恋乱LB V

□独りの夜
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「理解は出来ません」

「そ」


(言うと思った…)


忍なら誰もが口を揃えて、そう言うだろう

でも、それでいい





「…しかし、尊敬はしています」



後に続いた清広の意外な言葉に驚く



「お人好しだね…お前は」

「褒め言葉として受け取っておきます」



そしてそのまま、清広に背を向け月の光を頼りに走り出した


行き先は決まっている


早く会いたい


早く安心させてやりたい


きっといない間たくさんの涙を溢して、何度も想いを馳せたに違いない


他人から見ればみっともないほど足が急いて

大事に懐にしまった小箱を落とさぬよう、とにかく走ったのだったー…





















「んっ…ぁん…才蔵さっ…」


くちゅくちゅと卑猥な音が響く


この音が蜜壺からしているのだと思うと、余計に羞恥を煽った


そしてギシと音を立てて才蔵さんが入ってきた瞬間…



「っ!!」




目を開くと真っ暗な部屋


見慣れた天井



(そのまま寝ちゃったんだ…)



部屋の行灯の灯りは既に消えていて、結構な時間が経っていたことが伺える


そして…



「あんな夢見るなんて…」



期待した蜜壺からトロリと愛液が漏れでる


(最悪…)



まさか夢でこんなに濡らすことがあるなんて…



毎晩愛した


毎晩愛された


毎晩才蔵さんの想いを深いところで受け止めた


私はあなたに出逢っていなかったら

きっと想いを馳せただけで、こんなにも濡らすことはなかったでしょう



「はあ…」



とりあえず部屋に戻り着替えようと体を起こしたその時ー…






「何の夢?」


「きゃあっ!」




まだ夢の中にいるのだろうか?

目の前には意地悪な笑みを浮かべた才蔵さんがいる



心臓が早鐘を打つようにドクドクとうるさく鼓動して

震える手を伸ばした


(どうか触れますように…夢じゃありませんように…)



指先がトンと才蔵さんの艶やかな頬に当たり、幻影でないことが証明される



「本当に…?才蔵さん…?」

「…俺の顔忘れた?」

「また私の都合のいい夢なんじゃ…ってて!」

「ほら、夢じゃない」

「もう…痛いですよ…」



軽くつねられた頬を擦りながら、目の前の才蔵さんをじっと食い入るように見つめると

才蔵さんは困ったように眉を下げて、フッと笑った



「ただいま」


「おかえり…なさい…お帰りなさい!才蔵さんっ!!」




思わず才蔵さんに抱き着くと、私の行動に驚きながらもしっかりと抱き留めてくれる


久しぶりに触れた体からは、いつもの才蔵さんの匂いがして

安心したのか涙が溢れた




「待たせたね…」


「っ…!無事でよかっ…!」



泣きじゃくる私を慰めるように、ポンポンと才蔵さんの大きな手に頭を撫でられて

本当に帰って来たのだと改めて実感したのだったー…



















何度も何度も確認するかのように、肩口に顔を擦り付けて

背中へと回された腕に力が入っていく



前より華奢になってしまった体は思いきり抱き締めるのさえ怖くて、フワリと力なく抱き締めるので精一杯だった




"ここにいる"




それだけで、こんなにお互いが満たされていく関係もなかなかないだろう



恋仲であれば、それが当たり前のことなのだから



我慢させてしまうのは、いつだって俺のせいで

その度に名無しさんには辛い思いをさせていた


任務のことに関して絶対に踏み込んでこないのは、自分が傷付かないためじゃない


全部俺のため


他人に踏み込まれるのが嫌いな俺のため


全部わかっていた



だからこそ、もう我慢はさせたくない





「で、何の夢見てたのさ」

「なっ…何でもないです」

「へぇ…随分もがいてたみたいだけど」

「えっ!?嘘っ…」


カアアと暗闇でもわかるほど、顔を赤らめて嘘がないか俺の顔を見つめる


その初心な反応が堪らなく可愛くて、愛しい



「ほんと。もしかして俺の夢?」

「っ…忘れました!」

「ふーん…」



隙だらけの名無しさんを優しく褥に押し倒して

形のいい唇をなぞるように指を這わせると

ピクリと体を反応させて、潤んだ瞳が俺を映した








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