深縁のディスペア


□目的
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瀞霊廷・天使家客間。
天使都羽沙に夕食に招待された一護とルキア。
目の前の並ぶ豪華な洋食を食べ終える。


「うかまったぜ!
ありがとな、都羽沙」


都羽沙(つばさ)は目を細めて笑う。
その後ろで白虎(はくとら)が不機嫌そうな顔をしていた。


「いえいえ。命を救われたお礼ですので」


貴族にしては軟化な態度で接する都羽沙にルキアは楽に息をする。
厳粛な朽木家とは打って変わり、朗らかな天使(あまつかさ)家は居心地がいいように思える。


「無礼を承知でお尋ねしますが、都羽沙どのは何故流魂街に?」


「はい……。実はそれについてお話したく、お二人をお呼びしたのです。
朱雀」


「はっ」


朱雀と呼ばれた背の高い従者が一冊の分厚い本を取り出した。
和風な尸魂界とは違い、この家は洋風で、その本も西洋に在りそうな古い書物だった。


「死神にこれを話すかは一族の間でもめにもめまたのです……。
ですが、奴らが流魂街にまで出現した今、そう悠長なことも言ってられなくなったのです」


真面目な顔で本を開く都羽沙。
一護は都羽沙の言葉を察して思わず立ち上がった。


「あの化け物を知ってるのか!?」


「一護……」


無礼だとルキアに制され、席に着く。
都羽沙はあるページを開くと一護たちに見せてきた。
そこには例の化け物の絵が乗っていた。


「我が天使家は尸魂界の歴史を管理する一族。
これは何万年も前に封印されたと言われる、
     アンデット
“罪を受け入れし者”と言われるものたちなのです」


「アンデット……?」


「はい。大昔に王族の手によって封印されし異形の怪物。
奴等に攻撃は効かず、また戦闘能力は総隊長をも凌ぐ」


「そんな奴等が封印を解いて出てきちまったってことか……」


「本来ならあの封印は王族縁の特別なもので未来永劫解けることはなかったのです。
ですが、封印を施した部品の内の一つが盗まれ、空いた歪から奴らが出てきてしまった……」


都羽沙は歯がゆそうに目を伏せた。


「何故、今までそのことを御隠しに……?」


「本来なら、再封印の術を持つのは王族か、我が天使家の当主のみ。
我が一族にかかわる以上、こちら側で内密にことを済ませるはずでした」


目を伏せたままの都羽沙に代わって朱雀が説明する。


「黒崎一護、日番谷を倒したその腕を見込んでお願いするのです!
どうか、わたくしに協力していただけないでしょうか!」


「勿論だぜ! そんなことなら早く言えって」


即答した一護に都羽沙は明るく微笑んだ。


「では、その情報を護廷に提示していただけないでしょうか?
他の隊長たちもお力添えをしてくれるはずです」


「そうですわね! 白虎、すぐさま総隊長殿に謁見の申し出をなさって」


「承知」


白虎はすぐさま部屋を出て行った。


「で、その封印に必要なものって何なんだよ?」


「あ、まだ言っておりませんでしたね。えーっと」


ぱらぱらとページをめくって、封印の台座の描かれたページを見せた。


「ここに描かれている、“紫蝶の片羽”。これさえあれば封印を施すことができるのです」


「これはまた奇抜な模様ですな……」


シンプルな模様の地獄蝶とは打って変わった派手の一点に尽きる羽をみてルキアが呟く。


「盗まれたと言いましたが、賊に心当たりは?」


都羽沙は一瞬朱雀と目を合わせるとこくりと頷いた。


「賊と言いましても実際に屋敷の中に侵入されたわけではないのです。
封印の台座は流魂街に隠されています。
そこには白虎に常に監視させておいたのです。
容姿はまだ幼く、紫色の髪が特徴でした。
その者は知ってか、知らずか、結界によって隠された台座を見つけ出して部品を抜き去り、行方をくらませたのです」


「紫色の髪……? おいルキア、まさか!」


「そんな独特な髪を持つものなど一人しかおらぬ!」


「知っているのか?」


朱雀は表情を崩さずに訊ねた。
二人は二回ほど頷き、答える。


「俺たちもそいつを捜してんだ」
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