深縁のディスペア


□終焉
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今となっては昔のこと。
もう戻ることのない日々。
平凡で退屈な日。あの子とこんな会話をしたことを思い出す。

「君はどこの隊に入りたいの?」

“大きくなったら死神になる”それが兄との約束。
この森から出ない代わりの約束だった。

「んー」

木の上で相槌を打つだけの彼に一瞬ムカついて、木を蹴飛ばした。

「そう言うお前はどこに行くんだよ」

木の上から落ちるところを翼を広げて飛んでもとに戻ると訊ねてきた。

「私はもちろんお兄ちゃんの隊よ! だって一番強いんでしょ?」

「ふーん、俺は兄貴たちとは別の隊にするな」

「捻くれてるー」

「言っとけバーカ」

「そんなんだと隊長になれないよー」

その時の護廷は実力だけでなく人格も求められていた。

「少なくともお前より俺の方が素質あるぜ」

「なによ! 私の方が君より先に隊長になるわよ!」

拗ねた私の隣に飛び降りるとまっすぐ見てきた。

「お前は何かと背負いすぎて自滅しそうなんだよ。せめて副隊長くらいが似合ってる」

私の髪にキスをする彼に抱き着く。
冷たい体温と固い皮膚。
それが一番落ち着く。

「じゃあこうしようよ。君が先に隊長になったら私が君の副隊長になるの」

「お前が先になったら?」

「その時は君が私の副隊長になるの」

「お前の部下かよ……」

不服そうな顔をしたけど嫌そうな感じはしない。

「約束したでしょ。共に分け合うことを」

「はいはい。精々頑張れよ」

「むぅ……絶対君より先に隊長になるんだから!」

まだ幸せだった日々。
この5時間後に崩れ落ちた理想郷は夢でしか思い出せないのだろう。


君の言うとおりだった。
私は隊長に向いていない。
もしも、君が隊長になっていたら私以上に上手くやれたかしら。
なんて、もうわからないことよ。
壊れることを望んだのはお互い様だもの。

もしも生まれ変われるならなんて、出来もしないこと思う私はもう死んだの。

小雪那は願いを叶えたわ。

“私を殺してくれる運命と出会わせろ”

あいつは私の“命”ではなく“人生”を壊す運命に導いた。
本当に、捻くれてる……。

あぁ、でも最後くらい……

名前で呼んでほしかった名前で呼べばよかった
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