恋乱LB

□君の初体験は僕のもの
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猫のように気まぐれな忍者




よくそう言われる


それは自分でも理解していたし、性格だから仕方ないと開き直っていた



確かに人よりムラがあるかもしれない


しかしそれについて文句を言う者もいなかったし、自分でも困ることはなかった









「勝手ですね…才蔵さんは」






ドクリと心臓が跳ねる


勝手…



そうだ。俺はそうだった


自由気ままな忍



人のことなんて、いつだってどうでもよかった

所詮、他人事


ずっとそうだったし、これからもそうだと思っていた


いつからだ?

こんな風にこの女を目で追うようになったのはー…





「庭師にこれ渡して」


そう言ってハリマツリを渡す







黒百合



花言葉は呪い




嬉しそうに部屋に飾る名無しさんに、ハリマツリを渡すのが礼節だと嘘をついた



ハリマツリを手にしながら、嬉しそうに微笑む名無しさんを見て自然と表情が柔らかくなる





ハリマツリの花言葉は"見守る"





俺からの牽制だ

この女には俺がついている

怪しい庭師、後に風魔と名乗る忍に渡すよう名無しさんにハリマツリを託した














(…そんなこともあったっけ)





月が輝く夜、屋根の上でボーッとこれまでの名無しさんとの日々を思い出していると、カタンと梯子から音がして、ひょっこりと名無しさんが顔を覗かせた




「あっ才蔵さん。ここにいたんですね」

「……早くおいで」



数々の苦難を乗り越えて、やっと想いが通じ合った俺達


薄い氷の上を歩くような紙一重の道を、二人で補い合いながらここまでこれた



きっと奇跡よりも尊い別の糸で繋がっているのかもしれない


いつ命を落としてもおかしくない俺を選んでくれた名無しさん





愛しい俺だけの女ー…










「何考えてたんですか?」


そんなに物思いにふけっている顔をしていたのだろうか?

時々名無しさんは上忍顔負けの鋭さを発揮する



「…色々思い出してた」

「色々?」


キョトンと首を傾げる名無しさんに少し悪戯してやろうと、唇に人差し指を乗せてじっと瞳を覗き込む





「ねぇ、覚えてる?」


「な…何をですか…?」



そのまま心惑いの術をかけると、名無しさんはいとも簡単に術にかけられた



「っ!こ…これって…」


「そ、心惑いの術」



ニッコリと笑うと名無しさんは顔を赤くしながらも、俺から目を逸らせない



「なっ…何で…?」

「んー…まあ強いて言うならこれのためかな」



名無しさんの熱い頬に手を寄せてそのまま口付けると、口の中に広がる苦味に名無しさんは咳き込んだ



「げっほ…ぅっ…にがっ…」


「でも術解けたでしょ?」


「あ…そういえば…」





口に広がる苦味に涙目になりながらも、名無しさんは何かを思い出したように口を開いた





「これで二回目ですね。気付け薬を飲まされるの…」



風魔に術をかけられた時、口移しで気付け薬を飲ませたのは確かに俺だ




「そうだっけ?」


「あっひどい!私初めてだったのに!」


「けど覚えてないんでしょ?」


「…苦かったのは覚えてます…」






気持ちのいい夜風が名無しさんの長い髪の毛をさらっていく





「…そういえばこの屋根で幸村様も交えて三人でお酒を飲んだこともありましたね」


「ああ…お前さんがバレバレの男装してた頃ね」


「ばっバレバレですか!?」


「当たり前でしょ。裸見なくたってわかるって。気付かないのは幸村と佐助だけ」


「…結構自信あったんですけどね」


「あれでよく自信持てたね」


「…ここでお酒飲んで…そして…」



思い出しながら名無しさんは顔をカッと赤くした



屋根から落ちそうになった名無しさんを助けようとした幸村が思わず胸を触ってしまったことを思い出しているんだろう


(わかりやすい。けど…)




「ねぇ、何考えてるの?」


「えっ!?別に何も…」


「その割りには顔赤いね」


「っ!!これは…その…」



じりじりと名無しさんに詰め寄ると名無しさんは俺から距離をとるように後ずさる




「…幸村にどうやって触られた?」


「さっ…触られたって…?」


「それとも掴まれた?」


「なっ…!」


「あんな風に鷲掴みにされて感じちゃった?」


「そっそんなわけ…!」
















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