルカを猫可愛がりしだし、それぞれがルカを呼び出した。


「ほらルカちゃん。お菓子あげるよ〜❤」
「ここにジュースもあるよ!」
「果物は好きかな?」
「ルカちゃん、おいで〜。」
「ルカたん!俺の嫁になって!」

「あい!」

「ちょっと待てェェェ!!俺の娘に手を出すこと許さんぞ!!特に最後の奴ゥゥ!!前に出て来い!!俺が叩き切ってやる!!」

「え〜、いいじゃないですか〜。」
「そうですよ〜。こんなに可愛いんだから、皆んなも可愛いがりたくなりますよ〜。」
「ルカちゃん〜、叔父さんの膝においで〜。」

「あい!」

「ダメだ!!ルカ、お父さんはお父さん以外の膝に座るなんて許しません!!」


皆がルカにメロメロである。

だが、桂が許さないのもあるが、ルカは桂の側にいるのが一番嬉しそうで自ら膝に乗り、桂に抱きついている。

その様がまるでコアラのようで、見ている側も微笑ましく、頬が緩んでくる。

次第に眠くなってきたルカは、舟を漕ぎ出した。


「・・・眠たくなったのか?」

「あい・・・。」

「このまま寝ていいぞ。」

「・・・パパ・・・、どこにもいかない?」

「あぁ、どこにも行かない。ルカを置いて行くものか。」

「・・・よかった・・・。」


桂に撫でられながら安心したルカはそのまま桂の胸に身体を預けて眠ってしまった。


「・・桂さん、ルカちゃん本当にどうされるんですか?まさか、本当に育てるつもりですか?」

「この子がそう望むならな・・・。だが、本当の親を探せねばなるまい。今頃、探してるかもしれんしな。」

「だけど、ルカちゃん。何か訳ありに見えますが・・・。このまま返してもいいんでしょうかね?」

「・・それは俺が決めることじゃない。この子、自信が決めることだ。明日から、この子に関する情報を集めるぞ。」

「「「「「「「「「「「承知しました!」」」」」」」」」」

「では、俺は寝る。お主らも寝ておけ。」


そう言って桂は、眠っているルカを抱えて寝床に向かう。

ルカを寝かせようとするが、桂の服をしっかりつかんでおり、全く離そうとしない。

仕方なく桂は、そのままルカと共に同じ布団で眠ったのだった。
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