深縁のディスペア
□拒絶
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「本当に屋根裏に入らないんですかー?」
「逆に何故入ると思うのよ」
少し時間が流れて黒崎一護の家の屋根に来ていた。
「『破面』は仮面を外し、虚と死神、二つの力を手に入れた虚の一団だ。
今まで数も少なく未完成だったがそこに崩玉を持った日番谷が接触することで成体の破面が誕生した。
そいつがこないだの二体だ。ここまではわかるな?」
「ああわかる。スケッチブックがなければもっとわかる」
「……当初尸魂界は日番谷が直接ことを起こすまでは静観するつもりだったんだ。こっちも隊長三人が一気に抜けてまだバタバタしてたしな。
だが予想外に早く成体が完成し、そいつが現世に送り込まれたことでそうも言ってられなくなった。
そこで急遽選抜されたのが俺たちだ」
「選んだのは?」
「山本総隊長だ。四十六室が死んで次の四十六室が決まるまでの間、決定権が総隊長に降りてきているんだ。
とりあえずお前を一番よく知ってるってことでルキアが選ばれて」
「違う! 実力で選ばれたのだっ!」
「動ける戦闘要員の中で一番ルキアが近しいってことで俺が選ばれた。
で、隊長格以外で俺が一番信用できる戦闘要員を選べって言われて、俺が一角さんに同行を頼んだ。
そしたら弓親さんが「僕も絶対に行く!」って言いだして、騒ぎを聞きつけた乱菊さんが面白そうだからって行きたがって……
乱菊さんがどーしても行くって聞かないもんだから輪花隊長が引率として仕方なく……って感じだな」
「ピクニックかよ」
「兎にも角にも、君は彼に目をつけられたってことよ。一護」
「あ、輪花隊長だ。一人だけ天井裏に入るのを断固拒否したノリの悪い輪花隊長だ」
「窓が開くのを外でずっと待ってたんすか?
駄目っすよ、それでなくても紫髪の小学生なんて目立つのに」
「心配しなくても君たちが壊した天井と電球の修理費は給料から引くようにしとくわよ」
「げっ!」
当たり前でしょうが。
「…………」
「何?」
「いや、俺よりもお前の方が日番谷に目ェつけられてなかったか?」
「……あのね」
ため息まじりに説明する。
「日番谷が私を手に入れたい理由なんて知らないけど、たぶんあれは私情よ。
本気で尸魂界を攻め落とすつもりなら、
隊長格以上の実力を持ち、なおかつ予測不能な成長と行動をとる君に目をつけるわ。
少なくとも私が向こう側ならそうする。こっちは警備も手薄だからやりやすいわよ」
ついでに破面の説明もしておいた。
「この時点で何か質問はある?」
「いや……驚きすぎて言葉も出ねえけど……」
「けど、なんだよ」
「なんか双極の時と雰囲気違くね、お前」
真剣に聞いていて損をする発言をしないでよ……。
「たわけ! 戦いの中ならば誰だって熱くもなるだろうが!」
「うちの隊長、だいたいこんな感じよ。ミステリアスでクールな雰囲気が人気だしね。この間の女性死神人気投票、私を抜いて一位だもの」
私はすごく不快な顔をする。
というより不愉快なのよね。そういうの。
「へぇー。ガキならガキらしくすりゃいいのにな」
「外見的偏見でしか見れない君の矮小さは知能の低い猿と同程度だと言えるでしょうね」
「……んだと!」
拳を握って立ち上がろうとした一護をルキアと恋次が押さえつけた。
「それじゃ、私は浦原喜助のところに行ってくるわ」
「浦原サンの…? なんで……」
「…………あの糞爺余計な仕事増やしやがって。一体何日寝てないと思ってんだ。用があるならてめえが直接伝えやがれ老いぼれが」
一護の質問には答えずに窓から出ていく。