恋乱LB V

□change!!
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「どうしよう…」

「どうするか…」


私は目の前の私を見つめながら呟いた


視線を下へやると、目の前には大きな掌



(幸村様の手ってこんなに大きいんだ…)




信じられない話だが、今私は幸村様になっている


目の前にいる私は私ではなく、中身は幸村様


こんなことになってしまったのは、つい数刻前の出来事ー…
















気持ちのいい晴れ晴れとした空の下で洗濯物を干す


丁度いい感じの風がそよそよと干されていく洗濯物を揺らした


「よし、完了っと。…ん?」



ミャアと可愛らしい鳴き声に振り向くと、真っ白な猫が後ろでくつろいでいる


「可愛い〜どこから入ってきたんだろう?こっちおいで…」


そっと近付くと私の動きに反応した猫がピョンと縁側に飛んで廊下を歩き出した



「あっ…駄目だよ。そっちに行っちゃ…」



慌てて追いかけると猫も走り出して、廊下の門を曲がっていく



「大変!」



私も急いで後を追うように門を曲がったその時ー…




「いてっ!!」

「きゃあっ!!」




ゴツンと大きな音と共に、頭に衝撃が走った




目の前がチカチカと光って気が遠くなる


頭がクラクラして気持ち悪い


何とか落ち着かせようと屈み込んだその時


自分の手に真っ白な猫がいた



私を見てミャアと可愛らしい声を上げる


(あれ?私猫捕まえたっけ…?)




「いててて…」


女子の声が聞こえて、今の状況を思い出した

非礼を詫びようと顔を上げる




「えっ!?」

「ん…?おわっ!!俺!?」




目の前で頭を擦っているのは、紛れもなく私で

目の前の私は同じように私を見て驚いた

 
「何で俺がいるんだっ!?」

「何で私がいるのっ!?」


ほぼ同時に叫ぶと、お互いに顔を見合わせる


「も…もしかして幸村様ですか…?」

「そういうお前こそ…名無しさんか?」




えぇ〜〜〜!?!?


という私達の叫び声が城中に木霊した


















「どうする…」

「どうしましょうね…」


私の部屋に二人で籠ること一時間


解決策は一向に見つからない


「しかし、こんなこと誰に言っても信じちゃくれねぇだろう…」

「確かに…」


他人から見たらただの悪ふざけとしか思えない  


けれど、どうしたら元に戻るのかも検討がつかない


私達はただただ頭を悩ませるだけだった


「…よし。くよくよしても仕方がねぇ…とりあえずお互い周りにバレないように普段通りの生活をしよう」

「えっ…普段通り…ですか?」

「ああ。普段通りの生活をしながら、どうやったら元に戻るのか…色々試していくしかないだろうな」


(普段通りって…じゃあ今日から私が鍛錬を…?)



「才蔵に相談したいところだが…アイツは任務だしな…」

「…そうですね」

「とにかく、才蔵が戻るまで周りには絶対にバレないようにしよう!」

「…っはい!頑張ります!」


新たな決意を胸に立ち上がると

私は鍛錬に、幸村様は夕げの支度に向かった














「キェェエェエェ!!」


「きゃあっ!」


スパンっと勢いよく木刀を弾かれて尻餅をつく


「どうされたんですか幸村様!具合でも悪いんじゃ…!」

「あ…いや…大丈夫…ハハハ…」


木刀を持って鍛錬だなんて経験がない私には難しすぎる

次々と打ち込まれる一撃をかわすのが精一杯で

人に木刀を降り下ろすことのできない私はすぐに弾かれた



「やっぱりおかしいですよ幸村様!熱があるんじゃないですか!?」

「そうだ!休んだ方がいい!」


いつもと違う様子に家臣達が心配して、早々に部屋へと帰される


(今日は具合が悪いってことになったけど明日からどうしよう…)


いつまでも体調不良では避けられないだろう


どうしよう…と悩みながら廊下を進むと同じく暗い顔をした私が向こうから歩いて来た


「っ…幸村様!」

「っ…おう…鍛錬はどうした」

「実はいつもと動きが違うんで、具合が悪いと勘違いされて早々に帰されたんです…」

「お前もか…実は俺も鍋を焦がしてしまってな…帰されたんだ」

「…………」

「…………」


このままではバレるのも時間の問題…

ハアと溜め息をついて、また私の部屋へと戻る


すると私(幸村様)が袖をツンと引っ張った



「どうしたんですか?」


「か…厠に行きたいのだが…どうすれば…」


「っ!!!!」















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