恋乱LB

□最初で最後の告白を
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「才蔵さん、お団子いかかですか?」

「いらない」

「そうですか…」


才蔵さん私の気持ちに気付いてる?

だからこうして避けるのかな…


才蔵さんへの気持ちを自覚し始めた時期のある日、お団子を持って才蔵さんがいるであろう縁側へ足を運ぶと私を見もせずにキッパリと断られてしまった





(才蔵さんにとって私は迷惑でしかないのかな…)




「……幸村か佐助にでもあげたら?」

「あっ…才蔵さっ…」



才蔵さんはスクッと立ち上がって音もなくどこかへ消えた

残された私はさっきまで才蔵さんが座っていた場所をボーッと見つめて立ち尽くす




これで何度目だろう

以前なら二つ返事でお団子に食いついていたのに、最近はお団子さえも受け付けてくれなくなった



そんな遠回しにしなくたって、ハッキリ迷惑だって言ってくれればいいのに…


まだ何も知らなかった頃の方が話をしてくれていた気がする

初めて会った時は刀を突き付けられたっけ…

そういえば最初に女だって気付いたのは才蔵さんだったよね…

あの頃は怖くて仕方なかった…

なのに今は…



才蔵さんとまともに話をしたのっていつだった…?


それさえも思い出せない程、ずっと避けられている



(何か悲しくなってきた…恋ってこんなに辛いものだっけ…?)



才蔵さんに避けられる度、冷たくされる度に後から涙が溢れてくる

もう諦めた方がいいのかもしれない

才蔵さんにとって私は迷惑な存在でしかないんだ…



才蔵さんがいなくなった縁側で声を出さずに泣いていると、意外な人が声をかけてきた


聞き覚えのあるその声に顔を上げる





「あっ…」






























名無しさんの気持ちには何となく気付いている


決して敵意ではない

少なからず好意を持っていることに気付いてから、俺は名無しさんを避けるようになった


嫌いだからじゃない






大切な女になってしまうのが怖いから


今まで冷徹に任務をこなしてきた俺には敵が多い


守るものが何もなかったから、ここまでやってこれたのだ


これからも自分にとっての大切なものなど持つ気もない


ましてや女子など…



あんなに脆く非力なもの、簡単に壊れるだろう


これ以上あの女に関わってはいけない

深入りしてはいけない



俺の頭の中で警報が鳴る





これ以上関わったら、きっと後戻りはできない


自覚し始めた想いに蓋をして、何もなかった最初の頃に戻ろう


そうすればきっと…


きっと今まで通りでいられる






いつもの退屈な毎日をただやり過ごせばいい


失うくらいならー…





















「清広さん…」

「……また泣いておられるのですね」

「あっ…これは別に…っ!目に塵が入っただけで!」



見られていた…?


慌てて涙を拭うと、何もなかったふりをして清広さんに向かい合う



(清広さんが私に話しかけてくるだなんて珍しいな…)





「あっ…あの…よろしければこれ食べませんか?」



才蔵さんのために作ったお団子を清広さんに勧めてみると、一瞬驚いた顔をしてフッと小さく笑った



「…いただきます」




(ほっ…よかった…)





「お茶もお持ちしますね」






早速持って来たお茶を清広さんの前に置くと、さっきまで才蔵さんが腰掛けていた場所に座り静かにお茶を啜る


見慣れない光景に思わず息を飲む

寡黙で何を考えているのかわからない清広さんのその姿は何だか才蔵さんを思わせた



(って…馬鹿みたい…清広さんにまで才蔵さんを重ねるなんて…)







「…似てますか?」


ハッとして顔を上げると清広さんはじっとこちらを見つめていた



「え…?」


「才蔵さんと俺…似てますか?」



「わっ…私は…別にっ…清広さんも人の心が読めるんですか!?」


「…名無しさんさんの場合、顔に書いてあります」


「…っ…」



(才蔵さんにも以前言われた気がする…)







何も言い返せず黙って立ちすくんでいると、清広さんの表情がフッと柔らかくなった





「好きなんですね…才蔵さんのことが」


「えっっっ!!!!!!」



そんなにわかりやすいの私!?


何も言い返せずつい言葉が詰まってしまう




しかし今更隠したってどうにもならない



私は才蔵さんに言えない想いを素直に吐いた









「…好きです…」















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