恋乱LB U

□初めてのバレンタイン
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「二月十四日に好きな殿方に贈り物をすることが欧米の習わしなんですって」

「へぇ〜初めて聞きました。贈り物ですか…」

「ふふ。"バレンタイン"って言うんですよ。名無しさんさんも才蔵さんに何か贈ってみてはいかがですか?」


(贈り物…か)


才蔵さんが喜ぶものと言えば…やっぱりお団子?

物は残るからといつか言われた記憶が蘇る

才蔵さんは残る"モノ"より、食べればなくなってしまう"モノ"の方が喜ぶかもしれない

やっぱり形に残るものだと重いと思われてしまうだろうか…


「梅子さんは何か贈り物をなさるおつもりなんですか?」

「えぇ。何でも"チョコレート"というものを贈るのが定例らしいです」

「ちょこれーと…?」

「私も一回だけ味見させてもらったことがありますけど、それはそれは甘くて、口の中でとろけるような…とにかく極上の味わいでしたわ!」

「へぇ〜〜…極上の味わい…」

(それは是非とも口にしてみたい…し、才蔵さんにも食べてもらいたい!)


「丁度今なら時期ですから、城下にたくさん売っていますよ?」

「えっ?そうなんですか?」

「とりあえず夕げの支度も一段落しましたし、行ってみては?」

「っ!ありがとうございます!早速出かけてきます!」


(ちょこれーとか…どんな味なんだろう?)

梅子さんの言っていた"極上の味わい"という言葉を思い出すと頬が緩む



城下に行くときは必ず声をかけろと言われていたが、一緒に行っては才蔵さんにバレてしまう

(どうせなら驚かせたいし…ごめんなさい才蔵さん!今日だけ…)

才蔵さんがいるであろう、屋敷の前をこっそりと通りすぎる


浮き足立つ様子を隠しもせずに私は足早に城下へと向かった


















城下は相変わらずの賑わいを見せていて、久しぶりの買い物に胸を踊らせる


一人での買い物なんて本当に久々だ

いつもは才蔵さん

いないときは佐助君や幸村様も一緒にいてくれたから、一人で城下を歩くことは、ほとんどない


(そう思えば私って本当に周りの方に恵まれてるなあ…そうだ!佐助君や幸村様にも日頃の感謝を込めて何か贈ろう!)


すると威勢のいい声が私の耳に届いた



「チョコレート入ったよ!贈り物にいかがですかー!」


ちょこれーと!!


声のする方へ走っていくと、すでに色めきたった女子で溢れている


もみくちゃになりながらも必死に人混みを掻き分けようとするが、こういうときの女子の力は半端じゃない


「売り切れー!」

「うそ…」


蜘蛛の子を散らすように、ちょこれーとを手にした女子がいなくなる

結局私はちょこれーとを拝むことも出来ずに終わった


(どうしよう…何か代わりのもの…)


するとふと目についたのが、桜の形をした綺麗な飴

美味しそうだし、懐に忍ばせておくにも丁度いい大きさ


「これ、三つ下さい!」


ちょこれーとは手に出来なかったが、代わりに綺麗な桜の飴を手に入れた

皆喜んでくれるといいな…

そんなことを考えながら、城へと足を早めたのだったー…
























「どこいってたのさ」

「ひゃん!」

城へ戻ると不機嫌そうな才蔵さんに声をかけられた

恐る恐る後ろを振り返ると案の定、冷たい眼差しで私を見つめている

「ちょっと城下に…」

才蔵さんに嘘は通用しない

素直に打ち明けた私に才蔵さんの目が鋭く光る


「へぇ…城下ねぇ…」

「えっと…約束を破ったことは謝ります…でも本当にちょっとした買い物だったので才蔵さんの手を煩わせるのも…」

「それは俺が決める」

言い訳をピシャリ撥ね付けられると、最早グウの音も出ない

「すみませんでした…」

「まあ、いいけど」

クルリと向きを変え、自分の屋敷へと向かう才蔵さん


(もしかして、怒らせた?)


才蔵さんの背中からは拒絶が感じられる


今夜ちゃんと謝りに行こう…そしてこれを渡して…


ぎゅっと飴を握り締めると、カラリと乾いた音が響いたー…




























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