兼平ちゃん短編集

□かたおもい
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俺は昔から人見知りが激しくて。


中学で部活を始めて少しはマシになったと思うけど。


大勢で集まったりするのは苦手。


だからかな。


高校に入って、すぐに話しかけて来てくれた君を好きになったんだ。


最初は憧れに近い感情で。


でもそれはすぐに恋に変わった。


誰とでも話せる君だから、俺にも声をかけてくれたのかな。


ちょっとずるい。


君の笑顔を見る度に、鼓動が早くなるのが分かる。


他愛ない話題も、デートのお誘いも。


君の声が聞こえるだけで、それまで考えていたものが全部、崩れてしまうんだ。


いつだって君のことを考えては理想像を作り上げて。


夢の中では完璧なのに、君を目の前にするといつも上手くいかない。


こんなはずじゃないんだけどなあ。


ああやって、こうなって、シミュレーションはいつだって思い通りなのに。


ため息をついても何も変わらない。


どうすれば君にもっと近づけるのかなって、いつも考えてる。


でも君は俺のこと友達としか思ってないのかもね。


浮かんだ言葉も届きやしないんだ。


話したいことはたくさんあるのに、言葉にもならない。


いつだって君に会いたくなる。


会わす顔がなくっても。


初めて遊びに行った日はいつもよりおめかしした。


君の前ではカッコつけたくて。


ちょっと背伸びして。


そんな俺を見てほしかった。


君と目が合うだけで、いい日になるって思っちゃう。


君といるだけで、顔が綻んで笑顔になるよ。


こんな俺が、君の綺麗な瞳にはどう映ってるのかな。


君に出会えたこと、好きになったこと、運命としか思えないんだ。


だから俺は言うよ。


俺しか知らない君が知りたいんだ。


そばにいるだけで好きだってこと気付かれそうなくらい、ドキドキしてる。


こんな俺だけど。


君にふさわしい男じゃないかもしれない。


君の描く理想には遠く及ばないかもしれない。


けど。




「…それでも好きだよ」





もし願いがひとつ叶うのなら──。


どうか俺を好きになってよ。

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