恋乱LB

□雨のち晴れ
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才蔵さんと気持ちが通じあって早三ヶ月が経とうとしていたある日





「才蔵さーん!もう…どこにいったんだろう…」




相変わらず掴み所のない彼


時々フラリと姿を消しては、ひょっこりと顔を出したりもする




(気持ちが通じあったとはいえ、私才蔵さんのこと何も知らないんだな…)




これが最近の悩み




私は彼のことを何も知らない



聞けばはぐらかされるし、何となく聞いちゃいけないような気がしていた




(何も進歩してないなあ…)






爽やかな秋晴れの空を見上げて溜め息をつくと、何だか一人だけ置いていかれたような気持ちになる




「…でもまだ始まったばっかりだもんね…焦らない焦らない!」




そう自分に言い聞かせ、買い物がてら気まぐれな忍者を探しに行く準備をした





















(今日の夕げに食べたいもの聞きたかったんだけどなー)





才蔵さんなど見つかるはずもなく、適当にブラブラしながら、夕げの献立を考える




(そういえば私、才蔵さんが好きなものなんて団子以外知らないかも…)





「はぁ…」





がっくりとうなだれ、溜め息をつく






すると見覚えのある後ろ姿が遠くで女性と歩いている姿が見えた






(あれは…才蔵さん?)






















やっぱり…才蔵さんだ







気付かれないよう人混みに紛れて、遠くから様子を伺う



隣にいるお色気プンプンの女性は誰だろう?


何かすごく親しげだけど…









その女性は才蔵さんの首筋をスルリと撫でるとニッコリと笑って、そのまま見えなくなった





「っ!」










才蔵さんの表情は見えない



しかし親密な関係であることはわかる





(才蔵さんが私に深く踏み込ませてくれないのは、彼女がいるから?)






トボトボと元来た道を戻る



まだわからない


ただの友かもしれない


才蔵さんに聞いてみなくちゃ…




深く暗い穴の中に突き落とされた気分



私はそのまま買い物も忘れ、城へと戻った

































「才蔵〜任務サボっちゃダメじゃない?あんたのお陰で私まで駆り出されるんだから」

「うるさい」






フラリと城下まで出たところで雪に捕まってしまった



最近任務をすっぽかしている俺に、長が雪を仕向けたのだろう





「清広にやらせなよ」





清広だって忍だ


確かにまだ若いかもしれないが、俺の代わりになるほどの十分な力がある




「清広ならこなせるでしょ」

「仕方ないじゃない。あんた指名の任務なんだから」

「清広に俺の名前名乗らせたら?」





うるさく付きまとう雪を無視しながら目当ての物を探す





(あった…)





キラキラと白い光を放つかんざし




今日町へと降りてきたのはこれを買うためだ


このまえ名無しさんと一緒に買い物に来たとき、このかんざしをじっと見つめていた彼女




きっと似合うだろう










「なあに?贈り物?」

「うるさい。さっさと帰りなよ」







スルリと雪の腕が伸びて俺の首筋を撫でる








「いい加減言うこと聞かないとこの首が宙を舞うかもよ?今日のところはこれで退散してあげるけど、あんたが任務をしない限り何度でも来るわ」






ニッコリと唇が弧を描いて、そのまま雪は消えた














あの女と一緒にいたいから





そんなの我が儘だってことはわかっている



しかしあのいるだけで、周りを笑顔にさせるような優しい名無しさんの隣に立つためには、これ以上こんなことをしてはいけない



本当は隣に立つ資格すらないのだから





過去は変えられないが、これからは違う




そういう思いから任務をすることがとてつもなく苦痛に感じていた










(任務が嫌だなんて初めてだな…)









一緒にいるだけで、きっと何かが変わっているのだろう



それはきっといい方向に違いない








白いかんざしを購入したあと、城へと急いだ





早く会いたい




  



まさか雪と一緒にいるところを名無しさんに見られていただなんて、この時は夢にも思っていなかったー…


























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