恋乱LB U

□悲劇か、喜劇か〜side 才蔵
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「ぁあっ!ん!はぁっ!」

「…はっ…そんな声出したら、外にまで聞こえるけどいいの?」

「んん…ゃ!はっ…」

「まぁ…これなら音でモロバレだろうけど…っ」


パンパンと派手な音を立てながら、己の欲望を名無しさんに真っ直ぐぶつける

ガクガクと腰をしならせて、よがる名無しさんを後ろから眺めるのは、俺の興奮を更に高めた

「っ…気持ちいい?」

「っ…はぁ…っ!ん!」

「清広に触られるより…?」

「んゃあっ…な、んで…そんなっ…」

どうしてこんなに自分の傷を抉るようなことを…

(馬鹿だね俺も…)

「ん!んん!はぁ…っ!」

そんな考えを打ち消すように、更に速度を上げる

俺以外の人間を忘れてしまえばいいのに…

一生俺しか映さない目になればいいのに…

そんな馬鹿なことさえ本気で願うほど、狂ったように目の前の名無しさんを抱いた


「ぁあん!はぁ…」

「っ…」


吐き出した欲情がポタリポタリと蜜壺から伝い落ちる

俺の欲望を全て受け止めきれなかった彼女の蜜壺

それは今の俺達の気持ちの大きさを表しているような気がした



ズルズルと力なくその場に座り込もうとする名無しさんを抱き留めると涙ぐんだ瞳が俺を映す

「…酷い…も…こんな才蔵さん…嫌です…」

「……………」

ポタリと頬を伝って落ちる涙

しかしその瞳には悲しみの他に怒りも宿されていた

「…ごめん」

ぎゅっと抱き締めて漸くそれだけ絞り出す


確かに余裕のない愛し方をしてしまったが、こんなに名無しさんの怒りを買うとは思っていなかった

「……私は才蔵さんしか見えていないのに…どうして…」

肩を震わせて涙を流す彼女を見て、自分がいかに最低なことをしてしまったのか、初めてその重さに気付く



"清広に触られるより気持ちいい?"



嫉妬の余り、つい出た言葉

それがどれだけ名無しさんの心を深く傷付けていたのか…余裕のない俺には気付ける筈もなくて

名無しさんのことになると、周りが見えなくなる自分

勝手な想いを乱暴にぶつけてしまった後悔


彼女が心変わりするなんてあり得ないとわかっている筈なのに

そしてもし、したとしても離す気など更々無いくせに…



「…愛してる」

柄じゃない

けど言わずにはいられなかった
抱き締める腕に力を込めて、少しでも多く俺の想いが伝わるようにー…



























次の日

縁側で寛いでいると清広が両手いっぱいの団子を持って現れた

清広なりに反省しているのだろう

思わず笑みが溢れる

無言で差し出された団子に手を伸ばし、一口頬張ると清広の緊張が少しだけ和らいだ


(念のため釘でも打っとくかね…)


「…昨日は名無しさんが迷惑かけたね」

「いえ…」

「色々な世話もしてくれたみたいだけど…」

そこで清広は何かを思い出したようにハッと息を飲む

名無しさんのことを思い出しているのだろう

その表情には少しだけ芽生え始めた何かが垣間見えた気がした


「次はない」

「……………」



清広の中で生まれた想いを摘むように

あれは俺のだと言わずにはいられなかった

清広はそれを知ってか知らずか、心配そうな瞳で部屋へと視線を移す


「名無しさんなら腰砕けで寝てる」


これは本当

昨日あんな格好をさせて乱暴に抱いたせいか、名無しさんは足に力が入らず立ち上がれないようだ

それは紛れもなく俺のせい

いくら余裕がなかったとはいえ、流石に少しやり過ぎた…と今になって思う


清広は物思いに耽ったように遠くを見つめてから、頭を下げてフッと消える


「やれやれ…」


団子を持ち立ち上がると、愛しい女が待つ部屋へと戻った




















「どう?調子は」

「…私もしかして二度と歩けないんじゃ…」

「そんなわけないでしょ。多分…」

「多分!?」

笑い話をしながら褥の横に胡座をかき、団子を彼女の目の前に差し出すと、訝しげな目で俺を見上げる

「…何ですか」

「食べなよ」

「…才蔵さんが団子をくれるだなんて…やっぱり私歩けない…?」

「…俺の心が変わらない内に受け取らないと、もう二度とないかもよ?」

「それもそうですね…ありがとうございます」

受け取った団子をはむはむと頬張ると、口の中に広がる甘さに顔を綻ばせる名無しさん

「おいひ〜〜!」

「良かったね」

こうして二人で、同じものを食べて、一緒に笑う…
体を繋げる以外にも、気持ちだけでこんなに満たされる…


それだけで十分だと思った






















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