恋乱LB V

□快楽の代償
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「ねーねー」

「…………」

「ねぇ」

「…………」

「ねぇってば」

「…………」

「まだ怒ってるの」

「怒ってません!!」

「…怒ってるでしょ」

「血管が切れそうなだけです」

「そんなに嫌だったんなら、嫌って言えば良かったのに」

「言いました!すごい言いましたけど!!才蔵さんが…」







"んっ…ぃ、やぁっ!才蔵さっ…"









(…あれか?)



「あれって嫌がってたんだ。てっきり喜んでるのかと思った」

「なっ…そんなわけないじゃないですか!!」

「だってお前さんさ…

キモチイイ時ああやってよがるでしょ?」

「っ!!〜〜才蔵さんの馬鹿!!」

「あ、そんなこと言っていいの?じゃあ続きを…」

「ぁっ…駄目っ…才蔵さんっ!」







「あの


そろそろ宜しいですか?」



「わわっ…き、清広さん!」

「せっかくいいところだったのに、邪魔しないでよね」

「すみません」


報告書を渡すと、才蔵さんは全く興味無さげに懐にしまいこむ


どうやら腰が痛いらしい名無しさんさんの上に股がって、揉んでいたようだ



(完全に遊んでるな…)



こんなに生き生きした才蔵さんを見るのは久しぶりで




「んっ…ぃ、はぁ…」

「ちょっと。清広の前でそういう声出すのやめてくれる?」

「だったら手を止めて下さい!!」

「やだ」



ニッコリと嬉しそうな笑みを浮かべて


彼女の腰に指を滑らせる



しなやかな指の動きは、全く力が入っていない

指圧する気は毛頭ないらしい




「どうぞ」

「え…?何ですかこれ?」

「お灸です」

「……………」



才蔵さんの厳しい視線がビシビシと伝わってくる


まるで玩具を取り上げられた子供のように

余計なことはするなと言わんばかりの空気



「お灸?」

「えぇ。痛い箇所に据えておけば楽になると思いますよ」

「へぇ…ありがとうございます!」

「いえ…」

「……………」



無邪気な笑顔を向けて

俺に笑いかける名無しさんさん


別に気があるわけではない


どうしてと聞かれたら、やはり答えは才蔵さんのため…だから


彼女が元気でいることこそが、才蔵さんのいい仕事に繋がる


勿論、彼女がいなかった時も仕事は完璧だった


が…名無しさんさんが現れてから俺は才蔵さんの本当の実力を知ることになる



今までの彼も素晴らしい腕を持っていたが


それは本気ではなかった



きっと里の命令だから、のらりくらりと適当にこなしていただけ


帰る場所が出来たことで、才蔵さんに何らかのいい影響を及ぼしていることは間違いない



そしてそれは名無しさんさんのお陰であるということも



名無しさんさんが元気でいることこそが才蔵さんの力になるのならば


俺はそれを手助けするだけ




「あの…これどうやって使うんですか?あっ!」


手にしていたお灸がパッと消えて、気付けばいつの間にか才蔵さんの手に握られている



「俺がやってあげるよ」

「……才蔵さんが?」

「嫌なわけ?」

「別に嫌じゃないですけど…ちゃんとやってくれるんですか?」

「信用ないねー。ちゃんとやるって」


ニッコリと笑みを浮かべる才蔵さんに、疑うような眼差しを向ける名無しさんさん



「…じゃあ、せっかく清広さんに頂いたのでお願いします」

「そ、じゃあ脱いで」

「やっぱり清広さんにお願いします!!」

「直に置くものなので、腰ならば脱いで頂かないと…」

「〜〜〜〜っ!!」

「どうする?清広にやってもらう?」

「…………才蔵さんにします」

「あっそ。まあ、清広って言っても俺がやったけど」

「選択の余地ないじゃないですか」

「当たり前」

「……………」



顔を真っ赤にさせる名無しさんさんを愛しげに

優しい目で見つめる才蔵さん


彼女といる時の才蔵さんの雰囲気は驚くほど穏やかで

時間の流れがゆっくりになったような錯覚さえ起こす




本当に名無しさんさんを愛しているのが伝わってきて


そんな相手を見つけた才蔵さんを少し羨ましく感じた




「いつまでそこにいるつもり?」



「あ…失礼しました」



才蔵さんの声にハッと我に返る



「もう、才蔵さん…いいじゃないですか。清広さんゆっくりしていって下さい。今お茶でもお持ちしますから」

「いえ…お構い無く。もう行きますので…」

「い゛っ…!」


立ち上がった拍子に、再び腰を痛めた名無しさんさんは

顔を歪めながら蹲る











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