恋乱LB V

□にらめっこ
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「にーらめっこしましょー、わーらうと負けよっ…あっぷっぷ!」

「っ…くく…」

「佐助君笑ったー!私の勝ち!」

「ずるいぞ名無しさん!もっかい!」

「ふふ。いいよー!」


縁側に腰かけて、佐助と何やら楽しそうに遊んでいる名無しさん


俺には背中を向けていて、彼女が今どんな顔をしているのかはわからない



「ぷっ…変なかおー!」

「また私の勝ち!」

「何してんのさ」


後ろから声をかけると、焦ったように頬を擦りながら

いつもの笑顔を浮かべる名無しさん


「才蔵さん」

「先生!名無しさんのにらめっこの顔が面白くてズルいんですよー!」

「へぇ」

「別にズルくないよ!」

「だってあの顔…ぷぷっ」

「もうっ!佐助君ってば!」


楽しそうにじゃれあう二人の隣にゆっくりと腰を下ろして

赤くなった頬に手を寄せる


「俺にも見せてよ。変な顔」

「えっ!?」

「ってことは先生もにらめっこやるってことですか!?」

「いーよ」

「いやいや…才蔵さんに変な顔を見られるのは…」

「嫌なわけ?」

「嫌です!」


断固拒否する名無しさんの耳に顔を寄せて、佐助に聞こえないようそっと囁く


「あんなとこや、こんなところまで見られてるのに?」

「っ!!」

「今ここでそういうことするのと、にらめっこするの、どっちがいい?」

「っ!!ず、ズルいですよ才蔵さん!」

「何々?何の話だ?」

「何でもないよ。やってくれるってさ、にらめっこ」

「っ…もう…才蔵さんもちゃんとやってくださいよ!」

「当然」

「先生の変な顔を見られるって、この先一生ないかも!」

「じゃあ、いきますよ…にーらめっこしましょー、わーらうと負けよ…あっぷっぷ!」



「……………」





目の前には精一杯の変顔をした名無しさん


俺、真顔




「ぷっ…あはは!ちょっと…才蔵さん…何で敢えての真顔なんですか!?ズルいですよ!」

「別に変な顔しなくても、要は笑わせればいいんでしょ。俺の勝ち」

「流石先生…勉強になります!」

「そ、良かったね」

「全然良くないですよ…私だけ変な顔見られて損した気分…」

「お前さんの顔も面白かったよ」

「全然嬉しくないです…」


シュンと肩をがっくりと落として、拗ねたように呟く名無しさん


そんな姿も可愛いと思ってしまう俺は結構重症だと思う



「落ち込むことはないぞ名無しさん!先生はお前の顔を面白いと褒めてくれたんだ!誇りに思え!」

「佐助君…それもっと傷付く…」


佐助の無意味な励ましにがっくりと頭垂れて、長い髪の毛が名無しさんの顔を覆った


陽の光を受けた名無しさんの髪の毛がキラキラと光る

彼女を形作る全てが愛しい


髪の毛一本までもが美しく思えて、眩しさを感じる



(やれやれ…あの顔が本当に面白いとでも思ってんのかね)


「名無しさん」

「…何ですか?」


長い髪の毛を耳にかけて、再び耳に顔を寄せ



「…可愛かったよ」


「っ!!」


そう呟いただけで、意図も簡単に頬を赤く染めた



「二人で内緒話してズルいです!俺にも教えてください!」

「だーめ。お前にはまだ早いよ」

「先生のケチー!!」

「はいはい」


俺と佐助がいつものやりとりをしているのを

顔を綻ばせて嬉しそうに見つめる



(そう、それでいい)



何よりも彼女にお似合いな明るい笑顔



その顔が見られるのなら、どんなことをしたっていい



名無しさんにはずっと笑っていて欲しいからー…






だから…



「ずっとそのままでいてよね…」













End

「結局先生の変な顔見られなかった!」

「あ、そうだ!」

「そんなに俺の変顔見たいの?」

「「見たい!!」」

「仕方ないね…じゃあ佐助、今夜俺の部屋においで」

「何でですか?」

「今までにお前が見たことのない顔してると思うから。ね?名無しさん」

「っ!!」


 

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