恋乱LB

□旅先の果て
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「えっ!?本当ですか!?」


「ほんと。早く支度しな」


「わーい!楽しみ!!」


「…あんまりはしゃぐと転ぶよ」




喜びを盛大に体で表す名無しさんの様子を見て思わず顔が綻ぶ




久しぶりに与えられた三日間の暇を使って、どこかに行こうと何気なく誘ってみたが、こんなに嬉しそうに笑う名無しさんを見て改めてよかったと感じる




「ところでどこに行くんですか?」


「…内緒。着いてからのお楽しみってことで」


「ふふ。楽しみです」





いそいそと準備を始める名無しさんを見ていると微かな足音が聞こえる





「先生っ!名無しさんと出かけるって本当ですか!?」


「佐助君!」


「ほんとだよ」


「俺も一緒に行きたいです!」


「駄目」


「そんな〜〜…先生〜〜…」



佐助に続いてドタドタと男の足音が近付いてきた



「佐助っ!鍛練中に抜け出すとは何事だっ!」


「幸村様〜〜俺も先生達と一緒に行きたいです〜…」


「才蔵には暇を出したが、お前には出してないだろう。諦めろ」


「佐助君…」




やり取りをオロオロと困った様子で見ていた名無しさん



(このまま佐助も連れていくって言い出しそうだね…)





「やっぱり佐助君も…「はい。早く佐助連れてってよ幸村」



「おお、悪い。ほら行くぞ佐助」





幸村にずるずると引きずられながらも、まだ行きたいと騒ぐ佐助




それを可哀想とでも言うようにじっとその様子を見つめる名無しさん




「…いいんですか?佐助君も連れてった方が…」


「いーの。たまには二人っきりもいいでしょ」


「二人っきり…」




うつ向いて顔を赤くする名無しさんの頬に手を添えて耳元で囁く




「夜は思う存分、声出せるよ?」



「なっ…!そんなつもりじゃ…!」



「へぇ?そのわりに顔真っ赤だけど?」


「もうっ!からかわないでください!才蔵さん!」






名無しさんと二人きりで旅に出るのは初めてだ


俺も浮かれているのかもしれない


俺は大した荷物もないので名無しさんの準備を少し手伝い、明日へ備えることにした

















当日の朝



幸村と佐助が見送りをしに出てくる




「気をつけて行ってこいよ!」


「ありがと」


「先生〜〜…いってらっしゃい…」


「佐助君、お土産たくさん買ってくるからそんなに落ち込まないで?」


「…お土産…俺は食べ物がいい!」


「ふふ。わかったよ。楽しみにしてて」


「ほら行くよ名無しさん」


「あ、はーい!じゃあ行ってきます!」


「おう!楽しんでこい!」







空は青く澄み渡っていて、柔らかな日射しが気持ちいい



幸村と佐助に見送ってもらったあと、名無しさんと手を繋ぎながら、目的地へと足を進める




「ところでほんとにどこ行くんですか?」


「着いてからのお楽しみだよ。そんな遠くないし大丈夫」


「ふふ。楽しみです。才蔵さんと二人きりなんて夢みたい」


「…お前さんは可愛いね」


「えっ!?何ですか急に!」



素直なところも、すぐ顔を赤くするところも全てが愛しい



きっと楽しい旅になる




そして言わなければならないことがあるー…







 


小さな決意を胸にニッコリと笑いかけると、恥ずかしそうにしながらも、名無しさんは笑い返してくれた


















「どうぞ、いらっしゃいませ!」


「どーも、お世話になります」




着いたのは小さな旅館


静かな佇まいと、各部屋に付いている露天風呂が気持ちいいと評判の旅館だ


小綺麗な女将が俺達を出迎えると部屋へと案内してくれる




「わあ、素敵なお部屋…」




案内された部屋は広く日射しが差し込んで、凛とした和室



「気に入った?」


「はい!とっても素敵です!」


「では荷物を片付けましたら昼げをお持ちしますので、少々お待ちください」



女将が部屋から出ると、名無しさんは早速庭にある露天風呂を見つけてはしゃぐ



「才蔵さん!見てください!温泉が付いてますよ!」


「そ?よかったね。二人で入れるし」


「えっ!?一緒にですか!?」


「当たり前でしょ。何のためについてると思ってんのさ」


「でも…恥ずかしいし…」


名無しさんの肩を抱き寄せて軽い口付けを交わす



「…夜が楽しみだね」





細い肩に力が籠った





















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