リバ神

□男は度胸、時には勢い
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任務が終わり自室に帰った神田は日付も変わろうとしている時間の為さっさと寝てしまおうとしていた
するとノックもせずに急に扉が開き真っ赤な顔でアルコールの匂いをプンプンさせたリーバーが急に部屋に入ってきた、いや入ってきたというより飛び込んできたという表現の方が正しいのかもしれない


「か〜んだぁ〜」


ぎょっとした顔で扉の方を見ていると、酔っ払いは許可も得ずにベッドに潜り込もうとしている


「おい、なんなんだよ急に…酔っ払ってんのか?」
「ん〜、よっぱらっら〜」

ベッドに潜り込んだリーバーは上機嫌にへらへらと笑っている
いつも酒など呑まないくせになぜこんなに酔っ払っているんだと怪訝に思いながら神田は酔っ払いの相手が長くなりそうだと感じ椅子に座った
そうすると、リーバーはベッドの端をポンポンと叩き手招きする
神田は大きなため息を1つつくと椅子から立ち上がりベッドサイドに腰掛ける


「なんだってそんな酔っ払ってんだよ、酒なんて普段から呑まねぇじゃねぇか、俺は任務帰りで眠いんだ、寝かせろ」
「いっしょにねればいいだろぉ〜」


尚も上機嫌なリーバーは神田をベッドに引っ張り込もうと服の裾を掴むが無情にも手を払い退けられてしまった


「ちぇっ、つれねぇなぁ」


なんだよなんだよと呟きながらリーバーは壁の方に向き直り丸まってしまう


そして、数分の沈黙の後にリーバーはさっきまでの酒に酔った呂律の回らない話し方から打って変わって真剣な声色になると神田の方を向くこともないまま壁に向かって話し始めた


「もし、教団に入ってなかったらって
この前科学班のやつらとそんな話になったんだ
俺ももうこんな歳だし、嫁さんもらって子供の1人や2人いたんじゃないかって」


神田は最近自覚したばかりのリーバーへの想いからつい眉をひそめてしまう


「…それなら、教団内の女と結婚でもなんでもすればいいだろ
お前に好意を持たれて嫌がる奴なんていないだろ、教団内の優良物件じゃねーか」


その言葉を聞くとリーバーは掛け布団を跳ね除けて起き上がる


「本当にそう思ってるのか!?
…実は今日、当たって砕けろと思って告白をしようと思ってたんだ」


急に起き上がり嬉しそうな顔でそう叫んだリーバーをみて胸の奥がズキンと傷んだ気がした


「は?今日なんてあと数分しかねーぞ、なんで俺のとこなんかに居るんだよ、さっさとその女のとこでもどこへでも行っちまえよ」


これから想い人に想いを伝え一夜を過ごすのだろうと想像してしまう
さっさとリーバーに出て行ってもらって短い恋だったとひとしきり落ち込んでから早く寝てしまいたいのに、一向に出て行こうとしないリーバーは意を決したようにベッドから抜け出し神田の目の前に跪くと白衣のポケットから小さな箱を取り出した


「神田…さん、俺と結婚してください」
「…………は?」


箱を開けながらリーバーは言う、箱の中には2つのリングが並んでいた
全く思考が追いつかない、今から目の前のこの男はどこかの女に想いを伝えるはずだったのに神田に突然プロポーズをしたのだ、理解の範疇を超えている


「教団に入って分かった事があるんだ、本当にいつ死ぬか分からないのなら自分の気持ちに正直に生きようって」


そう言うとリーバーは箱から小さい方のリングを取り出すとぽかんとしている神田の左手を取り薬指に嵌める、団服の時に体の隅々まで採寸しているためかぴったりのサイズのリングだ
されるがままになっていた神田は、はっと我に返った


「ふざけてんのか?」
「ふざけてなんかない、至って真剣だ、ただ…少し酒の力を借りたが
ついこの前ずっと神田の事が好きだって気がついたんだ
好きなんだ、本気で、付き合ってください」


リーバーは耳まで真っ赤にしているが、真剣な目つきで神田の目を見つめながら想いを伝える


「返事とか、聞いてもいいか?」
「…なんて言ったらいいかわかんねぇよ」


神田はリーバーの真剣な目と目を合わせていられる少し逸らしながら呟く


「いや、いいんだ、分かってたから
こんなおっさんに好きなんて言われて気持ち悪いよな
というか調子に乗って指輪なんてしてすまん!」


しかも婚約指輪飛ばして結婚指輪だもんな〜、それより告白もこえてプロポーズと笑いながら神田の指に嵌めたリングを外そうとする


「そうじゃねぇよ、逆の時はどう返事したらいいかわかんねぇって言ってんだ」


指輪を外そうとしていたリーバーは勢いよく顔を上げる


「い、いいのか!?俺と付き合ってくれるってこと?」
「そう言ってんだろ」


神田はリングケースからもう1つのリングを取り出すとリーバーの左手の薬指に嵌る
ふられたと思い込み涙目になっていたリーバーはみるみる笑顔になり神田を抱きしめた


「好きだ、大切に、大切にします」
「…おう」


抱きしめられた神田はスキンシップに慣れていないため少し身動ぎし、自分も抱きしめ返すべきなのか両手をうろうろと彷徨わせる


「俺が幸せにしてやるよ」


神田はそう言うとそっと抱きしめ返した


「ははっ、どっちが告白したか分かんねー、俺かっこ悪いな」
「…そんなことねぇ」







男は度胸、には勢い



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