恋乱LB V

□求める愛情と絡み合う欲情
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(ふふっ…子供みたい…)


「幸村様、ちょっと失礼しますね」


口の端についた欠片をとるために、そっと手を伸ばし

幸村様の唇を指で掬った


「っっ!?」


すると一気に頬を赤らめ、狼狽える幸村様


「あ…あの…ついていたので…」


そんな反応をされると何だかこちらまで、気恥ずかしくなってしまい

釣られて頬を赤らめた


(しまった…失礼だったかな…?)


才蔵さんがいない間、ずっと気にかけて側にいてくれた


何だか前よりも近しくなったと勘違いをしていたが、あくまで幸村様は武士で私は一介の料理方に過ぎない


その身分差は火を見るより明らかなのだ


「す…すみません幸村様…私失礼なことを…」

「いいいいや、いいんだ!そうではなく…ただ女子に触れられることに慣れていないだけでっ!」

「え…?」

「じゃなくてっ!っというかその通りなんだが…その…」

「へぇ〜それは大変だ」

















(楽しそうにしちゃって…)


幸村と笑顔で言葉を交わす名無しさんをじっと見つめる

何だか俺一人がずっと想っていたみたいで、目の前の名無しさんは至って普通だ


「幸村様、ちょっと失礼しますね」

「っっ!?」


(馬鹿…)


口の端についたどうなっつの欠片を指で掬って

案の定顔を赤らめた幸村に釣られ、負けじと同じく頬を染める名無しさん


仲の良い二人の様子を黙って見ているのも最早限界だった




「才蔵さんっ!?」

「才蔵っ!?」


予想通り、驚き目を丸くさせる二人

その似たような顔が何だか腹立たしい


"夫婦は似る"


いつか聞いた言葉


幸村と名無しさんは夫婦ではないが、一緒にいるうちに似てしまったのだろうか


言葉に出来ない暗い想いが胸を占めていく


「楽しそうだね」

「っ!?ばっ…帰って来たのなら、ちゃんと報告に来い…」

「才蔵さん…無事で良かった…」


気まずそうにする幸村とは、対称的に名無しさんは目に一杯涙を溜めて心から安堵したような…

切なくも嬉しそうな表情で俺を見つめた


「…ただいま」


何だかそれだけで何もかも吹っ飛んだようで

やっぱり俺は単純な男だと改めて気付かされる


「お帰りなさい…才蔵さん」




















待ちわびた名無しさんと過ごす夜


久しぶりに口の中に広がる甘く優しい味に舌鼓を打ちながらお茶を啜る


「才蔵さん、任務の間お怪我などされていませんか?」

「別に」

「無事に帰って来てくれて本当に良かったです」

「…ん」


隣で嬉しそうな顔をして座る名無しさんの肩に手を回すと

甘えるように胸に顔を擦り寄せて柔らかいものが当たった


いつもにも増して素直な名無しさんが心から愛しい 


甘く香る長い髪の毛も、しなやかに伸びる白い腕も、柔らかな体も


全てが男を煽って、そして引き寄せる



「…俺がいない間、何してたの」

「え…何って…いつも通り料理して…寝ての繰り返しです」

「じゃあ寂しい時はどうしてた?」

「寂しい時は…幸村様が何かと気にかけて下さっていたので、ただじっと耐えてました」


(幸村…ね)


どこまでもお人好しな俺の主

あれもあれで天然だから、仕方のないことかもしれない


けれど、心の何処かで暴れ出す自分がいる


"嫌だ"と


他の男と仲良くするのが、心底嫌で

どうして俺だけを見ることが出来ないんだと…


自己中で傲慢なもう一人の俺が顔を覗かせた




「…幸村のこと好きになっちゃった?」

「え…?」

「正直惹かれたでしょ。幸村に」

「そっそんな!私が好きなのは才蔵さんだけです!」

「へぇ…じゃあ証明してみせてよ」

「しょ…証明…?」

「そ。どうすればいいか…わかるよね?」



名無しさんの手を引いて


そっと俺のモノを握らせると


顔を真っ赤にした名無しさんが慌てて手を引こうとする



しかしガッチリと掴んでいるため、びくともしない



「ほら、たまにはお前さんから求めてよ」

「そ、そんな恥ずかしいこと…」

「俺のことが好きなんでしょ?」

「っ!それは、そうですけど…」

「早く…俺結構色々溜まってるんだよね」

「…………」

「…お前が求めてくれないなら、手っ取り早く解消出来そうな女探すけど」

「いっ嫌!!そんなこと嫌です!」

「じゃあしてくれるよね?」

「…っ!はい…」













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