恋乱LB V

□未来の貴女へプレゼントを
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天気のいい朝

パンパンと小気味のいい音を立てながら洗濯物を干していく


(あ…昨日才蔵さんがつけていた腰紐…)

昨夜は思考の途中で中断されてしまったが、大体決まってきた


あとは店に行って才蔵さんに似合いそうなものを探すだけ



「よし!これでいこう!」


拳を握り締め、思わずそう呟くと


「何がこれでいくんだ?」

「信玄様っ!」


後ろにいた信玄様に驚き、慌てて頭を下げる

物思いに耽っていたせいか全く気が付かなかった


「失礼しました!ちょっと考え事をしていて…」

「ははっ!大体は決まったのか?」

「はい…後は店に行って…」

「そうか。丁度良かった。少し付き合え」

「え?」


信玄様に強引に腕を引かれ、そのまま歩き出す


「しっ信玄様!一体どこに…」

「最後はお前に決めてもらおうと思ってな!」

「私に…?」


(一体何の事だろう?)


一介の女中である私が信玄様に抵抗出来る筈もなく

何もわからないまま付いていったのだったー…
















名無しさんの洗濯物を干す音を聞きながら、屋根の上で瞼をそっと閉じる


気持ちのいい風がそよそよと髪の毛を揺らす穏やかな朝


昨夜は空が白み始めた頃に床についたせいか、いつもより瞼が重たい


名無しさんは大丈夫だろうか?


するとある人の気配がして、丁度名無しさんがいる庭で止まった


洗濯物を干す音が止んだところを見ると何やら話しているようだ


体を起こして屋根の上からチラリと顔を覗かせると、信玄公に腕を引かれ走っていく名無しさん



(…何だ?)



信玄公の食事も名無しさんが担当している

今日の献立の相談かもしれない


「………………」


しかし妙に気になり気が付くと二人の後をつけていたー…
















「……………」


名無しさんは馬に跨がり後ろから信玄公に体を包まれている

何故か館の外へ出た二人は馬を走らせて城下へと向かっているようだ



馬の走る音で二人の会話こそ聞き取れないものの、話をする度に近付く二人の距離に苛立ちが募る


(全っ然面白くないんだけど…)



心なしか名無しさんの顔が少しだけ朱に染められている気がした


そろそろ慣れてもいい筈の俺に対してさえ、未だに初心な反応を示す彼女が

違う男と近付いて平気でいられるわけがない


(ムカつく…)


相手が幸村であれば強引に連れ去ったが、信玄公ならそうはいかない


どうにも出来ない歯痒さで頭がおかしくなりそうだった




(ここは…)


漸く馬を止めた場所は人気のない場所にひっそりと建つ怪しげな店

そこへ二人で入っていくのが見えた



「…………」


看板も呼子もいない見るからに怪しい店


見ただけでは何を売っているかわからない


しかし今入るわけにはいかない


二人が出ていってから確かめようと、木の上に身を潜めじっとその時を待った














「なっ…なな、何ですかこれ!!」

「どうだ?なかなか色っぽいだろう?お前が好きなのを選べ」


キラキラ、フリフリの妙な召し物


どう見ても体を隠すことは出来そうにない



(こっこんな小さいのどうやって着るの!?)


私の様子を見た店主がにこやかに声をかけてくれる


「これは下着ですよ」

「した…ぎ…?」

「ええ。着物の下につけるんです」


(なるほど…これは胸?で、この三角のは…下!?)



「どうだ?これなら才蔵も喜ぶだろう」

「でっ…でもこれを才蔵さんに贈るなんて…」

「才蔵に贈るのではない。これを付けたお前を才蔵に贈るんだ」

「ええっ!?私が着るんですか!?」

「当然だ。きっと才蔵も喜ぶぞ!」


白く光る歯を見せてニカッと笑う信玄様


どうやらこの中から選ぶ以外に選択肢は無さそうだ


(あ…これなら体隠れるかも…)


手に取ったのは上と下が繋がっている服らしき下着とやら


「お嬢さんお目が高いですね!それはネグリジェと言いまして…」

「ねぐりじぇ?」

「ええ。着てみればわかります!」

「試着も出来るのか?」

「勿論です、どうぞこちらへ」


店主に押されるまま奥の部屋へと案内される


「召し物を全部脱いでから着てくださいね」


パチンと襖を閉められ、改めてねぐりじぇとやらをまじまじと見る


(何か透けてない…?)


陽にかざしてみると、うっすらと透けている気がする


「と、とりあえず着よう…信玄様を待たすわけにはいかないよね…」


とりあえず着物を脱いで、怪しげなねぐりじぇに腕を通してみたー…






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