恋乱LB V

□未来の貴女へプレゼントを
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「…というわけで…どうか皆様この事はご内密にお願いします」

「任せとけ!口が裂けても才蔵には言わんぞ!」

「という幸村が一番危ねえけどな」

「言えてます!信玄様」

「御屋形様っ…!」


広間で顔を突き合わせての会議


内容は才蔵さんの誕生日のこと


毎年、宴は開かれるものの主役の才蔵さんはいつもフラリといなくなるらしい

今年は才蔵さんが楽しめて、尚且つ想い出に残る誕生会にしようと企画を持ち掛けたものの…



「才蔵が何欲しいかなんてわかんねえよな〜」

「確かに…先生ってあんまり物欲無さそうですし…」

「欲しいものは手に入ったんだろ。いっそのこと素っ裸にした名無しさんを箱の中に詰めて…」

「信玄様っ!!」

「素っ裸…!っい、いくら御屋形様とはいえ、そんなことをしたら流石の才蔵も怒るのでは…」

「絶対に無傷では済みません!」

「それもそうだな〜」

「もう…皆さん真面目に考えて下さいよ…」


"各自才蔵さんに贈り物を用意する"


そこまで決まったのはいいものの、肝心の"贈り物"

これが皆の頭を悩ませていた



「やはり才蔵は団子が一番いいのでは?」

「しかし、それは"名無しさんが作る団子"だろう?それじゃあ全部名無しさんからってことになっちまう」

「う〜〜〜〜〜ん…」


(確かに…才蔵さんが喜ぶものなんて団子くらいしか思い付かないよね)


「酒はどうだ!?」

「それはお前が喜ぶものだろう。才蔵は付き合いでは飲むが決して飲みたがりではないぞ」

「う〜〜〜〜〜〜〜ん…」

「あっ…そろそろ先生が湯汲みを終える頃じゃ…」

「はっ!そうだな!」

「じゃあ皆さん後は各自で考えるってことで!」

「よし!とりあえず解散だ!」


蜘蛛の子を散らすように、一斉に自室に戻りながら

私も才蔵さんへの贈り物に頭を痛めていた













「どこ行ってたのさ」

「あっ…えっとお茶をとりに…」

「ふーん」


お茶を持って部屋へ戻ると、湯汲みを終えたばかりの才蔵さんが

濡れた髪の毛をガシガシと拭きながらさほど疑いもせず、淹れたばかりのお茶に口をつけた


「団子はないの?」

「湯汲み前に食べたじゃないですか」

「そーだっけ?」

「ふふっ。おとぼけお爺さんみたいですね」

「何それ、まあお前さんよりは歳とってるけど」

「もう少しでまた一つ離されてしまいますね」

「お前さんの誕生日が来たら、また追い付くでしょ」

「あっ…それもそうですね」


(いけない…誕生日のことは驚かせたいから秘密なのに…)


誕生日の話を振ってしまったことを軽く後悔しながら、話題を逸らそうと視線を上げると

丁度才蔵さんが寝間着に着替えようと腰紐をシュルリと解く



「あれ?この腰紐…」



ハラリと落ちた腰紐を拾い上げ、まじまじと見ると

ところどころ擦りきれて大分痛んでいるようだ


「何?」

「この腰紐…随分年季が入ってるみたいですけど、何か思い入れでも?」

「あー、別に。あんまりそういうのこだわらないし」

「ふむ…」


言われてみれば確かに、才蔵さんはあまり着物や装飾品などにこだわらない


壊れたら新しいのを買う感じなのだろう


勿論、幸村様の家臣という立場だけあって身なりはいつも綺麗だが

こういう寝間着など見えないところは割りとおざなりなのかもしれない




「何さ」

「……えっ!?」

「ぼんやりして考え事?」

「あ…いえ…別に…」

「へぇ…」


(お団子もいいけど、やっぱり形に残るものの方が…)



「……っひゃあ!」

「そんなに眉間に皺寄せて、隠せると思ってる?」



壁際に座っていた私の両脇に置かれた才蔵さんの手

才蔵さんの顔が近付いて来るにつれ、影が私を覆っていく



「べっ別に私っ…隠し事なんて…」

「ふーん、今日は随分強情だね」

「んっ…」


顎を取られ、啄むような口付けが落とされた

こういう時の才蔵さんは意地悪く、わざと私を焦らしてその反応を楽しむ


「んっ…ぁ…」


案の定、才蔵さんの巧みな口付けに溶かされた私はこのもどかしい口付けが堪らなく焦れったい



「…もっと欲しい?」

「…ふぅ…は…い…」


スルリと入ってきた才蔵さんの熱い舌に絡め取られて

頭の中が白んでいくのを感じながら才蔵さんにそのまま身を委ねたのだったー…










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