魏の部屋(長編)
□騒がしき日常
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「ふわあぁあ…!あー、よく寝たぁ」
琴音は布団から起き上がり、ゆっくり身体を解した。
先日はこの家を借り、賈詡や曹操から許可を得てリフォームを行なった。
大半は錬金術を駆使したが、近代的な物は錬成せずなるべく古来の生活に合わせた物にした。
とはいえ、自分から見れば古い物でもこの世界の者にとっては斬新なのだろうが。
「さーて、早起きついでに身体動かすかな」
琴音は外に出て、鍛錬を始める。
ここへ来て、自分の学んだこの武芸は必要不可欠だと再確認できた。
少しでも腕を磨いておかなければ…いつ殺されてもおかしくないのだ、と。
身体をある程度動かしたあと、そこそこの太さがある木を立てかける。
(…んー?何をしてるんだ?あの人は)
先日、世話役に任命された賈詡は琴音を迎えに訪れていた。
だが、琴音は何やらかなり集中しているようで遠目から眺めていた。
精神を集中させて…
「りゃあ!!」
べキッ!
琴音の蹴撃によって、木が折れる。
なんて威力だと、賈詡は感心した。
「素晴らしいねぇ琴音殿。あんたにそれほどの武があったとは…。実にお見事」
「あ、文和さん。おはよう!来るの早いね?まだ夜が明けたばっかりなのに」
「あー、まぁ一応俺にも自分のしなきゃならん仕事あるんでね。まぁあんたが寝てたら引き返すつもりだったんだが」
「そっか、文官なんだもんね。やっぱ大変なの?」
「そりゃまぁ大変は大変だが、郭嘉殿らに比べればそんなでもない」
「ふーん。あ、文和さんは朝食食べた?」
「朝食?あぁ、朝餉のことか。いや、まだ済ませちゃいないが?」
「なら食べてく?昨日の内に改装して厨房使えるようになったし、食材分けて貰えたし」
「そりゃ有難い。是非とも」
卓を囲むのは、親密になる上では欠かせない。
このことが知られたら、間違いなく騒がれるだろうが。
「じゃあ用意するよ。お茶も出すから座って待ってて」
「どーも」
茶を出され、賈詡は琴音の姿を観察する。
(んー、なんとも無防備だねぇ?いや…あの武芸を見る限りじゃ、中々の強者。警戒してないように見せて警戒してる、か?)
などと考えはしたが、単純に自分に興味ないのだろうなと賈詡は笑った。
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