恋乱LB V

□護身術の先生は…
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(あ、帰りにお土産買っていこうと)


買い物篭を持ちながら、才蔵さんお気に入りの甘味処に立ち寄る


今日は珍しく一人で城下に買い出しに出た


才蔵さんがすごく気持ち良さそうに縁側でスヤスヤ眠っていたから

起こすのは可哀想と思い、久々に一人城下の町を歩く



(荷物が少なくて助かった…)



いつもは必ず才蔵さんが

いなければ幸村様や、佐助君がついてきてくれる


過保護とも思えるが、才蔵さんの優しさが実は結構嬉しかったりするのだ



「お土産用に、いつものお団子十本下さい」


最早、顔見知りである店の人に声をかけると手早く才蔵さんお気に入りの三色団子を包んでくれる



「ありがとうございましたー」




(さ、早く帰ろっと)



店を出て城への道を急ぐ


勝手に出てきたため、あまり遅くなると才蔵さんが心配するかもしれない


ふとそんなことを考えると、段々と不安が広がっていく


あまり才蔵さんに迷惑はかけたくない


(近道していけば、早く着くかも!)



ひっそりとした獣道


ここを突っ切れば少しだが、早く城へ着く


急いでいたため、何も考えずに暗い獣道に足を踏み入れたのだったー…




















「駄目だよ姉ちゃん、一人でこんなところ通っちゃ」

「悪い男に捕まったらどうするの?」


ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべた二人の男


完全にやらかしてしまった


柄の悪い男二人に妙に絡まれてしまったのだ


(こういう時は相手にしないのが一番だよね…)


男達を無視して横を通り抜けようとすると


「っ!」

「無視は良くねぇな」

「はっ離して!」


ガッチリと腕を掴まれて

振りほどこうにも女一人の力ではどうすることも出来ない


「ほー…よく見れば可愛い顔してんじゃねぇか?」

「こいつ高く売れるぜ!」

「よし!このまま連れて行くか!」

「や…嫌!!助けて!」



大声で助けを叫んだその時ー…





「ぐわっ!」

「うっ!」



ヒュッと何かがすり抜けたような風が吹いて


男達が地にバタバタと倒れた



「な…何…」


「大丈夫ですか」




「清広さん!」



清広さんがスッと木の陰から姿を現して

私に手を差し伸べてくれる



「あの…ありがとうございます。助かりました」

「いえ…でもここはもう通らない方がいいですよ。最近こういう輩がウヨウヨしてますから」

「はい…気を付けます」


倒れた輩を見下ろして、ついてこいと言わんばかりに前を歩く

清広さんはそのまま消えることなく、私に歩調を合わせて歩いてくれた


どうやら城まで送ってくれるらしい



「あの、今日も才蔵さんに任務…ですか?」

「えぇ、まあ…」




ということは才蔵さん今夜はいないんだ…




「それにしても、どうしてこの道を?」

「あ…その…早く城へ帰らなくちゃと思って…才蔵さんに何も言わず出てきてしまったので…」

「そうですか」



勝手に買い出しに出掛けて、しかも変な輩に絡まれたことを才蔵さんが知ったら…

どんなことになるか、ありありと想像出来る



(絶対に怒るよね…)



「あの…清広さん、今日あったことは…」

「才蔵さんには言いませんから安心してください」

「すみません…」


ホッと胸を撫で下ろして、清広さんの後ろをついていく


それ以上の会話はなかったが、間もなく私達は無事に城へ着いたのだったー…




















「どこ行ってたのさ」

「えっと…ちょっと買い出しに…」

「ふーん…」


城に着いてすぐ才蔵さんの不機嫌な声が響いた

どうやら私が出立してから、結構時間が経っていたらしい


「で、何で清広もいるの」

「買い出しをしている名無しさんさんを見かけたので、城へ送って来ただけです」

「へぇ…」


清広さんは表情一つ変えず、きちんと約束を守ってくれた


才蔵さんにバレないかヒヤヒヤする私と、あくまで冷静な清広さん


じっと私達に疑わしい視線を浴びせたあと、才蔵さんは清広さんと任務の話のため部屋に戻っていく



(ほ…バレなくて良かった)



何となく才蔵さんの目が納得していない感じはしたが、これ以上追求されることはないだろう


それにしても…


いつもは大丈夫なのに、一人の時に限って今日みたいなことが起きるだなんて…


(運が悪いというか…)



「そういう星の下に生まれたのかな…」



ポツリと独り言を漏らしながら、夕げの支度のため炊事場へと向かったー…














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