恋乱LB U

□桃色は甘くてとろけるお味
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「あーん」

「美味いだろ?」

「うん!おいひぃ〜〜〜!」


「…………」

「…………」


買い物の帰りに寄ったお茶屋さん

珍しく才蔵さんもついてきてくれたので荷物を持ってくれたお礼にと私が誘った

天気がいいから外にある長椅子に腰掛けて食べようと、才蔵さんと二人並んで座る


が、目の前にはイチャイチャと見せつけてくれる恋人達が先程からお互いに食べさせ合ったり、腰を抱いたりと、とにかく騒がしい

最早、こっちが恥ずかしくなってきて
あんみつなんか食べていられなかった

チラリと横を見ると才蔵さんは全く気にしていない様子で普通に団子を頬張っている


私は小声で才蔵さんに話しかけた


「…すごいですね」

「何が?」

「あの…向かいの…」

「ああ、あれ?確かにうるさいね」

「いや、うるさいとかじゃなくて…」


才蔵さんにはどうってことない問題だったようだ

(まあ、あなたはそうですよね…)

いつだって周りに興味がない彼は、目の前で誰かがイチャついていても全く興味がないらしい


けど…


(ちょっといいなあ〜…)

確かにやり過ぎかもしれないが、目の前の二人はとても幸せそうで

互いに笑い合っては他愛もない話をして、また笑顔になる

ちょっとだけ憧れる



「…やりたいの?」


「えっ!?」

才蔵さんに話しかけられて、夢心地の思考がパッと切り替わった


「あれ、やりたい?」

「あれって…別に…いいです」

ニヤリと意地悪な笑みを浮かべた後、才蔵さんは形のいい唇を開いてあーんの顔をした

「ほら、早く食べさせてよ」

「えぇっ!?わわ、私が!?」

「お前さん以外に誰がいるのさ。早く」

「ぅ……」


閉じる気配のない口にそっと私の食べていたあんみつを運ぶ

モグモグと咀嚼すると才蔵さんはニッコリと笑顔になった


「ん、美味い」

「…じゃあ才蔵さんのお団子も一つ下さいよ…」

「やだ」

「はっ!?」

私に盗られまいと最後の一串を一気に食べてしまう

呆気にとられた私を横目で見るとニヤリと笑った


「……けち」

「お前さんがやりたいって言ったんでしょ」

「そもそもやりたいなんて一言も言ってません」

「顔に書いてあったし」


駄目だ…才蔵さんに勝てる訳がない

諦めて残りのあんみつを一気に口に流し込むと、帰るためサッと立ち上がった


「行きましょう」

気だるげに立ち上がった才蔵さんと再び二人並んで歩く

「荷物持ってくれてありがとうございます」

「別に。暇だったし」

(本当は暇じゃなかったくせに…)

最近、任務が立て続けに入っていて忙しいことを私は知っている

それでも私の荷物持ちなんかに自らついてきてくれた才蔵さん

優しいんだか、素直じゃないんだか…



そんなことを考えていると、何やらガサゴソと物音が聞こえた

ふと隣を見ると、何と懐から団子を取りだし、また食べている


「え?隠してたんですか、それ…」

「これは俺が追加で買ったの」

(いつの間に…)



「じゃあ、さっきのお返しに一本下さい」 

「やだ」

「…………」


やっぱり駄目なんだ…

どんだけ団子好きなの…

すると才蔵さんは突然歩みを止める


「…?どうしたんですか?」


「やっぱ一個だけあげるよ」


「え?いいんですか?…んっ!」



桃色のお団子を口に含めた才蔵さんが私の唇を塞ぐ


舌が押し込められて才蔵さんの口から私の口の中へと甘い団子が移動した


「ん〜〜!ふ…ぅ…」


離れようともがくも空しく、ガッチリと才蔵さんの大きな手が私の頭を抑えていて離れられない


ドンドンと胸を叩いて漸く体が解放された


「…っは…はぁ…」

「美味いでしょ、俺の団子」

ニッコリと笑う才蔵さんには、少しも悪びれた様子はない


「……飲んじゃいましたよ…」

舌が押し込まれた時に驚きの余り、味わう間もなく団子を丸飲みしていた


「…勿体ない」

「だって…才蔵さんが急にこんなことするから…」

「じゃあ事前に予告すればいい?これからエロいことするよって」

「そうですね…って!そうじゃなくて!私が言ってるのは…」

「じゃあ特別にもう一個だけあげるから、今度はちゃんと味わってよね…」

再びゆっくりと近付いてきた才蔵さんの瞳に射抜かれて、身動きがとれなくなった私は、彼の柔らかい口付けを受け入れる


「ん…ぅ…」


才蔵さんから初めてもらったお団子は、この世の物とは思えない程、甘くてとろける味だったー…





























End


 

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