恋乱LB

□小春日和
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「あれ?才蔵さんは?」


「先生なら任務に出かけたぞ」


「そっかあ…ありがとう佐助君」




また任務…か…



最近立て続けに任務が入り、ゆっくり時間のとれない才蔵さん



寂しいのもあるけど、毎日無事に帰ってくるよう祈り続ける日々が続いていた






「雨でも降ればいいのに…」







才蔵さんは雨の日は絶対に任務を受けない



だからこそ、こんな小春日和の日は少しだけ空が恨めしい






(あ、けど雨の日は体調悪くなっちゃうもんね…それはそれで嫌だな…)










結局彼を足止めする手段などないのだ




"里の命は絶対"





いつか才蔵さんが言ってたっけ…








「……仕方がない…か…」









柔らかな陽射しを浴びながら、空を仰ぐと鳥達が仲良く飛び去って行くのが見えたー…















「……名無しさんさん」



「わっ!!きっ!清広さん!」




何の気配も感じさせずに背後に立つ行動は流石忍…


才蔵さんの右腕だけある



(けど私にはやめてほしい…結構心臓に悪いかも…)





「こっ…こんにちは。いいお天気ですね」


「えぇ。そうですね」


「…おっお散歩ですか?」


「…まあ、そんなところです」



(かっ…会話が続かないっ…!)





けれど私の側から離れる様子がない清広さん


そういえば才蔵さんが任務でいないときは、どこからか清広が現れて何だかんだ一緒にいる気がする







「あの…清広さん」


「何ですか?」


「今日はどうしてここへ?」


「……………」




(何かいけないことでも聞いちゃったかな…)




清広さんは何も答えない





沈黙に耐えきれずに私から口を開く





「あっあの、言いたくなかったら別に…」


「…才蔵さんに」


「…え?」


「才蔵さんが任務に出かける時はあなたの護衛につくよう言いつけられていますので」




才蔵さんが…?





「護衛って…別に私は大丈夫なのに…」



「心配なんでしょう。貴方のことが」







才蔵さんって意外と心配性なんだ…



心が温かくなるのを感じる



分かりにくいだけで才蔵さんは優しい



いつでも私を守ってくれて、安心させてくれる


才蔵さんの心遣いにほっこりしていると、屋根から噂の人物の声が響いた








「余計なことを言うな清広」


「才蔵さんっ!」


「…すみません」




才蔵さんはスッと屋根の上から降りると、私達の目の前に立つ







「全く。お前には気が抜けないよ」


「……正直なんで」


「…どこが」


「才蔵さんもお戻りになられたので、私はこれで失礼します」


「あっ!清広さん!ありがとうございました!」





飛び立とうとする清広さんに声をかけると、振り返って少しだけ笑って消えた










清広さんがいなくなったところで、改めて才蔵さんを見つめる




どうやら今回も怪我はないようだ


ホッと胸を撫で下ろして、才蔵さんの大きな手をぎゅっと握った




「お帰りなさい才蔵さん」


「…ただいま」





才蔵さんの柔らかな笑顔に釣られて私も思わず顔が緩む






「ご無事で何よりです」


「…ありがと」




ゆっくりと顔を近付けられて、自然と唇が重なる



愛しい人の口付けに頭の芯からじわりと溶かされていくような感覚



ゆっくりと唇を離されると才蔵さんは真剣な眼差しで私を見つめていた






「…清広と仲良さげにしてたみたいだけど、何の話してたの」


「え…?別に何も…」


「…へぇ」





(…やっぱり才蔵さんって心配性)





「…何笑ってんのさ」


「いえ…幸せだなーって思って」


「…変なの」




少し笑う私に怪訝な顔をしながらも、才蔵さんは繋いだ手を離すことはなかった





「ちょっと座ろっか」


「はい」





二人で縁側に腰かけてやっと落ち着く


ポカポカと温かい陽射しが心地いい





「…いいお天気ですね」


「…眠くなる…」


「ふふっ。才蔵さん任務から戻ったばかりですもんね」


「ちょっと借りるよ」



コロンと私の膝に頭を預けて横なると、下から綺麗な緋色の瞳に射ぬかれて瞬きさえも忘れる



光に照らされた銀髪の柔らかな髪の毛にそっと触れると、才蔵さんはフッと笑った























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