深縁のディスペア


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「輪花……」

子宮のみを残し、ボロボロと崩れ去る輪花を見て、千良はどこはほっとしたように目を細めた。

「土は土へ、灰は灰へ、塵は塵へ。
女王は再び一つとなり、世界は再び無になり、七柱が再び世界を作る」

「ヤメ……ろ……」

止めようにも身体は跪いたまま微動だにしない。
風の激流が二人を囲む。心なしか空間にバキバキとひびが入っている様に見える。

「全てをもう一度やり直そう。今度こそ、皆が啼かなくていい世界を作ろう」

もうどちらが言ったのかわからない。
神々しい光に包まれ、千良と星良は真の女王となる。
全知全能の女王。この世界の創造主の一人。そしてこの世界を終わらせる破壊神。

「全てを無に滅生術……原初にして最後の奥儀」

掲げられる錫杖。
それが握られる瞬間、再び亀裂が入った。
世界にではない。空間にではない。
輪花が置いて行った子宮……いやその中に入った大きな卵。
蝶と龍の卵にひびが入る。
母に認識されたことで生命としての条件を満たした。

「……ぅあっ、馬鹿なッ! ラストゥス! ラージエスト! お前たちやらかしてくれたな!」

急に女王が顔色を変え、錫杖を構えて卵に襲い掛かる。
女王の錫杖が卵を貫く直前、殻を破り、中の新しい命が目を覚ます。
赤子というにはあまりにはっきりとした顔立ちをしていた。そしてあまりに大きすぎた。
人間でいうと中学生くらいだろうか。
背中に生えた鳥のような翼はまだ小さいが、とても子供と言える見た目ではなかった。

子供の眼がぱっちりと見開かれる。
灰色のハイライトのない瞳。そこからエネルギー派でも流れたように女王は吹き飛ばされた。

「はっはははは! いいよやりなさいよ! 禁忌の間に生まれし我が孫よ! 今こそ長きにわたる楔を砕けェェェぇぇ」

蝙蝠の超音波のような産声。人間や死神の聴覚では聞き取れないその声に女王の肉体は風に吹き飛ばされる塵のように消し飛ばされていった。
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